手書きの在庫管理表|作成方法と運用ポイント
在庫管理の手法にはさまざまな形式がありますが、小規模事業や現場運用では手書きによる管理も依然として有効です。手書きの在庫管理表は導入コストがかからず、紙と筆記具だけで運用を開始できるため、即日で始められる点が大きなメリットと言えます。一方で、属人化やヒューマンエラーを防ぐには、記入ルールの統一と運用の徹底が不可欠です。正しく設計・運用することで、シンプルながら精度の高い在庫管理が実現できます。
本記事では、在庫管理表の作成方法から運用ポイントまで詳しく解説します。
在庫管理表の作成方法
手書きの在庫管理表を作成する際に、最も重要なのは「何をどこまで記録するか」を明確にすることです。単に記録のための表を作るのではなく、入出庫の流れを整理して、記入ルールを明確にしておくことが重要です。ここでは、在庫管理表を作成する上での基本項目と補足項目、そして商品マスタ表との関係について整理します。
必要な基本項目
項目 | 内容 |
---|---|
日付 | 入出庫の処理日 |
商品名 | 管理対象となる商品名 |
品番 / 商品コード | 商品を識別するための管理番号 |
入庫数 | 仕入・返品・移動などで増加した数量 |
出庫数 | 出荷・廃棄・移動などで減少した数量 |
在庫数 | 現時点での在庫数 |
保管場所 | 棚番号・保管エリアなどの位置情報 |
在庫管理表を作成する際は、上記の基本項目を記載する必要があります。これらは、在庫数の正確な把握や入出庫記録の根拠となるため、統一した上で記載・管理することが重要です。後ほど説明する「単票タイプ」「在庫移動表タイプ」という2つのフォーマットも、これらの基本項目をベースに作成します。
補足項目
項目 | 内容例 |
---|---|
担当者名 | 確認者の氏名 |
備考欄 | 出庫理由や特記事項の記録 |
ロット番号 / 有効期限 | 品質管理に関わる情報 |
業務内容によっては補足的な情報を加えることで、より精度の高い管理が可能です。ただし、項目が多すぎると記入負荷が増して実運用で定着しにくくなるため、必要最小限からの導入を推奨します。
商品マスタ

個別の品目情報を管理するために、在庫管理表とは別に「商品マスタ」を作成しておく必要があります。
マスタは以下の情報を一覧化したもので、在庫管理表と連携して運用します。
項目名 | 内容 |
---|---|
品番 / 商品コード | 商品を識別するための管理番号 |
商品名 | 管理対象となる商品名 |
規格 / サイズ | サイズ違いや仕様違いによる誤った入出荷・入出庫を防ぐための情報 |
単位 | 「個・箱・mL・kg」など管理単位を指定 |
標準在庫 / 最小在庫数 | 発注判断や欠品・過剰在庫を防ぐための基準値 |
在庫管理表が「日々の動きを記録する帳票」であるのに対して、商品マスタ表は「管理の基準を定める台帳」であり、棚卸や発注業務における参照元としても機能します。
「在庫管理表+商品マスタ」はセット運用が基本
具体的な運用方法は以下の通りです。
- 在庫表に記載する商品名やコードはマスタに基づき、略称や俗称の使用禁止
- 新商品追加時のマスタ更新と在庫管理表テンプレート見直しの同時実施
このように、在庫管理表と商品マスタを連動させて運用することが、属人化の防止や業務の標準化につながります。
在庫管理表のフォーマット
① 単票タイプ

「単票タイプ」は品目ごとに在庫管理表を作成する形式で、数量を正確に把握したい場合に適しています。履歴を時系列で記録することにより、品目ごとの在庫推移を可視化しやすいという特徴があります。特に、製造業など履歴管理やロット追跡が重要な業務に有効です。
作成する際のポイント
フォーマットを設計する際は、文字を記入しやすい行間や罫線の太さ、項目名の配置に配慮することが大切です。用紙サイズは「A4縦型」が扱いやすく、ファイルやバインダーでの保管を推奨します。
② 在庫移動表タイプ
「在庫移動表タイプ」は、複数の品目を一枚のシートで横断的に記録する形式です。一つの帳票に入出庫をまとめて記録できるため、全体の流れを俯瞰しやすいのが特徴です。
日々の入出庫量が多く、スピーディーな記録と省スペースな帳票運用が求められる場合に適しています。ただし、履歴が時系列で混在するため記入ミスが発生しやすく、特定品目の記録を追いにくい点には注意が必要です。
作成する際のポイント
フォーマットを設計する際には、商品コードと商品名を必ずセットで記載できる構造にすることが重要です。商品コードで識別すれば、同名商品や類似品を誤って混同するリスクを防げます。
補足:在庫移動表タイプは「手書き」と「Excel」で異なる
在庫移動表タイプは、紙による手書き運用とExcelなどの表計算ソフトで管理する場合では、表の構成に違いがあります。
手書きの場合:縦に伸ばして運用する
紙ベースでは「1行=1処理」が基本であり、日付が進むごとに下方向へ追記していきます。物理的な紙の制限があるため、記録行が増えればページを継ぎ足す(または別シートに移行する)などの工夫が必要です。また、棚別・カテゴリ別などで帳票を分散すれば運用の負荷を軽減できます。
Excelの場合:時系列で横に展開して管理

