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需要予測と在庫管理の基本|計算式からExcel活用、実践ノウハウまで徹底解説
在庫管理

需要予測と在庫管理の基本|計算式からExcel活用、実践ノウハウまで徹底解説

市場の変化が激しく、供給と需要のバランスが複雑化する現代のビジネス環境において、在庫管理の精度は企業競争力を左右する重要な要素となっています。この精度向上のカギとなるのが「需要予測」です。

需要予測とは、過去の販売データや市場動向などをもとに、将来的な需要を定量的に予測して、適切な在庫量を維持するための判断材料とする手法です。ただし、需要予測は絶対ではありません。これはよく天気予報に例えられますが、明日の天気予報の精度は高い反面1ヶ月先の天気を正確に的中させることは困難です。

それでも、私たちは天気予報を参考にして傘を持っていったり、イベントの予定を立てるといった判断をします。需要予測も同様に、完璧な精度を求めるのではなく指針として活用することで、ビジネスの意思決定の質を向上させることが重要です。

本記事では、需要予測の計算方法や使い方、そして在庫管理における具体的な活用法について解説します。

需要予測とは

需要予測とは、製品やサービスに対する今後の需要量を、過去のデータや市場動向をもとに予測することを指します。予測の対象となる期間は、翌週〜数ヶ月先から、年単位までさまざまです。

需要予測の主な目的は、将来の販売動向をあらかじめ把握して、それに基づいた調達や生産、在庫、配送などのリソースを最適に配分することにあります。

  • 在庫計画の最適化

    仕入量・発注量をコントロールして、過不足のない在庫水準を保つ

  • 生産計画・仕入先調整の効率化

    生産や購買スケジュールを需要に合わせて柔軟に設計・計画する

  • 販売・マーケティング施策との連携

    需要が増加することを見込み、在庫を確保することで、品切れによる販売機会の損失を防ぐ

  • 業務コストの削減

    無駄な発注や在庫保管コスト、人件費の削減に貢献する

需要予測は単なる”数字当て”ではなく、経営資源(ヒト・モノ・カネ)の最適な配分を支える役割を果たします。

なぜ需要予測が在庫管理に不可欠なのか

在庫管理では「どの商品を・いつ・どれだけ用意するか」という判断が常に求められます。もし判断を誤れば、以下のような問題が発生します。

  • 在庫切れによる販売機会の損失や顧客離れ
  • 過剰在庫による保管・廃棄コストの増加
  • 急な追加発注による調達コストの高騰


これらの課題を解消する手段が需要予測です。あらかじめ「これくらい売れる」「この時期に需要が上がる」という予測が立っていれば、在庫量の調整を事前に行えるため、欠品を未然に防ぐことができます。
つまり、需要予測は在庫管理の"補助的なツール"ではなく、在庫戦略の中核として位置づけるべき要素と言えます。

基本的な需要予測の計算方法

需要予測は必ずしも、専門的な統計知識やツールがなければできないわけではありません。まずは、シンプルな計算式を活用して需要予測を行いましょう。

① 移動平均法

移動平均法

移動平均法とは、直近の実績データから平均を取り、その平均値を需要予測として用いる手法です。

計算式:予測値 = 直近n期間の売上合計 ÷ n


例えば、毎月の出荷数が「100 → 120 → 110」という流れだった場合、直近3ヶ月の移動平均は「(100+120+110) ÷ 3 = 110」となります。この手法の特徴は、過去の実績を均等に扱い、突発的な変動を平滑化する点にあります。

そのため、数値のブレが大きくない商品や、安定した需要が見込まれるケースにおいて有効です。ただし、急なトレンドの変化や季節要因には反応しづらいため、一定の安定性を前提とした運用が求められます。

