物流コスト削減で利益率アップ!すぐに実践できる方法やおすすめのシステム
企業経営において、物流コストは見過ごせない大きな負担となります。輸送費や倉庫費用、在庫管理や包装資材など、多岐にわたる費用が積み重なり、利益を圧迫している企業は少なくありません。特に中小企業にとっては、少しのコスト削減が利益率に直結するため、効率的な物流コストの管理は経営改善の大きなカギとなります。
近年は、輸送効率の見直しや在庫管理の最適化、さらにクラウドERPやWMSなどのシステム導入によって、コスト削減と業務効率化を同時に実現する企業が増えています。ポイントは「どこでコストが発生しているのか」を把握し、現場の無駄を見直しながら、システムの力を取り入れて継続的に改善していくことです。
本記事では、物流コストの基本的な内訳から削減方法、そしてシステム活用による効率化までを解説します。中小企業でもすぐに取り組める実践的な方法を紹介しますので、自社の物流改善にぜひ役立ててください。
目次
物流コストとは?基礎からわかりやすく解説
物流コストとは、製品が生産者から消費者の手に渡るまでにかかるすべての費用の総称を指します。一般的には、輸送にかかる費用、倉庫での保管費用、入出庫作業や荷役に必要な費用、商品を安全に届けるための包装資材の費用、さらに物流を管理するための人件費やシステム利用料などが含まれます。これらは一見して単体では小さな額に見えるかもしれませんが、積み重なることで企業全体の利益に大きな影響を与える重要なコストです。
特に中小企業においては、物流コストは売上に対する割合が高くなる傾向があります。大手企業のようにスケールメリットを活かした交渉力を持たないため、配送業者との契約条件や倉庫利用の効率化を工夫する必要があります。逆に言えば、改善の余地が多く残されている分、物流コスト削減の取り組みは利益率の改善に直結しやすい分野ともいえます。
また、物流コストは単なる経費削減の対象ではなく、企業の競争力を高めるための戦略的な要素でもあります。例えば、配送リードタイムを短縮することで顧客満足度を高めたり、在庫回転率を改善することで資金繰りをスムーズにしたりと、経営全体の効率化につながるのです。
物流は企業活動を支えるライフラインともいえる存在です。そのため、物流コストを正しく理解し、計画的に管理することは、持続的な成長を目指す上で欠かせない取り組みといえるでしょう。
物流コスト高騰の理由
物流コスト高騰の主な理由は以下になります。
輸送需要の増加
第一にグローバル化やECの発展により、輸送需要が増加しているというのが大きな理由です。
特にコロナ禍により一変した生活様式で、オンラインショッピングの需要が急増したことにより、ECの急成長をもたらしました。この需要増加に応えるために企業は投資や拡大が必要となり、その結果として物流コストが上昇しているのです。
燃料価格の上昇
輸送手段(トラック、船、飛行機など)の燃料価格の上昇は、物流コストに直接大きな影響を与えます。特にここ数年は、国際情勢の影響などにより原油価格が高騰していることから、物流に必須の燃料価格も上昇して物流コストを押し上げる結果となっています。
2024年問題で物流コストはさらに上がる?
