塗料卸売業向け販売管理システムとは?調色・単価・在庫管理を支える仕組み
塗料卸売業が扱う商品は、色・容量・成分などの違いが細かく、同じ商品でも用途や現場条件によって異なります。施工会社・工務店・造船・自動車関連など、多様な業界の顧客に対応する必要もあるため、膨大な商品点数の管理に加え、顧客ごとの細かな単価設定や現場ごとの個別対応が求められます。こうした背景から、日々の販売管理業務は複雑化しやすく、販売管理システムの重要性が高まっています。
本記事では、塗料卸売業が抱える課題と、販売管理システムで実現できる業務改善について解説します。
業界特有の課題
課題① 商品点数の多さと単価管理
塗料は、色・容量・用途・メーカー別に非常に多くのバリエーションが存在し、取扱商品数が数千から数万点に及ぶケースも珍しくありません。同じ商品でも仕様によって異なる品番が存在するため、商品の特定や在庫確認に時間がかかります。
また、仕入先からの頻繁な価格改定やロット単位での仕入値変動により、見積作成時や受注時に正確な価格を即座に参照できる仕組みが求められます。
課題② 電話・FAX依存による受発注ミス
現在も多くの企業では、受発注のやりとりが電話やFAXに依存しています。こうした手段は長年の商慣習として定着していますが、類似した品名の商品を多数扱う塗料卸売業では、注文時に誤認が起きやすく、ミスの温床となっています。
特に、業務が集中する繁忙期や担当者不在時には、納品ミスや請求漏れといったトラブルのリスクが高まります。
課題③ 在庫精度の低下と属人化
在庫管理においては、目視や記憶に頼ったアナログな運用が多く見られます。特定の担当者のみが在庫状況を把握しており、その担当者が不在だと業務が滞るケースも少なくありません。また、棚卸が年に1〜2回しか実施されていない場合、帳簿上の在庫(理論在庫)と実在庫の乖離が大きくなります。
こうした在庫精度の低下は、欠品や過剰在庫となるリスクを引き起こし、キャッシュフローや顧客対応に悪影響を及ぼします。
課題④ 煩雑な調色品管理
塗料卸売業では、現場の要望に応じて独自に色を調整した「調色品」も扱います。調色には色番号や配合比、使用顔料などの詳細な記録が必要ですが、再現性や品質の安定性に課題を抱えているケースも少なくありません。
また、調色にかかる原材料費を正確に把握できず、製品単位での原価管理や価格設定が難しいという課題もあります。こうした管理不備は、利益率の低下や顧客対応の遅れにつながります。
塗料卸売業向け販売管理システムの特徴
塗料卸売業における業務課題は、商品特性や取引慣行によって生じる複雑さや属人化に起因しています。これらに対応するには、汎用的な販売管理システムでは不十分であり、業界特有の商慣習に適したシステムが求められます。
ここでは、塗料卸売業向けシステムの特徴について詳しく解説します。
特徴① 膨大な商品と複雑な単価に対応する管理機能
塗料卸売業では、同一商品の中でも色・艶・容量といった違いにより、数多くの品番が存在します。これらを正確に管理するにはSKU(Stock Keeping Unit;これ以上分類できない最小の在庫単位)管理が必須です。業界特化型システムでは、多様な属性をもとにした品番設定や分類・検索が可能であり、実務に即した運用が可能です。また、得意先ごとの掛率・単価・キャンペーン価格など、複数の価格体系を柔軟に設定・反映できる仕組みが備わっており、受注時に適切な価格を自動適用できます。
【主な機能】
- 商品マスタの階層管理 (カテゴリ別・ブランド別など)
- 得意先別・現場別の単価自動設定
- 購入履歴からの再注文対応
- 単価改定の履歴管理・一括更新
- 伝票作成時の価格自動適用
特徴② 調色業務に対応した生産管理機能
調色は塗料卸売業の中でも属人化しやすい業務です。システムによって調色業務を管理することで、作業品質と業務効率の両立を実現します。調色ごとに顔料や添加剤の配合データを登録して、生産・納品情報を紐付けて管理します。原価も配合内容から自動的に算出されるため、利益率の把握も可能です。
また、過去の配合データが登録されている場合は、調色指示書を受注情報から自動生成できるため、手書きや転記の手間を削減できます。調色に伴う原材料の在庫引当から、工程別の作業指示、原価計算までを一元管理します。
【主な機能】
- 配合データの登録・履歴管理
- 調色指示書の生成
- 原材料の在庫引当
- 調色ごとの生産・納品情報の紐付け
- 使用量に基づいた原価算出
特徴③ 在庫の可視化と属人化解消
