在庫管理から始めるリードタイム短縮・改善マニュアル
リードタイムとは、業務または生産工程の開始から完了までに要する時間のことを意味します。
- 商品を発注してから納品されるまでの時間
- 原材料を投入してから完成品ができるまでの時間
- 顧客が注文してから製品が届くまでの時間
特に、製造業・小売業では供給のスピードや在庫最適化に直結する重要な管理指標であり、この時間が長くなるほど過剰在庫や納期遅延といったリスクが高まります。リードタイムの短縮は単にスピードを上げるという事にとどまらず、在庫コストや機会損失の抑制、顧客満足度の向上といった経営的な成果にも直結する施策と言えます。
本記事では発注・製造・納品それぞれのリードタイムを短縮するための考え方と実践方法をわかりやすく解説していきます。
目次
在庫管理に関わる3つのリードタイム
種類 | 対象範囲 | 在庫管理との関係 |
---|---|---|
発注リードタイム | 発注~納品 | 安全在庫・発注点の設計に影響 |
製造リードタイム | 加工~完成 | 仕掛在庫や生産計画に影響 |
納品リードタイム | 受注~出荷・配送 | 出荷準備・ロケーション管理に影響 |
在庫管理においてリードタイムは在庫水準の設定や補充計画、欠品リスクへの対応策と密接に関係します。ここでは、3種類のリードタイムについて詳しく解説します。
発注リードタイム
商品や原材料を発注してから納品されるまでの時間を指します。発注リードタイムが長いほど事前に十分な在庫量を確保する必要があり、その分コストが増加します。一方、リードタイムが短ければ市場変動に柔軟に対応できるため、過剰在庫を減らすことが可能です。在庫管理においては、発注点や安全在庫の設定を適切に行うことが重要です。
※安全在庫とは需要の変動による欠品を防ぐためのバッファ(調整)の意味を持つ在庫です。通常の在庫に加えて持つべき在庫として扱われます。
発注リードタイムの具体例
ある資材を月曜日に発注して金曜日に納品されると発注リードタイムは「4営業日」です。この4日間の間に製造や販売が止まらないように、企業はその分の在庫を確保しておく必要があります。「平均販売数が100個/日」であれば、4日間で400個の在庫が最低必要になります。さらに、輸送遅延や需要の急増に備えるために安全在庫を加味する必要があります。
例えば、安全在庫を200個と設定すれば、合計で600個を確保しておかなくてはいけません。
製造リードタイム
原材料の受け入れ、加工、組立、検査といった生産工程を経て製品が完成するまでの時間を指します。製造リードタイムが長いと仕掛品(完成途中の在庫)が多くなるだけでなく、製品在庫の補充に時間がかかり欠品リスクが高まります。在庫管理においては「必要なモノを、必要なタイミングで、ムダなく供給する」といった原材料の最適化が重要です。
製造リードタイムに関する具体的なケース
月曜日に生産指示を出し、木曜日に製品が完成して出荷可能な状態になった場合、製造リードタイムは「3営業日」です。この3日間の間に、原材料や仕掛品は各工程を経て最終的に完成品になります。
このリードタイムが長くなると、原材料や仕掛品といった在庫が増え、生産現場のスペースが圧迫されるだけでなく、納品の遅れや製品在庫の不足につながります。特に、需要が急増するタイミングで製造が間に合わなければ欠品や機会損失を招くリスクも高まります。
納品リードタイム
受注から出荷・納品までにかかる時間を指します。納品リードタイムが長い場合、注文後の出荷準備・在庫引当・ピッキング・梱包・配送にかかる各工程に無駄や遅れが生じている可能性があります。在庫管理においては、適切なロケーション管理や出荷処理における作業効率化が求められます。
納品リードタイムの具体例
顧客が月曜日に注文を行い木曜日に商品が届く場合、納品リードタイムは「3営業日」です。この期間には、受注処理・在庫引当・ピッキング・梱包・配送といった一連の業務が含まれており、各工程がスムーズに連携していなければ納期の遅延を引き起こす要因となります。
こうしたリスクを回避するには、受注後すぐに在庫引当と出荷指示が行える在庫管理システムの導入や、倉庫内のレイアウトや動線の見直し、大規模倉庫であればマテハンの導入などが有効です。
リードタイム短縮の重要性とメリット
過剰在庫の回避
リードタイムが長いと将来的な需要に備えて安全在庫や余剰在庫を多く確保する必要があります。これは欠品リスクを防ぐための措置ですが、結果として過剰在庫が発生しやすく保管コストの増加にも直結します。
- 発注から納品までに10日かかる場合、必要となるのは「最低10日分+αの在庫」
- リードタイムが5日に短縮されれば在庫は約半分まで削減可能
これにより、保管スペースの有効活用や棚卸作業の効率化など、在庫削減以外の運用面においてもプラスの効果が期待できます。リードタイムの短縮により、適正在庫を維持しながら在庫量を抑えることができます。
キャッシュフローの改善