特徴と活用ポイント

  • 安定した傾向がある商品や、季節変動の少ないケースに有効
  • 一時的な数値の乱れを平均化して、安定性を向上
  • 直近の動向を迅速に反映することは不得意

② 指数平滑法

指数平滑法

指数平滑法は、直近のデータに「より大きな比重(重み=α)」をかけて予測値を算出します。前月の予測値と売上(実績値)との乖離を徐々に反映させながら、予測値を更新していく手法です。

計算式:予測値 = α × 前月の売上 + (1-α) × 前月の予測値


α(アルファ)は0〜1の間で設定する平滑化定数

指数平滑法の核となる「平滑化定数(α)」※を調整することで、予測の感度を制御することができます。

※平滑化定数はいわゆるパラメータの役割があります。

例えば、前回の予測が112、実績が110、α = 0.6 の場合、以下のような計算となります。

予測値 = 0.6 × 110 + (1 - 0.6) × 112 ≒ 111

αを高く設定すれば直近の変化を素早く反映でき、逆にαを低くすれば安定性の高い予測値が得られます。なお、αは任意の数値ではなく、実績値と予測値の平均絶対偏差が最小となる値を「最適値」として設定する方法などが採用されます。

指数平滑法は、変動があるものの一定の法則性がある商品や、最近の実績をより重視したいケースにおいて有効です。

特徴と活用ポイント

  • 変動が激しい商品やトレンドが変化しやすい市場に有効
  • αの調整により予測の「感度」を変えられる柔軟性
  • 季節性や周期性には対応できない点に留意

③ 加重移動平均法

加重移動平均法

加重移動平均法は、各期間におけるデータに対して異なる重みを設定する手法です。特定期間に強い影響力を持たせることができるため、最新の需要傾向をより的確に反映させることが可能です。

計算式:予測値 = Σ (売上 × 重み) ÷ Σ (重み)

※Σ(シグマ) は各月を順に合算することを表します。

例えば3ヶ月分のデータの重みをそれぞれ「1・2・3」とする場合、「100×1 + 120×2 + 110×3」のように各月の「売上 × 重み」を計算します。この手法は柔軟性が高く、商品特性に応じて重み付けのパターンを調整できます。一方で、「それぞれにどの程度の重みを与えるか」という判断には経験や分析力が求められ、主観的な要素が入りやすい点にも注意が必要です。

特徴と活用ポイント

  • 需要の変化に柔軟に対応でき、短期予測に適した特性
  • カスタマイズ性が高く、業務の特性に応じた調整が可能
  • 重み設定に恣意性が入りやすく、定期的な検証が必要

まとめ

手法

特徴

メリット/向いてるケース

移動平均法

一定期間の平均をとる

安定した需要向け。計算も運用も簡単

指数平滑法

直近実績に重みをつける

最新の変化を徐々に反映し、需要変動に柔軟に対応

加重移動平均法

期間ごとに異なる重みを設定

重み設定により最新トレンドを強く反映可能

以上、需要予測の導入として取り組みやすい3つの基本的な計算手法を紹介しました。

いずれも数式ベースで理解でき、データがあればすぐに算出できるため、在庫管理の現場において手軽に始めることができます。

需要予測を定量的に取り入れた在庫管理を実践するための基礎として、まずはこれらの手法から始めてみることをおすすめします。

Excelを活用した需要予測

Excelには「需要予測」を支援する関数が複数用意されています。用途に応じて使い分けることで、シンプルな傾向分析から、高度な時系列予測まで対応できます。

【関数】FORECAST.ETS:季節性を考慮した指数平滑予測

【関数】FORECAST.ETS:季節性を考慮した指数平滑予測

FORECAST.ETS関数は、周期的な変動を伴う需要データの予測に適した関数です。ETSとは「Exponential Triple Smoothing(指数三重平滑化)」の略で、以下の3つの要素を考慮して予測を行います。

  • 過去のトレンド(上昇・下降傾向)
  • 季節性(一定の周期で繰り返すパターン)
  • 現在の基準値(レベル)

