医療機器・医療材料卸売業向け販売管理システムとは?在庫管理からトレーサビリティ対応まで

医療機器・医療材料卸売業向け販売管理システムとは?在庫管理からトレーサビリティ対応まで

医療機器(または医療材料)卸売業は、メーカーと医療機関の間に立ち、製品の供給と運用を支える流通・販売事業です。製品を仕入れて販売するだけではなく、医療現場の実態に即した在庫管理と取引対応を行う点に大きな特徴があります。

取り扱う製品は、MRIやCTといった大型医療機器だけではなく、人工関節や血管用カテーテル、縫合糸、ピンセットなど治療や診断を目的として使用されるものも広く含まれます。そのため製品ごとに、品質管理、保管条件、ロット管理、回収対応といった義務が課されます。さらに、販売形態も一般的な売買取引だけでなく、預託品や貸出機器の保守対応など多様な取引形態が含まれます。

本記事では、こうした業界特有の商慣習に対応した販売管理システムについて詳しく解説します。

医療機器卸売業の特徴

多様な取引形態が共存する業界構造

医療機器卸売業の取引は、一般的な卸売業とは異なり、医療機関ごとの診療体制や手術内容に合わせた幅広い対応が求められます。

医療機関との取引は、大きく次の3つに分かれます。

①買い切り

注射器、ガーゼ、手袋などの汎用消耗品は、一般的な卸売と同様に「納品=売上計上」となります。箱単位・ロット単位で納品を行います。

②預託在庫

症例や術中の状況に応じて即時対応できるよう、人工関節やインプラント、カテーテルなどはあらかじめ院内に預託しておき、使用された分のみを売上計上します。

③貸出・保守対応

リース企業から委託を受けた高額医療機器の保守メンテナンスや、代替機(ローナー機)提供など、納品後も継続的な対応が発生します。


このように、複数の販売形態が混在する点が医療機器卸売業の大きな特徴です。

取り扱う製品の特性とクラス分類

医療機器卸売業が扱う製品は、人体への影響度に応じてクラス分類されており、その区分ごとに販売・管理の要件が異なります。

医療機器のクラス分類(日本)

区分

概要

代表例

一般医療機器 (クラスⅠ)

比較的リスクが低い

メス、ピンセットなど

管理医療機器 (クラスⅡ)

リスクが中程度

MRI、エコーなど

高度管理医療機器 (クラスⅢ・Ⅳ)

生命への影響が大きい

ペースメーカー、人工関節など

特に、クラスⅢ・Ⅳの高度管理医療機器では、ロット管理や出荷履歴管理が極めて重要です。

万が一不具合が発生した場合に迅速な回収ができるよう、製品の流通経路を記録・管理するトレーサビリティの確保が義務づけられています。さらに、人工関節や吸収性縫合糸などは、患者の状態や術式に応じて使用する規格が違うため、品番・ロット単位での精緻な製品管理が求められます。

医療機器卸売業者向け販売管理システムの基本機能

販売管理システムでは、見積作成から入金消込まで、一連の取引を一気通貫で管理します。

  • 見積管理:得意先ごとの条件に応じた見積書を作成・管理
  • 受発注管理:取引ごとの受注内容や発注データを正確に処理
  • 在庫管理:入出荷に連動した在庫数量の自動更新
  • 請求・入金管理:取引先ごとの請求書発行や入金消込を効率化
  • 売上・利益管理:日次・月次の売上や粗利を可視化
  • 顧客・取引先管理:基本情報や取引条件、取引履歴を一元管理

これらの機能をベースに、医療機器卸売業特有の商慣習にも対応できるよう設計されているのが大きな特徴です。

業界特有の機能要件

多層的な価格体系への対応

保険適用製品の場合、償還価格を上限として医療機関ごとに契約単価が設定されます。さらに、医療機関や契約期間、診療科によって適用単価が異なることも珍しくありません。医療機器卸売業向け販売管理システムでは、こうした価格設定の多層構造をシステム上で整理し、見積や受注入力時に自動反映できる仕組みを備えています。

  • 単価管理:償還価格を基準に、医療機関ごとの契約単価を保持して、見積・受注時に自動反映
  • 後値引き・リベート管理:納品後に価格が遡及して変更される商慣習や精算条件に対応

診療報酬改定などによる償還価格の変更が、利益構造に直結する業界である以上、販売価格の適切な設定は経営管理そのものといえます。

預託在庫・貸出機器の保守管理

医療機器卸売業では、預託在庫や貸出機器の保守管理など、通常の売買取引とは異なる管理形態が存在します。 

預託在庫

院内での使用が確定したタイミングで売上を計上します。医療機関別の預託残数・使用実績・補充履歴を正確に把握しながら、補充管理を行います。

貸出機器(保守管理)

リース企業を通じて導入される大型医療機器は、納入・保守を卸業者が担うため、機器の識別情報・契約期間・保守内容・請求情報を紐づけて管理する必要があります。


医療機器卸売業向け販売管理システムでは、こうした管理形態を区分して扱える機能を標準的に備えています。

ロット・シリアル・UBD管理※とトレーサビリティ

不具合や回収が発生した場合、納品先とロットを即時に特定しなければいけません。人工心臓弁やペースメーカーのような機器は、個体単位での追跡が求められるため、シリアル番号管理も不可欠です。

