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在庫評価の基本がこれでわかる!実務に役立つ評価方法と選び方
在庫・倉庫管理

在庫評価の基本がこれでわかる!実務に役立つ評価方法と選び方

在庫評価とは、企業が保有する商品や原材料といった「棚卸資産」の価値を金額で算定する会計上の手続きです。正しい在庫評価を行うことは、決算書の信頼性を高めるだけでなく、利益や税金の額にも大きな影響を与えるため、経営に直結する重要なテーマといえます。しかし、評価方法には複数の種類があり、どの方法を選ぶかによって財務数値が変動するため、初心者にとっては分かりにくい部分も少なくありません。また、実務ではエクセルで管理すべきか、専用システムを導入すべきかといった悩みも多く見られます。

本記事では、在庫評価の基本的な考え方から代表的な評価方法の特徴、企業経営への影響、さらに実務に役立つ管理方法やシステム活用のポイントまでを分かりやすく解説します。自社に最適な在庫評価の仕組みを理解し、効率的な経営判断につなげていただければ幸いです。

在庫評価とは? 会計における「棚卸資産」の意味


在庫評価とは、企業が保有する商品・原材料・仕掛品などの棚卸資産を決算時点の金額で計上するための会計手続きであり、貸借対照表と損益計算書の双方に影響を与える重要概念であることから、適切な方法の選択と継続適用が求められます。


棚卸資産は貸借対照表の流動資産として認識される


棚卸資産は通常一年以内に販売または消費される資産として流動資産に分類され、商品・製品・半製品・仕掛品・原材料・貯蔵品などが含まれます。これらの評価額は期末資産残高のみならず、翌期以降の原価計算や資金繰り計画にも影響を与えるため、数量の実査と価格の整合が不可欠です。


在庫評価は売上原価と利益を決定する会計手続きである


期首在庫に当期仕入高を加え、期末在庫を控除して売上原価を求める構造上、期末在庫の評価額は当期利益を直接左右します。価格上昇局面では評価額が高いほど利益は増えやすく、下落局面では逆に利益を圧縮しやすくなるため、在庫評価とは数値の整合性と経営成績の適正表示を同時に満たす行為と位置付けられます。


取得原価主義と低価法により評価額の下限が定まる


原則は取得原価での評価であり、市場価格の著しい下落や陳腐化が認められる場合には低価法により回収可能価額まで切り下げます。これにより資産の過大計上を防ぎ、実態に即した財政状態を示すことができます。評価損は費用化され、翌期の回復期待を安易に織り込まないのが基本です。


評価方法の選択は継続適用と税務上の届出が要点となる


先入先出法や総平均法、移動平均法、個別法、最終仕入原価法、売上還元法などの中から自社の実態に合う方法を選択し、原則として継続適用します。方法の選択や変更には税務上の手続きが伴い、届出がない場合は最終仕入原価法が適用される取扱いに留意が必要です。方法の違いは在庫額と原価のタイミングを変化させ、利益水準にも影響します。

在庫評価が企業経営に与える影響


在庫評価は単なる会計処理ではなく、企業経営全体に大きな影響を与えるものです。評価額は棚卸資産として貸借対照表に反映されると同時に、損益計算書の売上原価や利益額を左右します。その結果、税金の支払額や財務指標の数値も変化するため、経営者や財務担当者は評価方法の違いによってどのような結果が生じるのかを理解しておく必要があります。


利益と税金への影響


期末在庫を高く評価すると売上原価が減少し、利益が増加しますが、その分税金の負担も重くなります。逆に低く評価すると利益が圧縮され、納税額を抑えることができます。このように在庫評価は利益調整の役割を持つため、適切な手法を選び、継続的に適用することが重要です。


キャッシュフローへの影響


在庫評価は会計上の数値にとどまらず、法人税の支払額を通じて実際の資金繰りにも影響を及ぼします。特に中小企業は資金余力が限られているため、在庫評価の変動によってキャッシュフローが圧迫されることがあります。そのため資金管理の観点からも、評価方法を慎重に選ぶことが求められます。


財務指標と経営判断への影響


在庫評価の違いは自己資本比率や流動比率といった財務指標に反映されます。棚卸資産を過大に評価すると一見健全に見えますが、実態以上の資産を示してしまいます。その結果、誤った数値に基づいて経営判断や金融機関との融資交渉を行うリスクが高まります。正確な評価を行うことが、健全な経営判断につながります。


経営戦略上の影響


業種や商品の特性によって、適した評価方法は異なります。例えば価格変動の激しい商品を扱う企業では、低価法を採用してリスクを回避する方が有利になる場合があります。一方で価格が安定している商品を扱う企業では、平均法を用いることで長期的な利益計画を立てやすくなります。このように在庫評価は会計処理にとどまらず、企業の経営戦略を支える重要な仕組みといえます。