2024年問題は、トラックドライバーの労働時間に関する新たな規制が導入されることにより、物流コストがさらに上昇する可能性が懸念されています。
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に対する960時間上限規制と改正改善基準告示が適用されます。これにより、労働時間が制限されるため、輸送能力不足が生じる可能性が高まります。
この状況が荷物の遅延を引き起こし、結果的に物流コストの上昇につながると考えられています。
物流コストの推移
経済産業省・国土交通省・農林水産省が2022年9月に発表した「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」(PDF)によると、この20年で大型貨物は半減しているものの、多頻度小口輸送が急増しており、売上高物流コスト比率は上昇傾向にあります。
公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の「物流コスト調査報告書」(PDF)でも、2021年は直近20年間で売上高物流コスト比率が5.7%と最高値となっています。
近年の売上高物流コスト比率の推移(全産業)
- 2017年 4.66%
- 2018年 4.95%
- 2019年 4.91%
- 2020年 5.38%
- 2021年 5.70%
- 2022年 5.31%
業種別 物流コストの相場
2022年度調査に基づき、売上高物流コスト比率で算出した場合は以下の通りになります。
- 製造業 5.34%
- 非製造業 5.24%(卸売業 5.71%・小売業 3.51%・その他 5.71%)
また、物流機能別構成比は以下になります。
製造業
輸送費60.5%・保管費16.1%・その他 23.4%
非製造業
輸送費43.1%・保管費18.7%・その他 38.2%
卸売業
輸送費41.7%・保管費22.3%・その他 36.0%
小売業
輸送費42.2%・保管費11.2%・その他 46.6%
※その他とは包装費、荷役費、物流管理費などになります。出典は全て「2022 年度 物流コスト調査報告書【概要版】」によるものです。
物流コストの主な内訳と把握すべきポイント
物流コストは商品を運ぶ費用だけではなく、以下の内訳が含まれます。
輸送・運送費
物流コストの中で大部分を占めるのは、商品や資材をある場所から別の場所へ輸送する際にかかる輸送・運送費です。
この費用には、輸送手段(トラック、船、飛行機など)の使用料、燃料費、車両の維持・修理費、輸送に関連する保険料などが含まれます。
燃料価格の変動や車両の状態、労働市場の状況などが、これらのコストに大きな影響を与える要因となります。
保管費
物流コストの内訳の中で、輸送費に次いで重要な役割を果たすのが、商品や資材を一定期間保管するためにかかる保管費用です。
これには、倉庫や保管施設の賃料、保険料、冷蔵・冷凍庫の電気代、そして商品を盗難や損害から保護するためのセキュリティシステムに関連する費用も含まれます。
荷役費
荷役費とは、商品や資材を輸送や保管する際に発生する荷物の積み込みや降ろし、仕分け、梱包、荷解きなどの作業に関連する費用のことで、作業に使用する機械や設備の費用なども含まれます。
包装・梱包費
包装・梱包費用は、商品を安全に輸送するために必要な包装材料や包装プロセスにかかる費用を指します。
商品の種類や輸送距離、運送方法に応じて、必要な包装の種類や程度が異なり、これがコストに影響を与えます。
物流管理費(人件費)
物流管理費用は、物流プロセスに関連する項目で、従業員の人件費や物流システムの維持に支出される費用を指します。
人件費については、これまでの内訳(輸送・運送費、保管費、包装・梱包費)に含めて計上する場合もあります。
物流コスト削減の具体的な方法
物流コストを効果的に削減するためには、発生している費用を一つずつ見直し、改善可能なポイントを特定することが重要です。単純なコストカットではなく、効率化と品質維持の両立を意識することで、顧客満足度を下げずに利益率を高めることができます。以下では代表的な取り組みを紹介します。
輸送の効率化でコストを下げる
配送ルートの最適化や積載率の向上は、輸送費削減に直結します。複数の拠点を持つ場合は共同配送を活用することで、トラックの稼働効率を高められます。また、AIを活用したルート最適化システムを導入すれば、燃料費や時間の無駄を大幅に削減できます。
倉庫管理の改善で無駄をなくす
倉庫内の動線設計やレイアウトを見直すことで、荷役作業の効率が向上し、人件費削減につながります。さらに、自動倉庫やハンディ端末を導入することで、作業時間の短縮とミス削減が期待できます。
在庫管理システムで最適化する
在庫が多すぎれば保管費が増え、少なすぎれば欠品による機会損失が発生します。在庫管理システムを導入すれば、需要予測やリアルタイムの在庫把握が可能になり、在庫水準を最適化できます。これにより保管費の削減だけでなく、キャッシュフローの改善にもつながります。
包装資材を見直してコストカット
過剰包装を見直し、適切なサイズや素材を選ぶことで、包装資材のコスト削減が可能です。さらに、リサイクル可能な資材を活用すれば環境面の配慮もでき、企業のイメージ向上にもつながります。
