IaaSとは?特徴や仕組み、代表的なサービスを紹介しながら初心者にもわかりやすく解説!
「IaaSって何?クラウドの仕組みとどう違うの?」そんな疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
IaaS(Infrastructure as a Service)は、サーバーやストレージなど、システムの基盤となるITインフラをインターネット経由で提供するサービスです。これまで企業はサーバー機器を自社で購入・管理していましたが、IaaSの登場で必要なリソースをクラウドで簡単に利用できるようになりました。
本記事では、IaaSの仕組みや特徴、そして代表的なサービス例を初心者にもわかりやすく解説します。
目次
IaaSとは?わかりやすく概要を解説
IaaS(イアースまたはアイアース)とは、「Infrastructure as a Service」の略で、日本語では「サービスとしてのインフラ(基盤)」と訳されます。わかりやすく言うと、パソコンやサーバーを買わなくてもインターネットを通じてそれらの機能を借りられるサービスのことです。
たとえば、電気や水道のように「使った分だけお金を払って利用する」サービスをイメージしてください。自宅に発電機や井戸を用意しなくても、スイッチひとつで電気や水が使えるのと同じで、IaaSもサーバーやストレージなどを必要なときに、必要なだけ、すぐに使えるのが特徴です。
従来は、企業がシステムを動かすためにサーバーやネットワーク機器を購入し、自社で設置・管理していました(これを「オンプレミス」と呼びます)。しかしIaaSを使えば、これらの設備をクラウド上で借りるだけなので、初期費用が安く済み、スピード導入やスムーズな拡張も可能になります。
たとえるなら、「マイホーム(オンプレミス)」を建てて自分でメンテナンスする代わりに、「賃貸マンション(IaaS)」を借りて、必要なときだけ部屋を増やせるようなイメージです。
このようにIaaSは、ITインフラを「所有する時代」から「使う時代」への移行を支える重要なクラウドサービスとなっています。
IaaSの具体的な活用例
たとえば、ある企業が新しくECサイト(ネットショップ)を始めたいとします。従来であれば、サイトを動かすためのサーバーを購入し、設置して、ネットワークの設定やセキュリティ対策も自社で行う必要がありました。これには高額な初期費用と、専門知識を持った人材の確保が必要になります。
しかし、IaaSを利用すれば、こうしたインフラをすべてクラウド上で借りることができるため、サーバー構築の手間を省き、最短数分でシステムを立ち上げることも可能です。また、必要に応じてサーバーの性能を上げたり、アクセスが集中する時間帯だけ容量を増やしたりすることも簡単にできます。
特に以下のような場面で、IaaSは非常に効果的です。
- 新規サービスやキャンペーンページの立ち上げ
- 社内システムのクラウド移行
- 在宅勤務に対応したITインフラの構築
- スタートアップ企業が資金を抑えてビジネスを開始したい場合
IaaSのメリット
IaaSを活用すると得られるメリットは主に以下の内容になります。
初期費用の削減
大がかりなシステムを必要とする企業は、自社にサーバからストレージまでのインフラ機器を用意して設置しなければなりません。
まず、これらの購入費用が不要になるというのはIaaSの大きなメリットです。
IaaSの場合はほとんどが月額で使用した分だけ払う料金体系をとっているため、導入時の費用が削減できます。
導入まで早く、安定して利用できる
コストと同時に時間も削減できます。
通常サーバやネットワークを構築するためには時間がかかりますが、IaaSならすでに構築されているものを使うことができるため、比較的短時間で導入が可能です。
アップデートやメンテナンス時はもちろんのこと、災害時にもシステムの稼働がストップする時間がほとんどなく、業務に支障をきたすことが少なくなります。
セキュリティの堅牢化
ストレージ、サーバ、ネットワークといったインフラ部分には、企業の根幹にかかわる大切なデータが含まれています。
このインフラを守るために万全なセキュリティ対策を自社で行うとなると、専任者をつける必要があるでしょう。専任者がいない状態ではとてもデータを守ることはできません。
その点、IaaSであればサービスを提供する側で数多くの専任者が日々セキュリティ対策を講じているため、信頼性が高く安心して利用が出来ます。
柔軟なスケール調整が可能
自社にインフラを構築している場合、成長に伴って数を増やしたりスケールアップを行う必要が出てきます。
そのような場合、いつスケールアップ作業を行うのか決めることも難しいですし、いざ決定しても新たにサーバを購入して設定を変更するなど業務の中断は避けられないでしょう。
IaaSなら使う容量に応じて支払う従量料金制をとるケースが多いため、より多くのリソースが必要になった時に問題なく活用できるのが特徴です。
