棚卸資産(在庫)の評価方法についてざっくり解説!

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棚卸資産(在庫)の評価方法についてざっくり解説!

製品や商品等の在庫は決算時に保有する分の評価を行い、在庫の金額を算定・確定させなければなりません。これを「棚卸資産の期末評価」といい、「前期末棚卸資産+当期仕入高-(当)期末棚卸資産」で売上原価が算定されます。 この計算式から分かる通り、(当)期末棚卸資産の評価によって売上原価が増減することから、企業が都合よく操作できないようにルールが定められています。ではそのルールとは何でどのような内容なのか?今回はそのあたりについて、全体感を持っていただけるようざっくりと説明していきます。 また、これより以下は「製品」「商品」「在庫」「棚卸資産」等のワードは基本的に「棚卸資産」に文言を統一して説明します。

原価法と低価法

原価法と低価法の前に、そもそもどうして評価方法がいくつもあるのか?について説明します。棚卸資産の算定は「単価×数量」といたってシンプルです。ただし、この「単価」がくせ者で、同じ品目でも仕入れた時期や数量によって単価が異なる場合、品目が膨大な場合等、いちいちその都度の単価を調べて算定するのはとても大変です。したがって、税務・会計の世界ではそのような面倒を回避すべく単価の算定方法についてルールが定められています。その大きなくくりとして原価法と低価法があり、原価法もさらにいくつかの評価方法があります。詳細は後述するとして、先ずは評価方法の分類を下記の通り整理しました。

1. 原価法

  • 個別法
  • 先入先出法
  • 総平均法
  • 移動平均法
  • 売価還元法
  • 最終仕入原価法

2. 低価法

評価方法を採用する際の注意点

評価方法には何種類かあることが分かりましたが、企業が好きな評価方法を好きなタイミングで自由に使っていいわけではありません。 冒頭に申し上げた通り、棚卸資産の期末評価については企業が都合よく操作できないようルールがあります。 実は評価方法の内、原価法に分類される最終仕入原価法は「法定評価方法」として定められており、 最終仕入原価法以外の評価方法を採用する場合には納税地の所轄税務署長まで「棚卸資産の評価方法の提出書」を提出しなければなりません。 提出しなければ一律最終仕入原価法によって算定する必要があります。また、評価方法の変更にも制限があり、特別の事情がない限り3年間は継続適用しなければなりません。

それぞれの評価方法の概要とメリデメ

評価方法には原価法と低価法の大きく2種類あり、原価法にはさらにいくつかの方法があることを説明しましたが、原価法と低価法の違いとしては、帳簿価額で評価するのが原価法、時価と帳簿価額を比較して低い方を採用するのが低価法です。帳簿価額は棚卸資産の単位あたりの「取得原価」を算定し、その取得原価に数量を乗じて算定されます。

それでは先ずは原価法に分類されるそれぞれの評価方法の概要とメリデメをみていきましょう。「どの方法が自社に合っていそうか」という観点で読み進めてみて下さい。

個別法

概要取得原価が異なる棚卸資産ごとの個別の単価を使って、期末に残っている棚卸資産の帳簿価額を計算する方法
メリット・個別の売上と原価が完全に一致し、正確な評価ができる
・宝石、絵画、不動産等、資産の個別性が高いビジネスモデルに向いている
デメリット・非常に手間がかかる
・大量仕入れ・大量販売のビジネスモデルには向かない

先入先出法

概要先に仕入れた棚卸資産から順次払い出され、後から仕入れた棚卸資産が期末に残ると考えて計算する方法
メリット・多くの業態で実務上の流れと一致し、実際と経理・会計上のズレが比較的少ない
デメリット・仕入れと売上それぞれのタイミングで極端な価格変動が起きた場合、収益と費用のギャップが大きくなることが想定される

総平均法

概要平均原価法の一つ。期中に仕入れた棚卸資産の平均原価を取得原価として計算する方法。平均原価は期中に仕入れた原価の総額を総個数で割って求め、平均原価に期末の在庫数を乗じて帳簿価額を算出する。
メリット・計算が簡単
・価格変動リスクが低い
デメリット・期中のトータルで平均単価を計算するため、スポットでの計算ができない

移動平均法

概要平均原価法の一つ。総平均法と同じく平均原価を求めて在庫数を乗じる計算の方法だが、仕入れが発生する都度平均原価を求めることに違いがある
メリット・総平均法と異なり、スポットでの計算が可能
デメリット・総平均法と比べて計算に手間がかかる

売価還元法

概要期末の棚卸資産に原価率を乗じて計算する方法で、棚卸資産のグルーピングを行い、グループごとの売価に原価率を乗じて算定し積み上げる方法。原価率は原価を売価で除して求める
メリット・個別の資産を計算するわけではないので、計算が比較的簡単
デメリット・適切なグルーピングとは何かの判断が難しい

最終仕入原価法

概要期中の最後に仕入れた棚卸資産の単価を使って計算する方法。税務上の評価方法となり、上述の通り届出を提出していない場合はこの評価方法で算定することになる。
メリット・計算が比較的簡単
デメリット・期中の最後に仕入れた棚卸資産の単価が大きな価格変動に影響を与えられていた場合、先入先出法と同様のリスクがある

以上が原価法それぞれの概要とメリデメになります。次に低価法です。

低価法

概要原価法の帳簿価額と時価を比較して評価額が低い方を採用する。時価の方が低い場合、原価法と時価との差額は評価損として経費に計上。時価は売価または再調達原価を使用。※
メリット・評価損を計上するため、将来売却等によって発生する可能性のある損失をあらかじめ見込んでおくことができる
・損失を計上するため、節税になる
デメリット・原価法の帳簿価額の計算に加えて時価も計算するため手間がかかる

※ 売価は正味売却価額を使用 正味売却価額=売価-見積追加製造原価-見積販売直接費再調達原価=再取得する場合の予想購入額+付随費用(送料や手数料等)

まとめ

棚卸資産の期末評価にかかる評価方法には大きく原価法と低価法があり、さらに原価法にも法定評価方法である最終仕入原価法以外にいくつかの方法があり、それぞれメリデメがあることを説明しました。税務署への提出や適用期間等の注意点を勘案し、どの方法が自社に合っているか比較・検討してみてください。

この記事を書いた人

ライター
株式会社キャム 取締役COO

下川 貴一朗

証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。

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