実績管理とは?初心者でもわかる表の作り方とおすすめツールを解説
企業経営において「計画通りに進んでいるのか」「どの程度成果が出ているのか」を把握するために欠かせないのが実績管理です。売上やコストなどの実績を数値として記録・分析することで、計画とのズレを早期に発見し、改善に結びつけることができます。しかし実際には「表の作り方がわからない」「エクセルで管理するのは手間がかかる」といった悩みを抱える中小企業も少なくありません。
本記事では、初心者でも理解できる実績管理の基本から、エクセルでの表作成方法、システム化による効率化のメリット、さらにおすすめのツールやシステムまでをわかりやすく解説します。本記事を読むことで、自社に最適な管理方法が見つかり、日々の業務改善やDX推進に役立てられるでしょう。
目次
実績管理とは?初心者でもわかる基本を解説
実績管理は、企業が日々の成果を定量的に記録・分析し、計画とのズレを明らかにする重要な手法です。初心者でも理解しやすいように、その意味や役割、予実管理との違いについて解説します。
実績管理の基本的な意味とは?
実績管理とは、売上やコスト、利益、人件費などの実績値をデータとして集め、計画値と比較することで経営状況を把握する取り組みを指します。単なる数字の羅列ではなく、日々の業務の積み重ねがどのように成果へつながっているかを見える化する役割を持っています。これにより、経営者は「どこが予定通り進んでいるのか」「どこに改善余地があるのか」を判断できます。
なぜ実績管理が必要とされるのか
企業活動において、計画だけでは現状把握ができません。例えば、売上が伸び悩んでいる場合、単に「売れていない」と見るのではなく、地域別・商品別の実績を分析することで原因を特定できます。こうした正しい現状把握ができるのは、実績管理があるからです。特に中小企業では、人材や資源が限られているため、効率的な改善のためには実績管理が不可欠といえるでしょう。
予実管理との違いを理解しよう
混同されやすいのが「予実管理」です。実績管理が“実際の成果を記録すること”に重きを置くのに対し、予実管理は“予算や計画と照らし合わせて分析すること”が中心です。例えば「予算1,000万円に対して実績900万円」というように、差異を分析することで今後の経営戦略を見直す判断材料になります。つまり、実績管理は土台であり、予実管理はその延長線上で行う評価作業なのです。
中小企業にとっての実績管理の役割
大企業だけでなく、中小企業にとっても実績管理は大きな意味を持ちます。従業員数が少ない企業ほど「誰が・どの仕事で・どんな成果を上げたか」を見える化することが、業務改善や評価制度の基盤になります。また、限られたリソースを最適に配分するためにも、正しい実績データの蓄積と管理が経営改善の第一歩といえるでしょう。
実績管理表作成の方法
実績管理を始めるうえで最も身近で取り組みやすいのが「実績管理表」を作成することです。エクセルやスプレッドシートを活用すれば初心者でも簡単に始められますが、項目設定や入力ルールに注意しなければ効率的な管理はできません。ここでは実績管理表の作り方を段階的に解説します。
実績管理表に必要な基本項目
実績管理表を作成する際には、まず「どのような数値を記録するか」を明確にする必要があります。一般的には、日付、取引先名、商品名、売上額、原価、利益率などが基本項目です。これらを整然と並べて記録することで、後から集計や分析をしやすくなります。さらに、部門別や担当者別に項目を追加することで、責任の所在や成果の見える化が可能になります。
以下は、中小企業が売上やコストを把握するために活用できる実績管理表の一例です。基本的な項目を揃えておくことで、予算との比較や部門ごとの成果分析に役立ちます。
日付 | 取引先 | 商品名 | 売上金額 | 原価 | 数量 | 粗利 | 担当者 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2025/08/01 | 株式会社A | 商品X | 100,000 | 60,000 | 10 | 40,000 | 田中 |
2025/08/02 | 株式会社B | 商品Y | 80,000 | 50,000 | 8 | 30,000 | 佐藤 |
2025/08/03 | 株式会社C | 商品Z | 120,000 | 70,000 | 12 | 50,000 | 鈴木 |