IaaSのデメリット
IaaSを利用する上で考慮すべきデメリットは以下のようになります。
ベンダーロックインのリスク
IaaSを利用する場合、特定のクラウドプロバイダーに依存することになります。
クラウドプロバイダーが提供している独自のサービスやツールを利用して開発や運用を行う場合や別のプロバイダーや環境に移行する際には、移行コストや適合性の問題が発生する可能性があります。
データのセキュリティとプライバシーの懸念
IaaSでは、データがクラウド上に保存されるため、データのセキュリティとプライバシーに関する懸念が生じることがあります。
また、クラウドプロバイダーはセキュリティ対策を行っていますが、ユーザー自身も適切なアクセス制御やデータの暗号化などのセキュリティ対策を実施する必要があります。
制限されたカスタマイズと制御
IaaSでは、インフラストラクチャーの管理権限はクラウドプロバイダーにあります。
そのため、ユーザーはプロバイダーが提供する管理インターフェースやツールに制約されることがあります。特定の要件に合わせたカスタマイズや制御を行いたい場合には、制限がある可能性があります。
ネットワーク依存性とパフォーマンスの問題
IaaSはインターネットを介して利用するため、ネットワークのパフォーマンスや可用性に依存します。
ネットワークの遅延や帯域幅の制約がある場合、アプリケーションやサービスのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。
特に大規模なデータ転送やリアルタイムの処理を行う場合には、システムの仕様や性能を考慮する必要があります。
技術的なトラブルシューティングとサポートの難しさ
IaaSを利用する場合、クラウドプロバイダーがインフラの管理を行いますが、技術的なトラブルシューティングやサポートの提供は一部ユーザー側で対応しないといけません。
特に複雑なアプリケーションや独自の設定を行っている場合には、問題解決やサポートの難しさが生じる可能性があります。
そのため、社内で適切な技術スキルとサポート体制を準備しておくことが望ましいです。
IaaSの代表例
IaaSを提供するサービスとはどんなものなのか、代表例をご紹介します。
Amazon Web Services(AWS)
世界で最もシェアの高いIaaSと言えばAWSです。
具体的には、コンピューティングプラットフォームのAmazon EC2、オブジェクトストレージサービスのAmazon S3、スタマイズ可能な仮想ネットワークのAmazon VPCなどを提供しています。
Microsoft Azure(マイクロソフト アジュール)
AzureにはIaaS以外にもクラウドコンピューティングの機能は含まれますが、IaaSの範囲に特化しているのはAzure IaaSです。
コンピューティング、ストレージ、ネットワークを活用できます。
NEC Cloud IaaS(クラウドイアース)
国産としてリリースされているNECのクラウドサービスです。
サーバの性能やストレージの容量によって月額料金プランに違いがあります。
IaaSと他のクラウドサービス(PaaS、SaaS)との違い
今回はIaaSについて解説してきましたが、似たような用語にSaaSやPaaSがあります。IaaSと比較してどのような違いがあるのか確認していきましょう。
PaaSとは
PaaSとは、Platform as a Serviceの略語でクラウドコンピューティングの中でプラットフォームを提供します。読み方は「パース」です。
開発に携わる人以外は、IaaSとPaaSの違いは難しく感じるかもしれません。IaaSのインフラにミドルウェアと呼ばれる開発環境を加えた範囲をPaaSと呼びます。
参考記事
PaaS(パース)とは?SaaSとの比較や代表例をわかりやすく紹介
IaaSとPaaSの違い
IaaSとPaaSの主な違いは、提供されるサービスの範囲です。
IaaSは、基本的なコンピューティングリソース(サーバー、ストレージ、ネットワーク)を提供します。
一方、PaaSはこれらの基本的なリソースに加えて、ソフトウェア開発のためのプラットフォーム(例えば、データベース管理システムや開発ツール)も提供します。
つまり、PaaSは開発者がアプリケーションの開発や実行に必要な環境を提供するのに対し、IaaSはより基礎的なインフラストラクチャーの提供に特化しています。
PaaSとの比較: 開発環境とアプリケーション展開
PaaSは、開発者が新しいアプリケーションを開発し、テストやデプロイ(展開)するための環境を提供します。
一方、IaaSは基本的なインフラストラクチャーの提供に特化しており、開発環境やツールはユーザーが自分で設定する必要があります。
言い換えると、PaaSは開発プロセスを簡単化し効率化する一方で、IaaSはより高度な制御と柔軟性を提供します。
IaaSとSaaSの違い