ERPやWMSシステム導入で効率化
物流全体の効率化には、システム導入が欠かせません。ERP(基幹業務システム)やWMS(倉庫管理システム)を導入すれば、受注から出荷までのプロセスを一元管理でき、人的ミスを減らしつつ業務スピードを向上させられます。これにより長期的なコスト削減を実現できます。
このように物流コスト削減には多角的なアプローチが必要です。部分的な改善にとどまらず、システムを活用した全体最適を意識することで、持続的なコスト削減と経営の安定化が可能になります。
物流コストを削減する方法
企業の物流コストを削減するための主なアイデアは以下になります。
共同配送や拠点の共有
積載率を上げることで物流コストの大きな削減につながります。異なる顧客や地域の輸送需要を組み合わせる集約輸送や共同配送を活用し、輸送効率を向上させましょう。
また、各地の倉庫を他社と共同で使用することも有効となります。これについては、2016年10月に物流総合効率化法の改正が行われ、施設整備を伴わないモーダルシフトや地域内での共同配送等の多様な取組も支援の対象となっています。
アウトソーシングする
物流アウトソーシングとは、企業が物流業務を専門の物流業者に委託することを指します。
物流業者は物流業務に特化しており、効率化やコスト削減のノウハウや最新のテクノロジーを持っているため、コスト削減の効果を期待することができます。また、物流業務をアウトソーシングすることにより、企業は他の重要な業務に集中することができます。
一方で、物流アウトソーシングの場合は品質やサービス管理の責任が物流業者に移るため、選定や契約条件の明確化、品質管理の仕組みの確立などをしっかりと行う必要があります。
物流業者とリアルタイムの情報共有を行えるようにすることも、問題の早期発見・解決には重要です。
システムを導入する
システムを導入して業務を自動化することで、人的ミスの削減や効率の向上につながり、結果的に物流コスト削減につながります。物流業務に使用されるシステムには、在庫管理システムや倉庫管理システムなどがありますが、次の章で詳しく説明します。
物流コスト削減に役立つおすすめシステム
物流コストを削減する上で、システムの導入は非常に効果的です。属人的な業務やアナログ管理から脱却することで、作業効率を大幅に高め、人的ミスを減らしながら長期的にコストを抑えることができます。ここでは特に中小企業でも導入しやすいシステムを紹介します。
在庫管理システム
在庫の過剰保有は保管費を増やし、欠品は機会損失を招きます。在庫管理システムを導入すれば、リアルタイムで在庫状況を把握し、適正在庫を維持できます。需要予測機能を備えたシステムを利用すれば、保管コストを削減しながら安定した供給体制を実現できます。
倉庫管理システム(WMS)
倉庫内の入庫、出庫、仕分け、ピッキングといった作業を効率化するシステムです。作業の自動化やバーコード・ハンディ端末の活用により、荷役費や人件費を削減できます。さらに、作業精度が向上することで誤出荷防止にもつながります。
輸配送管理システム(TMS)
トラックの配車計画やルートを最適化するシステムです。積載効率の向上や空車回送の削減を実現し、輸送費を効果的に抑えられます。近年はAIを活用した最適ルート算出やドライバーの労務管理機能を備えたものも多く、業務全体の効率化に寄与します。
ERPシステム
物流だけでなく販売・会計・生産など、経営資源を一元管理できるのがERPです。ERPに在庫・物流機能が含まれていれば、部門横断でデータを共有でき、二重入力や情報の遅延を防げます。特に中小企業においては、ERP導入により「物流コスト削減」と「経営全体の効率化」を同時に実現できます。
クラウドERP「キャムマックス」なら物流コスト削減を実現が可能!
物流コストを削減するためには、部分的な効率化だけでなく、受注から在庫、出荷、会計までを一気通貫で管理できる仕組みが欠かせません。クラウドERP「キャムマックス」は、中小企業に特化したシステムとして、物流コスト削減と業務効率化を同時に実現できるのが大きな特徴です。
在庫・倉庫管理で無駄を削減
「キャムマックス」には在庫管理や倉庫管理の機能が標準搭載されています。リアルタイムでの在庫把握や誤出荷防止、需要予測に基づいた在庫補充が可能で、保管費の無駄を削減し、欠品による機会損失も防げます。
輸配送コストを抑える仕組み
輸配送業務との連携により、配送ルートの最適化や積載効率の改善を実現できます。これにより、燃料費や人件費といった輸送費の削減につながり、物流全体の効率を高めます。
クラウド型で低コスト導入
クラウド型のシステムであるため、初期投資を抑えて導入でき、インターネット環境さえあれば複数拠点で同じ情報を共有可能です。経営層はリアルタイムで物流コストを可視化できるため、データに基づいた迅速な意思決定が可能になります。
物流コストの削減を本気で進めたいと考える中小企業にとって、「キャムマックス」は最適な選択肢です。単なるコストカットにとどまらず、企業全体の成長を支える強力なツールとして活用できるでしょう。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。