この関数では、過去のデータから周期性のパターンを検出して、それを踏まえた将来の数値を予測します。そのため、季節変動や週次・月次といった規則的なリズムを持つ需要データに対して、比較的高い精度で予測することができます。

※「FORECAST.ETS関数」は、GoogleスプレッドシートやExcel for the webには対応していません。Microsoft 365での使用を推奨します。

一定の周期性を持つ消費財や、シーズン性の強い商品を扱う事業において、安定的かつ実務的な需要予測を行う上で非常に有効です。

適用シーン

  • アパレルなどの季節商品
  • 飲料・家電など月別で変動する商品

注意点

  • 複数要因(広告費・気温など)の同時分析には非対応
  • 明確な季節性がない場合の予測精度低下

【関数】TREND:複数要因を加味した回帰予測

【関数】TREND:複数要因を加味した回帰予測

TREND関数は、線形回帰分析(データの傾向を直線で表現する統計手法)を用いた予測関数です。単なる時間経過による変化だけでなく、複数の要因(説明変数)を組み合わせて需要を予測できる点が特徴です。

例えば、売上が「販売価格」「広告」「気温」など複数の要因に左右される場合、それぞれを変数としてTREND関数に入れることで、より実態に近い予測ができます。ただし、変数の適切な選定やデータの整備が前提となる点には注意が必要です。

適用シーン

  • 広告キャンペーンによる需要変動の予測
  • 気温や経済指標に連動する商品の販売数予測
  • 複数要因を考慮した商品カテゴリ別の需要分析

注意点

  • 入力するデータの整合性(欠損値や異常値)への注意
  • 指数関数的なトレンドでは精度が低下

【関数】GROWTH:指数関数的成長の予測

【関数】GROWTH:指数関数的成長の予測

GROWTH関数は、データが一定の割合(%)で増加していくケースに有効な指数回帰モデルです。一定の「増加量」で増える直線(線形回帰)ではなく、一定の「増加率」で増えていく曲線(指数関数)として成長パターンをモデル化します。

例えば、EC新商品の販売が「100 → 150 → 225」と拡大しているようなケースでは、単なる線形回帰よりもGROWTH関数の方が予測精度が高くなる傾向があります。成長率が加速度的に上昇する局面や、スタートアップ期の製品群などに向いています。ただし成長率は永続的に続くものではなく、一定のタイミングで鈍化や飽和に転じるため、短期的な予測や特定フェーズの分析に限定して活用することが推奨されます。また、異常値を含むデータには過敏に反応するため、事前にデータを整える必要がある点にも注意が必要です。

適用シーン

  • スタートアップ製品や新規市場参入時の需要予測
  • バイラル効果を伴うサービス(SNS、アプリなど)の成長分析
  • 感染症や災害需要など急拡大傾向の把握

注意点

  • 成長の鈍化や飽和のタイミングは予測不可
  • データの変動が大きい場合は予測精度が不安定

補足:「GROWTH」と「FORECAST.LINEAR」の違い

比較項目

GROWTH

FORECAST.LINEAR

数学モデル

指数(曲線)

線形(直線)

特徴

成長率が一定(割合で増加)

増減幅が一定

敵したデータ

成長率の高い商品・急拡大市場

安定的な推移・長期傾向

利用目的

成長性の高い製品の短期予測

安定商品の中長期予測

GROWTH関数と対比されやすい関数として、FORECAST.LINEAR関数が挙げられます。

FORECAST.LINEAR関数は線形回帰に基づいており、数値が一定の増減幅で推移すると想定されます。つまり、売上が毎月100ずつ増えるような「直線的な傾向」に対しては、FORECAST.LINEAR関数が適しています。

対してGROWTH関数は、売上が毎月20%ずつ増加するような「割合ベースの伸び」に対応するモデルです。そのため、新規サービスのユーザー数やアクセス数などが加速度的に増加しているケースでは、GROWTH関数の方が実態に即した予測を行えます。