このような表をベースに、関数(=売上金額−原価×数量 など)を入れることで自動計算が可能になります。また、条件付き書式を使えば「粗利が3万円未満なら赤表示」など、改善ポイントをすぐに把握できます。
<h3>エクセルを使った実績管理表の作り方</h3>
エクセルは多くの中小企業で利用されているツールであり、関数や条件付き書式を活用することで実績管理に十分対応できます。例えばSUM関数で自動合計を算出したり、条件付き書式で目標値を下回ったセルを赤字にするなど、視覚的に改善点を把握できます。さらにピボットテーブルを活用すれば、売上の推移や部門ごとの達成状況をグラフ化でき、経営会議でも即活用できる資料が作成可能です。
<h3>Googleスプレッドシートの活用方法</h3>
近年はGoogleスプレッドシートを使った実績管理も増えています。特にリモートワークや複数拠点での業務がある企業にとっては、リアルタイムでの共同編集が可能である点が大きな魅力です。クラウド上でデータが管理されるため、バックアップや更新も自動で行われ、セキュリティ面でも安心です。エクセルと同じ関数やフィルタ機能が使えるため、エクセルに慣れている方でも移行しやすいのが特徴です。
<h3>表作成で注意すべきポイント</h3>
実績管理表を効果的に運用するには、入力ルールを統一することが重要です。たとえば日付のフォーマットを「YYYY/MM/DD」に揃える、取引先名の入力方法を統一するなど、些細なルールを守ることでデータの整合性が保たれます。また、表の項目は最初から詰め込みすぎず、必要最小限から始めるのがおすすめです。使いながら改善していくことで、現場に定着しやすくなります。
実績管理表のサンプル例
① 基本的な実績管理表(売上・原価・粗利の把握)
日付 | 取引先 | 商品名 | 売上金額 | 原価 | 数量 | 粗利 | 担当者 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2025/08/01 | 株式会社A | 商品X | 100,000 | 60,000 | 10 | 40,000 | 田中 |
2025/08/02 | 株式会社B | 商品Y | 80,000 | 50,000 | 8 | 30,000 | 佐藤 |
2025/08/03 | 株式会社C | 商品Z | 120,000 | 70,000 | 12 | 50,000 | 鈴木 |
予算と比較する実績管理表(予実管理)
日付 | 商品名 | 予算売上 | 実績売上 | 差異 | 達成率 | 担当者 |
---|---|---|---|---|---|---|
2025/08/01 | 商品X | 120,000 | 100,000 | -20,000 | 83% | 田中 |
2025/08/02 | 商品Y | 70,000 | 80,000 | +10,000 | 114% | 佐藤 |
2025/08/03 | 商品Z | 110,000 | 120,000 | +10,000 | 109% | 鈴木 |
部門別でまとめた実績管理表(組織ごとの成果分析)
部門 | 売上合計 | 原価合計 | 粗利合計 | 予算売上 | 差異 | 達成率 |
---|---|---|---|---|---|---|
営業部 | 1,500,000 | 900,000 | 600,000 | 1,600,000 | -100,000 | 94% |
販売部 | 1,200,000 | 700,000 | 500,000 | 1,100,000 | +100,000 | 109% |
製造部 | 800,000 | 500,000 | 300,000 | 850,000 | -50,000 | 94% |
実績管理をクラウドシステムで管理するメリット
従来はエクセルや紙で管理されていた実績管理ですが、クラウドシステムを導入することで業務効率や精度が大きく向上します。クラウドならではの強みを活かすことで、中小企業でも手軽に高度な管理体制を実現できるのが大きな特徴です。ここではクラウドシステムで実績管理を行う具体的なメリットを解説します。
入力や集計の自動化で業務効率が向上
クラウドシステムを利用すると、売上や在庫などのデータを自動で取り込み、リアルタイムで反映できます。手作業での入力や転記が不要になり、エラーを減らしつつ作業時間を大幅に削減できます。経理や管理担当者の負担を軽減し、コア業務に時間を充てられるようになります。