こうした要件を満たすため、医療機器卸売業向け販売管理システムでは以下の機能を備えています。

  • ロット・シリアル・UBDのデータ化:入荷時に製品情報を登録し、出荷・預託まで一貫して追跡
  • 出荷・アラート管理:期限切れ在庫の出荷防止と事前アラート
  • ロット単位での販売履歴検索:リコール対応、回収対象ロットの即時抽出
  • 流通経路の可視化:預託在庫を含めた納品先・在庫所在の把握

管理項目を登録するだけでなく、入荷から出荷・預託まで一貫したトレーサビリティを確保します。

※UBDとは、「Use By Date」の略称で、有効期限や使用期限を意味します。製品によって滅菌期限などが重要となるため、医療機器・製品の在庫管理ではこうした期限管理が重要になります。

GS1-128バーコード・ハンディターミナル対応

医療用医薬品・医療機器などには、一般的なJANコードではなく「GS1-128」が使用されています。

※GS1-128は、商品コード・ロット番号・UBD・シリアル番号など複数の情報をバーコードに格納できる規格です。

販売管理システムには、同規格に基づく情報分解・登録機能が求められます。

  • 入荷時の読み取り:GS1-128に含まれる識別データを自動登録
  • 出荷時のスキャン検品:ロット単位での照合による誤出荷防止
  • ハンディターミナルとのシステム連携:現場での入出荷・棚卸業務を効率化

特に、高度管理医療機器ではロット誤出荷は重大なリスクにつながります。バーコードスキャンによる照合作業は、単なる業務効率化にとどまらず、医療機器卸が担うべき安全管理の根幹といえます。

外部連携機能

医療機器卸売業では、メーカーへの発注や院内物流、会計基盤を支えるシステムとの外部連携が求められます。

EDI連携(MD-NET・JD-NETなど)

医療機器業界では、メーカーへの発注にEDIが利用されています。販売管理システムと連携することで、確定した発注データを直接送信でき、メーカーからの出荷案内や仕入確定データも自動で取り込みます。これにより、発注残管理、分納処理、仕入単価などの更新をスムーズに処理します。

SPD連携

医療機関では、SPD(Supply Processing and Distribution;物品 / 物流管理)システムにより院内の使用実績が管理されています。販売管理システムと連携することで、院内使用実績を自動で取り込み、預託残数の更新や売上計上まで一貫して処理できます。ロット情報を含めて管理できるため、トレーサビリティの強化にもつながります。

会計システム連携

会計システムとの連携により、売上・仕入の確定に合わせて仕訳データを自動生成して、会計帳簿へ反映できます。債権債務管理の統合や、後値引き・リベート精算を含む複雑な取引も、正確に整合させることができます。販売データと財務データを一貫した基盤で管理できます。

システム導入によって実現できること

アナログ管理からの脱却と業務標準化

医療機器卸売業では、預託在庫の管理表、貸出機器台帳、ロット管理表などが個別に作成され、部門や担当者ごとにバラバラに運用されがちです。このような分散管理では、転記ミスや更新漏れが起きやすく、業務の属人化を招きます。

販売管理システムを導入することで、見積から受注、仕入、在庫、売上、請求までの情報が一元化され、業務フローが統一されます。ロット情報や契約単価も同じデータベース上で管理されるため、各部門で参照する情報のズレが生じにくくなります。

在庫の可視化による在庫ロス・機会損失の削減

医療機器卸売業の在庫は、単純な数量管理では捉えきれません。倉庫在庫に加え、院内に配置された預託在庫、個別管理が必要な高度管理医療機器が混在しています。このような複雑な在庫状況を正確に把握できていなければ、期限切れによる廃棄、過剰補充、請求漏れ、あるいは欠品による手術への影響や患者対応の遅れといったリスクが生じます。

販売管理システムの導入により在庫の全体像が可視化されることで、必要な商材を適切なタイミングで供給する体制が整います。廃棄ロスを減らしつつ、販売機会の最大化にもつながります。

薬機法対応の強化とコンプライアンスリスクの軽減

医療機器卸売業では、販売履歴の保存やロット単位での追跡が求められます。 販売管理システムにより、入荷から出荷・預託までのロット情報を一貫して管理し、特定ロットの販売履歴を即座に検索できるため、回収対応や行政監査への対応も迅速に行えます。 

アナログな帳票管理に依存することなく、日常業務の中で蓄積されるデータそのものがコンプライアンス対応の根拠となります。

データの可視化と意思決定の高度化

販売管理システムの導入により、取引先別・製品別・メーカー別の粗利を正確に把握できるようになります。後値引きや価格改定の影響も含めて可視化できるため、利益構造の偏りや採算性の低い取引を早期に把握できます。システムで処理されたデータがそのまま経営指標として活用できるため、価格交渉や発注条件の見直しといった意思決定を、感覚ではなくデータに基づいて行えます。

医療機器・医療材料卸売業をサポートするクラウドERP『キャムマックス』

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この記事を書いた人

CAM UP 編集部

株式会社キャム 代表取締役CEO

下川 貴一朗

証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして株式会社キャムに参画。
その後、2021年9月より取締役COOに就任し、2026年6月より現職。

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