IaaSとSaaSの違いは、提供されるサービスの範囲にあります。
IaaSは基本的なコンピューティングリソースを提供しますが、SaaSはそれらのリソース上で動作する具体的なソフトウェアアプリケーションを提供します。
言い換えると、SaaSはエンドユーザーが直接利用するようなWEBメールやチャットシステムなどのクラウドサービスを指します。
参考記事
SaaSとは?特徴や仕組み、代表的なサービスを紹介しながら初心者にもわかりやすく解説
IaaS、PaaS、SaaS、適切なサービスを選択しよう
IaaS、PaaS、SaaSは、異なるサービスレベルを提供します。これらの違いを理解することで、企業は自身のビジネスニーズに最適なクラウドサービスを選ぶことができます。
- IaaS(Infrastructure as a Service)
基本的なコンピューティングリソース(サーバー、ストレージ、ネットワーク)を提供します。これは自社でソフトウェアを開発し、実行するための基盤となるインフラです。
- PaaS(Platform as a Service)
IaaSの基本的なリソースに加えて、ソフトウェア開発のためのプラットフォーム(データベース管理システムや開発ツール)を提供します。開発者は新しいアプリケーションを開発し、テストし、展開するためのプラットフォームを利用できます。
- SaaS(Software as a Service)
IaaSやPaaSのリソース上で動作するソフトウェアアプリケーションを提供します。つまり、エンドユーザーが直接利用するクラウドサービスです。
これらの違いを理解することで、企業は自身のビジネスニーズに最適なクラウドサービスを選ぶことができます。
例えば、自社でアプリケーションを開発し実行するための基盤が必要な場合はIaaSを、新しいアプリケーションを開発、テストし展開するための環境が必要な場合はPaaSを、エンドユーザーが直接利用するソフトウェアが必要な場合はSaaSを選ぶと良いでしょう。
また、多くの場合企業はこれらのサービスを組み合わせて利用します。一般的には一部のアプリケーションはSaaSで提供し、一部のアプリケーションは自社で開発してIaaS上で実行し、新しいアプリケーションの開発にはPaaSを利用するなど、具体的なビジネスニーズに合わせて最適なサービスを選ぶことが可能です。
最終的には、企業の具体的なビジネスニーズ、技術的な能力、予算などを考慮して、最適なクラウドサービスを選択しましょう。
なぜIaaSの登場でクラウドERPシステムは広がったのか?
クラウドERPの普及を支える大きな要因の一つが、IaaSの登場です。
IaaSは、サーバーやストレージといったITインフラをクラウドで提供するサービスで、企業は自社でハードウェアを保有する必要がなくなりました。これにより、ERPシステムの導入ハードルが大幅に下がり、中小企業でも利用しやすい環境が整ったのです。
従来のERPが抱えていた課題
ERPはもともと、大企業が業務を統合管理するために開発されたシステムです。
オンプレミス型が主流だった時代は、専用サーバーやネットワーク構築、セキュリティ対策を自社で準備する必要があり、導入コストは数百万円から数千万円規模にのぼることもありました。さらに、システム開発やカスタマイズに長期間を要し、柔軟な対応が難しい点も課題でした。
IaaSがもたらした変革
IaaSの登場により、企業はハードウェアを購入せずに、クラウド上でサーバーやストレージを利用できるようになりました。
必要なときに必要な分だけリソースを確保できる「オンデマンド型」の仕組みは、ERPシステムの導入スピードを大幅に短縮し、コストも抑えられます。また、システム保守やインフラの更新はクラウド事業者が担うため、自社での運用負担が大幅に減少しました。
クラウドERPが広がった理由
IaaSによってクラウドERPは、スモールスタートや段階的な導入が可能になりました。
これまで大企業専用だったERPが、中小企業でも手軽に利用できるサービスへと進化したのです。さらに、在宅勤務や複数拠点での業務管理が当たり前となった現代において、クラウドERPは業務の効率化と情報共有の強力な武器になっています。
IaaSで進化したクラウドERP、その中でキャムマックスがおすすめな理由
数あるクラウドERPの中でも、スタートアップの企業様やシステムを導入したことがない企業様からキャムマックスが選ばれる理由は、低価格で導入できることに加え、販売管理・在庫管理・購買管理・会計管理など、企業の基幹業務を一元管理できる本格的なシステムが利用できます。
クラウドベースで提供されるため、初期コストを抑え、導入期間を短縮できます。現在利用されている様々なシステムともAPI連携にも対応しており、ECサイトやPOSなどの外部システムとも簡単に接続できるのも魅力です。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。