リアルタイムでの情報共有
クラウドはインターネット環境があればどこからでもアクセスできるため、現場で入力した実績データが瞬時に本社や経営者に共有されます。これにより、社内の情報格差がなくなり、拠点間や部門間で同じデータを基に判断できるようになります。スピード感のある経営判断が可能になる点は大きな魅力です。
分析機能による経営判断の高度化
クラウドシステムには分析機能やダッシュボードが備わっているものが多く、売上推移や利益率、担当者ごとの達成率などをグラフで可視化できます。過去のデータを蓄積して傾向分析を行えば、将来の戦略立案や需要予測に活かすこともできます。紙やエクセルでは難しかった分析が、クラウドでは自動的に実現できるのです。
セキュリティとデータ保護が強化される
クラウドシステムはデータがオンライン上に保存され、自動バックアップやアクセス権限設定が標準的に備わっています。万が一パソコンが故障してもデータは安全に保護され、不正アクセスや情報漏洩のリスクも低減できます。特に中小企業ではIT専門部署を持たないケースが多いため、セキュリティをベンダーに任せられる点は安心材料となります。
柔軟な働き方に対応できる
クラウドであれば、オフィスだけでなく出張先や自宅からでもアクセスが可能です。リモートワークや多拠点展開を行っている企業にとっては、リアルタイムでの情報共有がしやすくなり、業務スピードが格段に上がります。現場と本社の間にあったタイムラグが解消されることで、組織全体の生産性が向上します。
実績管理表作成ツール・システム・アプリ
実績管理はエクセルでも可能ですが、より効率的に行うためには専用のツールやシステムを活用するのがおすすめです。ここでは代表的な種類を紹介し、それぞれの特徴や活用シーンを解説します。
予実管理ツール・システム・アプリ
予算と実績を比較し、差異を分析するための予実管理ツールは、多くの中小企業で導入が進んでいます。例えば「Board」「Loglass」などのクラウド型サービスは、エクセルよりも精度の高い予実分析を可能にし、経営判断のスピードを高めます。特に資金繰りや人件費の把握に直結するため、財務管理の基盤として有効です。
SFA(営業支援システム)
営業活動における実績管理にはSFA(Sales Force Automation)が適しています。案件ごとの進捗や成約率、担当者別の売上実績をリアルタイムで把握でき、営業マネージャーの管理業務を効率化します。代表的なツールとしては「Salesforce」「eセールスマネージャー」などがあり、営業現場と経営層をつなぐ役割を果たします。
ERP(統合基幹業務システム)
ERPシステムは販売管理・在庫管理・会計管理などを一元化でき、実績管理機能も標準搭載されているケースが多いです。複数部門にまたがるデータを統合できるため、企業全体での業績把握が可能になります。中小企業向けのクラウドERPとしては「キャムマックス」などがあり、コストを抑えつつ実績管理と他業務を同時に効率化できます。
BIツール(データ分析・可視化)
実績データを高度に分析・可視化するにはBI(Business Intelligence)ツールが効果的です。グラフやダッシュボードを用いて複雑なデータを直感的に理解できるため、経営会議やレポート作成に役立ちます。代表的な製品には「Tableau」「Power BI」などがあり、ERPや会計ソフトと連携させることでより実用的になります。
会計ソフト
「弥生会計」「freee」「マネーフォワードクラウド会計」などの会計ソフトは、売上や支出の実績を直接管理できます。小規模な企業では会計ソフトを実績管理の基盤として活用するケースも多く、経理と一体化した管理が可能です。
プロジェクト管理ツール
製造業やIT業界では、工数やタスク進捗の実績管理が重要です。「Asana」「Backlog」「Redmine」といったプロジェクト管理ツールは、タスクごとの進捗を記録し、計画と実績のギャップを明らかにします。これにより、人員配置や作業効率の改善に直結させることができます。
キャムマックスなら実績管理はもちろんあらゆる業務をまとめて対応
国産の実績管理システムには、予実管理に特化したものや、Excel互換の柔軟性を備えたものなど多彩な選択肢があります。しかし、実績管理だけでなく「在庫・販売・購買・会計」といった周辺業務を同時に効率化できる製品は限られています。キャムマックスは、こうした複数業務を統合できるクラウドERPであり、実績管理を含めたバックオフィス全体を一元化できる点が大きな特徴です。