在庫評価額算出方法の種類


在庫評価額を算出するには大きく分けると原価法と低価法の2種類あります。

低価法はそのまま在庫の取得価額と評価額のうち低い方を採用するという方法です。一方、原価法には多くの方法が存在しますので、その主な種類をご紹介します。

原価法の種類 概要 メリット デメリット
最終仕入原価法 最新の仕入価格で在庫を評価 計算が簡単で分かりやすい 仕入価格の変動が大きい場合、実際の状況と乖離する可能性がある
個別法 各商品ごとの取得価格を基に評価 個別の商品価値を正確に把握できる 商品数が多い場合、計算が煩雑になる
先入先出法 最初に仕入れた商品の価格から順に評価 仕入価格の変動が激しい場合でも、現実的な売上原価を算出しやすい 物価変動を細かく考慮できず、業務の標準化もできない
総平均法 全在庫の平均価格を基に評価 価格の変動が平準化され、安定した評価が可能 期末にならないと評価できない
移動平均法 現時点までの平均値を元に評価 仕入ごとに最新の平均価格を反映できる 仕入れのたびに計算する必要がある
売上還元法 販売価格の一定割合を在庫価格として評価 計算が簡単で分かりやすい 部品や未完成品などには適用できないため業種が限定される

最終仕入原価法


最終仕入原価法は、在庫の仕入価格を常に最新価格に更新し、在庫評価額を算出する方法です。つまり、最後に仕入れた商品の価格で算出されます。

この方法は、簡単に計算できるのが特徴ですが、仕入価格の変動が激しい場合に使用すると、在庫評価額も大きく変動することになり、実際の額と乖離してしまうというデメリットがあります。


個別法


家庭での家計簿と同じように、一つ一つの商品ごとの取得価額を合計する方法です。在庫を数えられるほどの小規模企業なら良いですが、扱う商品数や種類が多い企業では手間がかかります。


先入先出法


先に仕入れた金額のものを先に販売したと仮定する方法で、販売するたびに在庫評価が可能です。

たとえば100円で10個、150円で20個仕入れた後に20個販売した場合には、売上原価は100円x10と150円x10を合計します。


総平均法


期首残高や仕入商品の合計金額を個数で割って平均値を出し、その値を元に在庫評価を行う方法です。

たとえば、期首残高が50個で合計1万円、仕入数量が50個で合計2万円、期末在庫が40個なら、まず1万円と2万円を合計して3万円を合計数の100個で割り、1個当たりの単価300円を出します。期末在庫が40個なら、100個-40個で60個売れたことになり、単価300円x60個=18,000円が原価となります。

ただこの方法は、期末にならないと評価できないというデメリットがあります。


移動平均法


先ほどの総平均法を期中でも可能にしたのが移動平均法です。現時点までの平均値を元に在庫評価を行います。

期中でも評価できるという反面、仕入れのたびに計算する必要があるため手間がかかります。


売上還元法


販売価格の何割にあたるのか、グループごとに割合で在庫評価を行う方法です。たとえば、販売価格が1,000円で、そのうち6割を在庫価格とする場合には、在庫評価額は600円になります。

一見簡単そうですが、部品など直接販売しない在庫には適用できないため、完成した商品を仕入れて販売している卸売業や小売業でしか使えないのがデメリットです。

在庫評価損・在庫評価益とは?


上記のような方法で在庫評価を行った結果、棚卸資産の金額が決まりますが、取得価額と評価額が乖離している場合、評価損や評価益が生じます。

ただし、「損」や「益」とついていても、実際に損をしている、または利益が出ているという意味とは異なります。また、計上できるかどうかは税法によってそれぞれ以下のように定められています。


在庫評価益


在庫評価額の方が大きい場合は、その分実際にその在庫を販売する際の利益になり得ますから、決算時には特別な仕訳は行わない決まりになっています。


在庫評価損


在庫評価損は在庫評価替とも呼ばれ、在庫取得時の金額より評価額が低くなってしまった場合を表します。

在庫評価方法に原価法を採用している場合には、在庫評価損を限られた条件下でのみ計上することができます。

その条件とは①災害による著しい損傷、②著しい陳腐化、③その他準ずる事実の発生となっており、今後在庫を販売することができないようなケースに限られます。詳しくは、国税庁のページをご確認ください。

第2款 棚卸資産の評価損|国税庁

在庫評価の管理方法は?エクセルとシステムの比較


在庫評価を実務で管理する際には、大きく分けて「エクセルを使う方法」と「専用システムを導入する方法」があります。企業規模や取り扱う商品の数、業務フローの複雑さによって最適な選択肢は変わります。それぞれの特徴を理解し、自社に合った方法を選ぶことが重要です。


エクセルで管理する場合


エクセルは初期費用がかからず、誰でもすぐに利用できる点が大きなメリットです。数式を設定すれば売上原価や在庫評価額の計算を自動化できるため、小規模事業者や在庫数が少ない企業にとっては便利なツールといえます。しかし、取扱商品が増えると入力作業が煩雑になり、人的ミスやデータ不整合のリスクが高まります。さらに複数の担当者で同時に作業をすることが難しく、データの最新性を保つのも困難です。そのため、ある程度の規模を超えるとエクセルだけでの管理には限界が生じます。