両者を使い分ける際は、データが線形的に変化しているのか、指数関数的に成長しているのかを見極めることがポイントです。

需要予測の実践ポイント

データ不足やバラつきがある場合の対処法

需要予測の出発点となる販売実績データが十分に蓄積されていない場合や、データに大きなバラつきが見られる場合には、予測の精度が大きく低下する可能性があります。これは、統計モデルが「過去の傾向を将来に当てはめる」ことを前提としている以上、信頼できる過去データが必要不可欠だからです。
こうした状況では、扱うデータの単位を見直すことが有効です。

例えば、商品単位での予測が困難な場合には、カテゴリ単位やブランド単位といった”より大きなまとまり”で傾向を把握することで、変動を平均化できます。また、販売開始から日が浅い商品であれば、類似商品の過去データを参照して初期の需要傾向を推定する方法も有効です。

外的要因を予測に組み込む方法

多くの業種において、需要は過去の販売実績だけで決まるものではなく「気象条件」「マーケティング施策」「イベント」「競合動向」など、さまざまな外的要因の影響を受けますとりわけ消費財や飲食、アパレルといった業態では、気温や天候の変化が短期的な需要に直結します。

こうした外部要因を取り込むためには、まずそれらを数値データとして変換する必要があります。

例えば、気温であれば平均気温や最高気温の数値、キャンペーンであれば実施期間を「1 (実施あり)」「0 (実施なし)」といった数値に置き換えます。これにより、過去の販売実績と外的要因との関係性を把握でき、将来の予測にも反映させることが可能です。

併用すべき在庫管理手法

需要予測は、それ単体で完結させるものではありません。予測結果を実際の発注業務に活用するには、実務的な在庫管理手法と組み合わせる必要があります。代表的な手法として、安全在庫の設定および発注点管理が挙げられます。

安全在庫

需要の予測誤差や納品の遅延、不測のトラブルなどに備えて、一定のバッファを在庫として保持する考え方です。予測には必ず誤差があるため、その誤差幅やサービスレベルに応じて安全在庫を設定することで、欠品のリスクを抑えます。

発注点管理

在庫数量がある一定の水準を下回った時点で、自動的に発注を行う仕組みです。例えば、日々の平均需要と納品リードタイムを掛け合わせた数値に安全在庫を加えることで、予測に基づく発注タイミングを設計します。

このように、需要予測は在庫管理の仕組みと組み合わせることで、より実践的でリスクの少ない運用が可能になります。需要予測を有効に活用するには、その予測結果を具体的な運用判断にどう落とし込むかという設計がポイントとなります。

※安全在庫について、詳しくは「安全在庫の役割と計算方法 ~適正在庫を維持するための考え方と実践マニュアル」の記事をご確認下さい。

需要予測を活用した在庫管理を実現!クラウドERP『キャムマックス』

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需要予測を業務に取り入れることで、在庫の最適化と業務効率化は大きく前進します。しかし、精度の高い予測を現場レベルで活かすには、在庫管理以外にも・販売管理・購買管理・生産管理・財務会計といった業務全体をつなぐ基盤が欠かせません。そこで、クラウドERP「キャムマックス」なら、様々なバックオフィス業務と連携しているため、需要予測の結果を即座に発注計画や仕入判断に反映することが可能です。

AIモデルとの連携で、予測の“実用性”を最大化

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キャムマックスは、AIによる高度な需要予測にも対応しています。

ソニーのAI予測分析ツール「Prediction One」との連携により、業務データから複雑な変動要因をAIが自動で学習して、予測モデルを構築します。この連携により、単なる数式ベースの予測ではなく、実データに基づいた精度の高い予測値を、ERPを通じてダイレクトに活用することが可能です。

予測の“正しさ”と、“使えるかたちで活かす仕組み”の両立。それを実現するのが、ERP型クラウドサービス「キャムマックス」です。

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