実績管理を中心に各業務データを自動連携
他システムでは予実管理を単独で行うケースが多いですが、キャムマックスでは受注・発注・在庫・会計の情報が自動で反映され、リアルタイムに実績管理へ集約されます。手作業による転記や二重入力が不要になり、業務全体の効率が大幅に改善します。
中小企業でも導入しやすいコスト設計
多機能なERPは高額になりがちですが、キャムマックスは初期費用・月額費用ともに中小企業向けに抑えられており、段階的な機能追加も可能です。これにより、導入時の負担を最小限にしつつ、自社の成長に合わせてスケールアップできます。
在庫・販売・購買・会計をまとめて管理
実績管理にとどまらず、在庫管理、販売管理、購買管理、財務会計までを一元管理できる点がキャムマックスの強みです。例えば受注情報が登録されれば在庫数が即時に反映され、売上計上と同時に会計仕訳まで自動処理されます。これにより、部門ごとにシステムを使い分ける必要がなくなり、全社的に業務がスムーズに流れる仕組みが整います。
外部サービス連携で柔軟な拡張性
キャムマックスは、ECカート、モール、POS、WMSなど多彩な外部サービスとAPI連携が可能です。これにより、実績管理を軸としながら、販売チャネルや物流まで含めた業務全体の最適化を実現できます。
他にもあるおすすめの実績管理システム
実績管理や予算管理は企業の基盤を支える重要な業務ですが、特に中小企業にも安心して使える国産のシステムは以下の通りです。それぞれ特徴に応じて、導入目的や業務スタイルから選びやすく整理しています。
クラウドERP freee(freee株式会社)
AIによる自動仕訳、経費精算、見積・請求書作成、部門別売上進捗管理、プロジェクト収支の把握、経営レポート・予実管理機能を搭載。 - 導入メリット:操作が簡単でリアルタイムに経営状況を可視化できるため、中小企業での導入が進んでいます。
Amoeba Pro 管理会計クラウド(京セラコミュニケーションシステム)
アメーバ経営と管理会計を融合したクラウドサービスで多次元データベースによるセグメント分析、予算作成・実績登録・承認・集計がリアルタイムでできます。
YOJiTSU(シスプラ株式会社)
会計ソフトと連携し、予算作成・実績管理を簡単に開始。RPAによる自動帳票作成や財務・予算のリアルタイム共有が可能。:contentReference[oaicite:5]{index=5} - 導入メリット:既存の会計システムからすぐに予実管理を開始したい企業に適しています。
Loglass 経営管理(株式会社ログラス)
予算策定・予実管理・見込み更新・管理会計のフローを統合できるクラウド経営管理ツールです。経営企画だけでなく、現場の社員も含めた情報共有を強化し、全社一体で業績向上を目指す「スクラム経営」を後押しします。外部システムとの連携も柔軟です。
Manageboard(株式会社ナレッジラボ)
エクセル感覚で導入でき、勘定科目をベースとした予算管理や差異分析を仕訳単位で行える予実管理プラットフォームです。管理会計に強い専任担当による導入支援もあり、全社の数字理解を促進します。
DIGGLE(DIGGLE株式会社)
財務会計やExcelデータとの自動突合、スナップショット比較、差異分析など高度な予実管理に対応。直感的なUIで事業現場にも優しく、迅速な経営判断を支援します。
Sactona(アウトルックコンサルティング株式会社)
Excelのレイアウトをシステム上にそのまま反映可能な柔軟性が魅力。予実・見込の自動集計やダッシュボード、コメント管理も可能で、複数領域の経営情報を一元管理できます。
ProActive C4(SCSK株式会社)
ERP(基幹業務システム)としての導入実績が豊富で、会計・販売管理・人事給与などをカバー。部門やプロジェクト別の予算管理ができ、リアルタイムの予実差異把握にも対応しています。
クラウドERP ZAC
中小〜中堅の製造・プロジェクト型業種を中心に強みを発揮する国内ERPです。業種特有のフローに最適化できる柔軟な構成が可能で、プロジェクト別の予実管理にも対応します。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。