正確な在庫情報の把握は、販売・調色・発注の判断に不可欠です。属人化しやすい在庫管理を標準化し、組織全体で共有可能な仕組みを構築します。入出荷や調色処理と連動して在庫数をリアルタイムに更新するため、特定の担当者に依存することなく在庫状況を把握できます。
また、ロット番号や使用期限といった情報も含めて管理でき、在庫精度の向上だけでなく、品質管理やトレーサビリティの強化にもつながります。このように、在庫情報が一元化されることで属人化を解消できます。
【主な機能】
- 棚番号(ロケーション)管理
- 下限在庫数の設定 (発注アラート)
- 拠点別在庫の一元管理
- 棚卸機能
- 過剰在庫、・不動在庫、・回転率の可視化
特徴④ クラウドサービスやEDI連携による業務効率化
拠点間の情報共有や受発注をスムーズに行うには、クラウドサービスやEDI(Web-EDI)といった技術を活用した仕組みが求められます。クラウド型の販売管理システムでは、スマートフォンやタブレットから在庫・納期・単価を確認できます。現場からの急な問い合わせにも即座に回答でき、その場で受注データを作成することも可能です。
また、主要メーカーとのEDI連携により、発注データを電子的にやり取りできるため、電話やFAXでのやり取りが不要になります。手入力や転記の手間を省くことで、事務作業の負担軽減と入力ミスや転記ミスの軽減につながります。
【主な機能】
- クラウドによる拠点間・外出先からのアクセス
- スマートフォン・タブレット対応
- 主要メーカーとのEDI連携
- 定期バックアップとシステムの自動更新
※Web-EDIについて、詳しくは「Web-EDIとは?仕組みや導入メリットを初心者にもわかりやすく解説」の記事をご覧下さい。
主な機能一覧
塗料卸売業向け販売管理システムは、販売・購買・在庫・生産といった一連の業務を横断的に管理します。ここでは、実務で活用される主な機能を4つの領域に分けて解説します。
販売管理
販売管理では、見積から請求までの全工程を一元管理できます。見積をもとに受注データを作成し、納品・請求まで一連の流れで処理することで、作業効率を高め、転記ミスを防ぎます。得意先ごとの価格設定や割引条件も自動で反映されるため、複雑な価格管理や履歴管理にも対応できます。また、受注時点での在庫確認や納期確認も可能なため、円滑な販売業務を実現します。
【対応業務】
見積 / 受注 / 納品書・請求書発行 / 売掛金管理など
購買管理
購買管理機能では、発注から支払までの購買業務を一元管理します。在庫状況や受注状況に応じた発注処理を行い、納品から支払、買掛金管理までをシステム上で完結できます。さらに、EDI連携により主要メーカーへの発注データ送信を効率化します。また下限在庫数を設定することで、適切なタイミングでの発注が可能となり、安定した供給体制を支援します。
【対応業務】
発注 / 仕入 / 支払管理など
生産管理
調色業務にも対応した生産管理機能では、調色指示書の発行や工程管理はもちろん、原材料の使用量に基づく原価計算、必要な原材料の在庫引当が可能です。完成品(製品)は在庫として登録され、出荷業務へ円滑に連携します。
配合データや生産情報を正確に記録・管理することで、調色業務を標準化し、トレーサビリティを確保しながらコストと品質を安定化できます。
【対応業務】
配合管理 / 原材料引当 / 工程管理 / 原価管理など
在庫管理
在庫管理機能では、調色や入出荷などによる在庫の増減をリアルタイムで反映し、常に最新の在庫状況を把握できます。棚卸業務もシステム上で完結でき、理論在庫との突合によって在庫精度が向上します。さらに、在庫推移や回転率を可視化することで、仕入計画や在庫最適化の判断を支援し、キャッシュフローの改善に貢献します。
【対応業務】
入出荷 / 在庫照会 / 棚卸 / 発注点管理など
システム導入によるメリット
業務効率化とミス削減
従来、見積作成から受注、納品書発行、請求処理に至るまで、各工程が紙や表計算ソフトに分散し、手作業での転記が繰り返される状況でした。販売管理システムでは、各処理が連携することでデータの一元化を実現します。さらに、帳票の自動作成や履歴の検索性向上により、業務品質を向上させることが可能です。
属人化の解消と業務標準化
塗料卸売業では、特定の担当者が得意先ごとの価格や調色履歴などの詳細を管理し、業務が属人化しているケースが少なくありません。販売管理システムを導入することで、商品や単価、配合データなどの情報が一元化され、担当者に依存せず一定の品質を保てる体制を構築できます。
データの可視化による経営改善
