システムを導入する前に考えておくべきポイント

#総論・概論#経営管理#業務効率化#システム
システムを導入する前に考えておくべきポイント

本記事では、中小企業のように限られたリソースの中でシステムの導入をご検討されている方向けに、システムの導入前に最低限自社内で整理しておくべきポイントについて説明します。

システムは目的達成の手段に過ぎず、また万能ではない

先ずはごくごく当たり前の話をします。それは、システムはただの手段であり目的ではないということ、そして魔法の杖にはなり得ないということです。「そんなの当たり前じゃないか」「何をいまさら」、はたまた「システムベンダーがそんなこと言っていいのか!」という声が聞こえてきそうですね(笑)はい、ごもっともです。それではなぜ世の中にはシステム導入が上手くいっていないケースの方が多いのでしょう。プロジェクトが進むにつれて、当初の目的を見失っているからでは?関係者の全てが目的を真に理解していないからでは?システムさえ導入すれば、あとは何とかなると思っているからでは?と、挙げればキリがありません。皆さんにも思い当たる節があるではないでしょうか。この極めてシンプルな大前提を全ての関係者が頭に叩き込み、心に刻むことで、システム導入の成功率は飛躍的に向上するので、呪文のように反芻しましょう。

ステップ①目的(ゴール)を明確にする

さて、前置きが長くなりましたが、ここからはステップごとに説明していきます。ステップ①は「目的(ゴール)を明確にする」です。どのような目的であれ、企業の活動は究極的には経営理念(ミッション・ビジョン・バリュー)の達成であり、その企業・経営理念の達成のために策定された経営戦略、及び経営戦略をテーマごとに因数分解した重点施策を達成することに集約されます。その中で、システム導入における目的とは例えば次のような内容です。

  • 経営の意思決定における適時・適切化

  • 業務の効率化

  • 品質の向上

  • コスト削減

  • セキュリティ対策、災害対策・事業継続性の担保

    上記の定性的な目標に対応する定量的な目標を定め、プロジェクトチームが経営陣・管理部門・現場部門等の関係者に対して周知徹底を図ることが重要です。中には、経営陣や管理部門だけに周知徹底が図られ、ユーザーである現場部門に目的が浸透していないケースがあります。そうなると、「前のシステムの方が使いやすい」「覚えるのが面倒」、しまいには「俺は(私は)こんなもの使わない!もう知らない!」等の不満が噴出し、使われないシステムとなってしまう事態に発展してしまいます。こうなると最悪です。人間はどうしても何かが変わることに対して不安・不満が出てくるものです。目先のことに囚われず、全社的・中長期的な視座・視点を持ってもらえるように周知徹底を図ることが重要です。

ステップ②現状を把握する

目的(ゴール)が明確になったら、次は今のスタート地点を知ること、つまり現状把握です。目的に対応するスタート地点を整理していくのですが、例えば、「業務の効率化:在庫回転数1.0回」という目標を設定したとします。先ずは現在の数値の把握です。在庫回転数は売上高÷在庫金額で計算しますが、直近の年間売上高1億円、在庫金額2億円、在庫回転数1億円÷2億円=0.5回であることが分かったとします。次に業務フローの把握です。業務フローの作成は手間がかかりますが、これを怠ると全体像を踏まえた現状把握や後述する課題の洗い出しができません。さて、業務フローを作成したところ、仕入れから出荷までのデータはそれぞれの担当者がExcel等の表計算ソフトで入力・管理するものもあれば、紙の帳簿で記入・管理するものもあり、数値が合わず正確な在庫数を把握できないことが分かったとします。

ステップ③現状と目的の差=課題を洗い出す

次に現状と目的の差、つまり解決すべき課題(ギャップ)を特定します。数値(定量面)で言えば、在庫回転数は目標1.0回に対し現状0.5回のため、差は0.5回となり、売上を伸ばすか在庫数を圧縮し在庫金額を減らすことが課題とします。業務(定性面)で言えば、在庫数を適切・適時に把握したいのに、業務によって管理する媒体が異なり同期が取れていない、そのことが原因で顧客への販売機会を逃していたことが課題だとします。

ステップ④課題を解消するために何をすべきか・何が必要かを整理する

では何をすれば課題は解決するのでしょうか。現状の在庫回転数が0.5回だとすると、1.0回に改善するには売上を倍にする、若しくは在庫を圧縮し金額ベースで半分にする必要があります。売上を伸ばすためには、例えばマーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスといったフロント業務の領域でそれぞれ施策を議論する必要があるでしょうが、ここでは在庫に起因することに焦点を当てたいと思います。つまり、在庫を適時・適切に把握する仕組みの導入によって、販売の機会損失をなくし、また余剰在庫・不良在庫を減らすことで在庫回転数の目標達成を目指すというロジックです。 更に、在庫管理だけでなく販売管理・購買管理・財務会計等の管理を一元化することで業務の効率化だけでなく、「経営の意思決定における適時・適切化」「コスト削減」といった経営課題を解決できることが分かりました。最終的には、オールインワンで管理できるシステムを導入することが最善の策だと整理できました。

ステップ⑤キーマンをおさえたチーム体制を検討する

打ち手、つまり「在庫管理を含めた一元管理システムの導入プロジェクト」ではどのようなチーム体制がよいのでしょうか。ステップ①で説明したように、肝はユーザー部門をはじめから巻き込むことです。勿論、今回のシステム導入は全社的な戦略に紐づくものですから、経営陣や管理部門等に事前に話を通して合意を得ることは必要です。しかし、システムを使う人・部門、特に他の社員に影響を与えるようなキーマンはプロジェクト当初からしっかり押さえましょう。さもないと・・・(もう十分だと思いますので割愛します(笑))。

ステップ⑥ざっくりでもいいからスケジュールを作る

最後に、現時点で想定されるプロセス・タスク、役割、開始日、完了日をざっくりとでもいいのでスケジュール化しましょう。そしてプロジェクトが走り始めたら、開始日と完了日の予実を記録し、追加修正すべきプロセス・タスクがあれば都度更新して、チームに共有しましょう。 チームに共有・協議する会議を定例化することも大事ですが、問題・課題・リスクがあれば、チャットやメール等のコミュニケーションツールでクイックに共有・協議することが肝要です。なお、スケジュールの具体的な作成方法は、「ガントチャート」「マスタスケジュール」「WBS(某テレビ局のニュース番組ではありません(笑))」等とインターネットで検索すると記事が出てきますのでそちらを参考にしてみてください。また、少し難しい内容ですが、「PMBOK」という世界標準のプロジェクト管理を体系化したものがありますので、気になる方はチェックしてみてください。詳細は割愛しますが、一つとして同じプロジェクトはないので、個々のプロジェクトで必要な部分のみ取り出し、カスタマイズすることが大切です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はシステム導入のポイントを簡単な事例を用いて説明しましたが、システム導入に限らずどんなプロジェクトでも共通する内容だと思います。 「取り敢えずどんなシステムがあるかな?」と思って、インターネットで検索した比較サイトを見る前に、そもそも自分達は何がしたいのか?何を為すべきなのか?といった観点で、自分自身で考え抜き、整理することが大事ですね。皆さんのシステム導入がより良いものとなるために、本コラムが少しでもお役に立てれば幸いです。

この記事を書いた人

ライター
株式会社キャム 取締役COO

下川 貴一朗

証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。

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