システムで管理する場合


在庫評価を効率的かつ正確に行うためには、在庫管理システムやERPシステムを利用する方法が有効です。在庫管理システム(WMS)では商品の入出庫や棚卸データをリアルタイムで把握でき、在庫評価額を自動算定できます。会計システムと連携させれば、棚卸資産の仕訳をスムーズに行うことができ、月次決算のスピードも向上します。さらにERPシステムを導入すれば、在庫管理・販売管理・会計管理が一元化され、評価の自動化と精度向上を同時に実現できます。


エクセルからシステムへ切り替えるタイミング


取扱商品が増えて入力作業が負担になったときや、在庫評価の計算に時間がかかるようになったときは、システム導入を検討するタイミングです。特に税務申告や決算業務の精度を高めたい場合、システム化は大きな効果を発揮します。クラウド型のERPや在庫管理システムであれば導入コストを抑えつつ、業務全体を効率化できるため、中小企業にとっても現実的な選択肢となります。

クラウドERP「キャムマックス」であれば在庫評価を効率化良く管理ができる!


クラウドERP「キャムマックス」であれば在庫評価を効率化良く管理ができる!


在庫評価を正確かつ効率的に行うためには、在庫の数量と金額をリアルタイムで把握し、評価方法に基づいて自動計算できる仕組みが不可欠です。クラウドERP「キャムマックス」は、在庫管理・販売管理・会計管理を一元化しているため、在庫評価の処理を大幅に効率化できます。


在庫数と仕入価格をリアルタイムで反映できる


キャムマックスは入庫・出庫のたびに在庫数と仕入価格を自動更新する仕組みを備えています。これにより、最終仕入原価法や移動平均法などの評価方法を採用しても常に正しい金額を算定することが可能です。エクセルのように手作業で入力や再計算を行う必要がなく、ミスを防ぎながらスピーディーに評価を行えます。


会計仕訳まで自動で連動できる


在庫評価で算定された金額は、会計システム上の仕訳データに自動的に反映されます。これにより、棚卸資産の金額と売上原価が常に整合し、決算処理や月次決算のスピードを大幅に向上させることができます。担当者は仕訳を一つひとつ作成する手間から解放され、確認業務に専念できるようになります。


多拠点や複数事業の在庫もまとめて管理できる


キャムマックスは複数倉庫や拠点の在庫を一元管理できるため、全社レベルでの在庫評価を一度に行うことができます。拠点ごとにデータを集計してから評価額を算出する必要がないため、事務作業が軽減され、規模の大きい企業でも効率的に在庫評価を行えます。


中小企業でも導入しやすいコスト設計


キャムマックスはクラウド型のERPであり、初期費用や月額費用が抑えられているため、中小企業でも導入しやすいのが特徴です。システム導入に大きな投資が難しい企業でも、在庫評価を含む基幹業務の自動化を実現できます。

FAQ(よくある質問)


Q1. 在庫評価とは何ですか?


A:企業が保有する在庫の価値を算出する事を指します。会計上『棚卸資産評価』とも呼ばれ、決算時に在庫の金額を計算して帳簿に記録することが求められます。評価方法によって企業の利益や負債に影響を及ぼすため、適切な方法を選ぶことが重要です。


Q2. 在庫評価にはどのような方法がありますか?


A:大きく「低価法」と「原価法」の2つがあります。また原価法には、最終仕入原価法・個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・売上還元法といった複数の算出法があります。それぞれ特性があるため企業の状況に合わせた選択が必要です。


Q3. 在庫評価損と評価益とは何ですか?


A:「在庫評価損」は在庫の取得価格が評価額を上回った場合に発生します。例えば、災害や商品の陳腐化により在庫の価値が下がった場合に記録されるものです。「在庫評価益」は評価額が取得価格を上回った場合に発生します。ただし会計上、評価益は特別な仕訳を必要としません。


Q4. 在庫評価を効率的に管理する方法はありますか?


A:在庫評価を効率的に行うためには、在庫管理システムやERP(統合基幹業務システム)の活用が効果的です。これにより在庫数量や仕入価格をリアルタイムで把握できる上、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。また、定期的な在庫点検を行うことで評価の精度をさらに高められます。


Q5. キャムマックスのクラウドERPはどのように役立ちますか?


A:クラウドERP『キャムマックス』を導入することで、日々の在庫管理から決算時の在庫評価までシステム上で行うことが可能です。在庫管理機能と会計機能が一体化しているため業務全体の効率が向上します。


Q6. 初めて在庫評価を行う場合、何から始めればいいですか?


A:初めて在庫評価を行う場合は、まず現在の在庫数と取得価格を正確に把握することから始めましょう。その後、業界や企業の特性に合った評価方法を選択することが重要です。また、在庫管理システムやERPを導入することで評価作業の効率化や正確性が向上します。

この記事を書いた人

ライター
株式会社キャム 取締役COO

下川 貴一朗

証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。

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