販売管理システムを活用することで、調色ごとの原価、商品別の利益率、在庫回転率など、これまで把握しづらかったデータを可視化でき、経営判断の質が向上します。価格改定や仕入の見直しを検討したり、商材や取引先ごとの採算性を明確にするなど、データに基づいた意思決定が可能になります。
また、在庫の動きもリアルタイムに把握できるため、過剰在庫の早期発見や発注の最適化など、キャッシュフローの改善にもつながります。
システム導入をお考えの企業さまへ
塗料卸売業を取り巻く環境は変化しており、日々の業務に追われながらも、業務改善の必要性を感じている企業も少なくありません。ここでは、システム導入を検討すべき典型的な4つの状況を取り上げます。
在庫の把握ができていない状態が続いている
棚卸のたびに理論在庫と実在庫が一致しない、営業や出荷担当が都度倉庫に在庫確認をしている、といった状況はリアルタイムに共有されていないことを示しています。在庫の正確性が担保されないまま業務が進めば、納期遅延や誤出荷、欠品といったトラブルが頻発して、取引先の信頼を損ねかねません。また、過剰在庫による保管コストの増加といった経営的な損失にもつながります。
部門ごとに異なる管理方法で業務が分断されている
受注・請求・発注といった業務を部門ごとに異なる方法で管理し、情報が分断するケースは少なくありません。このような体制では整合性を取るのに時間がかかり、転記ミスや漏れも頻発します。また、各担当者に依存した管理方法になりやすく、組織としてのリスクも高まります。
重複入力や転記作業が増えている
一つの取引を完了させるために、同じ情報を何度も入力したり、別の書式に転記したりする作業は、業務全体の効率を下げています。
例えば、見積書を作成した後、改めて受注台帳に入力し、さらに納品書や請求書を別途作成するといった流れは非効率化を招きます。作業が増えるほどミスが増えるだけでなく、チェックや修正の手間がさらに膨らむという悪循環に陥ります。
顧客からの問い合わせに即答できない
在庫の有無や納品時期といった問い合わせに対して、その場で即答できない状態が続いていると、取引先との信頼関係にも影響を与えます。特に、詳細な情報が必要な場面で、都度倉庫や他部門に問い合わせる体制では、対応の遅れにつながります。このような状況を改善するには、過去の受注履歴や在庫状況をすぐに参照できる環境の構築が不可欠です。
こうした状況に心当たりがある場合は、業務体制を見直すタイミングかもしれません。
販売管理システムの導入により、情報の一元化と業務の標準化を進めることで、業務効率と品質の向上が期待できます。
塗料卸売業をサポートするクラウドERP『キャムマックス』

塗料卸売業では、数万点に及ぶ商品管理、現場ごとに異なる納品条件、自社での調色対応など、複雑な業務運用が求められます。クラウドERP「キャムマックス」は、在庫管理・販売管理・購買管理・生産管理・財務会計といった基幹業務を一元管理して、現場の効率化と経営判断の迅速化を支援します。これにより、多様な商慣習を抱える塗料卸売業の実務を強力にサポートします。
販売管理機能
受注から出荷処理、納品書・請求書の作成、売上計上、入金処理までを一元管理できます。過去の取引履歴や得意先ごとの単価設定も記録されているため、前回の注文内容をもとにした発注にもスムーズに対応できます。さらに、FBデータの取り込みによる入金消込機能により、事務処理の負担やヒューマンエラーを大幅に減らし、日々の売上や入金状況をリアルタイムに把握できます。
購買管理機能
「データエクスポートマッピング」を活用することで、発注データを取引先ごとのEDIフォーマット(CSV・XMLなど)に自動変換して、直接送信できます。納期回答や発注状況をシステム上で管理できるため、調達の正確性とスピードが大きく向上します。
需要予測に基づいた発注判断も行え、欠品や過剰在庫の抑制に寄与します。
※キャムマックスのデータエクスポートマッピングについてはこちら
在庫管理機能
入荷から出荷、棚卸までの在庫変動をリアルタイムに可視化します。ロットやロケーション単位での在庫管理が可能で、倉庫間の移動や分納にも対応できます。また、ハンディターミナルを活用した棚卸や出荷検品により、現場作業の効率化と精度向上を実現します。
生産管理機能 (調色管理)
調色品ごとに、配合データ、原材料の使用実績、原価の算出といった詳細な情報を登録・管理できます。過去の生産履歴から配合データを呼び出せるため、リピート注文にもスムーズに対応できます。また、使用した顔料・添加剤の使用量やロットを紐づけて管理することで、在庫の正確な把握とトレーサビリティを実現します。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。