在庫が売上に変わるまでの期間はキャッシュフローを圧迫する原因になります。つまり、リードタイムが長いほど流動資産が在庫として滞留しやすくなります。これを短縮することで必要最小限の在庫で運用できるようになり、仕入れから販売、そして代金回収に至るまでのサイクルが効率化されキャッシュフローが改善します。
顧客満足度・納期遵守率の向上
納期遵守は顧客との信頼関係を築く上で不可欠な要素です。特にBtoB取引においては、生産スケジュールや販売計画が取引先からの納品時期に連動していることも少なくありません。そのためリードタイムが長い場合、取引先からの信用を失う可能性があります。リードタイムを短縮することで、注文に対するレスポンスが早くなり、顧客からの急な要求や変動にも柔軟に対応できる体制が整います。
また、短納期への対応力そのものが競合他社との差別化につながり、顧客満足度の向上にも寄与します。
発注リードタイムを短縮する方法
仕入先とのスムーズな連携
発注リードタイムの短縮には、仕入先との連携強化が不可欠です。発注のたびに、発注書やメールでやり取りを行っているとリードタイムが長引く恐れがあります。そこで、EDI(Web-EDI)を活用することで仕入先側とスムーズな発注業務が行えます。
※EDIについて詳しくは「キャムマックス発注Web-EDI」のページをご覧ください。
発注点アラートを活用した在庫運用
従来の手作業に頼ったチェックのままでは、発注の遅れ・漏れといったヒューマンエラーのリスクが高まります。これを防ぐにはアラートや自動発注機能を備えたシステムの導入が有効です。
設定した在庫数を下回った際に通知や自動発注が行われることで、欠品リスクを抑えることだけでなく、少ない在庫数での運用が可能になります。
仕入先の多元化・多角化
特定の仕入先に依存していると、納期遅延時のリスクに対応できません。リードタイムが安定している仕入先を複数選定しておくことで、柔軟でリスクに強い調達体制の構築につながります。
また、仕入先ごとにリードタイム・価格・品質などをKPI化することで、客観的な基準に基づいた選定が行えます。
製造リードタイムを短縮する方法
スムーズな資材調達の実現
生産ラインを安定して稼働させるには「必要な時に必要な資材が揃っている」ことが不可欠です。しかし現場では、部品の欠品や発注ミスにより資材が不足して、ライン停止や遅延を招くこともあります。こうしたトラブルを未然に防ぐためには、生産管理をはじめ、在庫管理や購買管理なども一元管理できるERPの導入が有効です。
情報を一元化することで、在庫状況や資材の所要量をリアルタイムに把握でき、必要なタイミングで的確な調達判断が行えるようになります。
納品リードタイムを短縮する方法
受注から出荷までを一元管理できるシステムの構築
納品リードタイムでは、受注から出荷までの業務対応の速さが重要です。ここでの処理が滞ると、物流がどれだけ優れていても納品のスピードは上がりません。受注データから在庫情報をリアルタイムで連携させ、在庫引当を行い、出荷指示までをタイムラグなく処理できるシステムの構築が必要です。
これにより、在庫がある商品については受注と同時にピッキングや梱包作業へ即移行でき、出荷までの流れを滞りなく進めることでリードタイムが向上します。
出荷作業のスピードアップと最適化
出荷作業では倉庫内のレイアウトや作業手順がリードタイムに直結します。在庫を保管する棚の配置が非効率だったり、商品を探す時間が長いとピッキングに余計な手間がかかり、出荷スピードが低下します。
この課題を解消するには、出荷頻度やセット内容に応じた在庫の再配置や倉庫の動線に合わせたピッキングルートの最適化などが有効です。
WMS(倉庫管理システム)によるフリーロケーション管理やピッキングルートの提案、またモバイルピッキングを導入することで出荷作業にかかる時間を大幅に削減することが可能です。
※モバイルピッキングについて詳しくは「モバイルピッキングとは?ピッキングもスマホでする時代へ。」の記事をご覧ください。
在庫 × 生産 × 入出荷を一元化してリードタイムを短縮!クラウドERP『キャムマックス』で実現する在庫管理

クラウドERP「キャムマックス」は在庫管理を中心に、受発注・生産・入出荷などそれぞれの工程間で発生するリードタイムの短縮と業務効率化を実現します。
在庫情報をリアルタイムで把握できるだけでなく、アラート機能により、発注のタイミングを逃さず安定した調達を実現します。また、生産管理機能では需給予測や生産計画はもちろん、所要量計算から引当や出庫までをシステムで管理できるため、製造リードタイムの短縮にも貢献します。
また、出荷業務ではモバイルピッキング機能を活用して、出荷指示から梱包・配送までの流れを効率化します。拠点間での在庫移動も明確に管理されるため、納品リードタイムの安定化にもつながります。
キャムマックスを導入することで、工程ごとの時間と情報のロスをなくし、在庫の過不足を防ぎながら、スピーディかつ安定した供給体制の構築が可能になります。