Excelなどの表計算ソフトを用いた管理では「1商品=1行」に固定して、日付ごとに横に列を展開する方式が一般的です。品目や期間ごとの変動を一覧化しやすいメリットがあり、関数による自動計算はもちろん、フィルターやソート機能により特定期間・品目の抽出も可能です。また、記録は紙ベースで、集計はExcelで行う「ハイブリッド管理」も現実的な運用の一つです。
運用ポイント
在庫管理表は作成しただけでは十分に機能しません。運用ルールを明確にすることが重要です。手書き管理はシンプルで柔軟な反面、属人化しやすく、記入ミスや記録漏れが発生すると管理の信頼性を損ないます。ここでは、運用の安定化と管理精度の維持に欠かせない2つの視点について解説します。
ポイント① 記入ルールの標準化と共有
手書きの帳票は、裁量や習慣に依存しやすいため、同じ帳票でも記載の仕方が担当者によって異なり、記録内容のブレが起こりやすいという特性があります。このような運用を防ぐには、記入ルールを明文化して共有しておく必要があります。
品目名・単位の統一
商品マスタに基づいた名称・単位を必ず使用する(省略表記は禁止)
記入タイミング
作業完了時に即記入するか、一日分をまとめて記入するかを明確にする
数量に関する記入ルール
入庫と出庫はそれぞれの欄に記載、在庫残数は必ず再計算して記入する
修正方法
二重線と訂正印を用いるなど、誤記の対応方法を定めておく
これらのルールを簡易マニュアルとして文書化して、管理者・現場担当・パートスタッフを含む全員に共有することで、入力精度を一定水準に維持することが重要です。
ポイント② 保管ルールの標準化と管理
在庫管理表は、単なるメモではなく在庫の入出庫履歴を残す「正式な帳票」として扱う必要があります。棚卸による差異や、誤記入が発覚した際に原因を追跡するための重要な資料となるため、適切な保管と履歴管理が欠かせません。
番号管理の導入
帳票ごとに管理番号を付与して、管理の抜け漏れを防ぐ
保管期間
棚卸や監査に備え、最低一年間は保管する
保管方法
バインダーやキャビネットで品目別・期間別に整理する
記録改ざん防止
修正方法の徹底(二重線と訂正印を使用)と、保管期限後の廃棄基準を明確にする
紙の管理は手間がかかりますが、こうした運用を徹底することで現場全体の管理意識を高めることが可能です。
手書き管理のデメリット
多くの現場で見られる典型的なデメリットと、そのリスクや影響について解説します。
記録漏れ・誤記入
手書き管理における最大のリスクは、ヒューマンエラーが発生しやすい点です。特に担当者が複数いる場合、「誰がいつ記録したのか」が不明確になりやすく、管理の精度が低下します。こうしたミスはその場では気づきにくく、蓄積されていくことで「理論在庫」と「実在庫」の乖離を招き、最終的に棚卸での在庫差異や欠品につながります。
帳票の紛失・破損
紙そのものが持つ物理的な脆弱性も無視できません。帳票の紛失、汚損、破損といった問題が発生すると、日々の在庫管理に支障をきたすだけでなく、欠品や過剰在庫が発生した際の原因究明も不可能になります。記録が失われることで、管理そのものが成り立たなくなるリスクがあります。
属人化・ブラックボックス化
手書きの在庫管理は、担当者の裁量に依存しやすい傾向があります。記入や修正、管理方法を個人で判断してしまうと、記録の統一性が失われ属人化します。また、略称や独自記号を使用すると、他の担当者が内容を理解できずブラックボックス化してしまいます。
検索性・集計性の低さ
紙での管理は「検索・分析」に向いておらず、過去の履歴や入出庫傾向を把握するには、複数の帳票を手作業で確認しなければなりません。この作業は時間がかかる上に、転記ミスや読み間違いのリスクを伴います。特に商品数や取引件数が多い現場では、集計作業そのものが大きな負担となるため、業務効率を著しく低下させる原因となります。
在庫管理はもちろん基幹業務をまるごとおまかせ!クラウドERP『キャムマックス』

在庫管理・販売管理・購買管理・生産管理・財務会計といった基幹業務を、手作業や複数システムで運用し続けることは、業務の非効率化を招きます。こうした課題を解決して、企業全体の業務をスマートに統合できるのがクラウドERP「キャムマックス」です。
適正在庫を保ちながら、欠品も過剰在庫も防ぐ
キャムマックスは、購買・販売・生産といった各機能と連携して、入出庫に応じて在庫数を自動更新します。手作業での記録や転記が不要となり、在庫データをリアルタイムで把握できます。これにより、現場任せになりやすい在庫管理を体系化できます。
情報が一元化されることで、適正在庫を維持しやすく欠品リスクを防ぎます。過剰在庫によるコスト増大も抑制され、キャッシュフローや在庫回転率の改善につながります。部門ごとの業務効率化に留まらず、企業全体の業務最適化を目指す企業にとって確かな選択肢となるクラウドERPです。