中小企業がやるべきERP選定の比較・評価方法

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中小企業がやるべきERP選定の比較・評価方法

「リアル店舗とECサイト運営におけるERP選定のススメ」では、ERPは「製品機能」と「API連携機能」のセットで選ぶことが重要と説明しましたが、こうした機能面だけでなく、 サービス提供形態、価格、セキュリティといったさまざまな項目で比較することがほとんどだと思います。 今回は中小企業がERPを選定する際に、どのような基準に基づいて比較・評価すべきかについて、 極力シンプルで且つ網羅的・全体的な観点を踏まえながら説明していきます。

(前提・準備編)ノンカスタマイズで利用できることに越したことはない!

本コラムのシリーズではほぼ常套句となりつつある「経営資源に限りのある中小企業」というワードは、やはりこの件でも考慮すべきです。 ERPはさまざまな企業活動の内、「基幹業務」と呼ばれるその企業の肝となる業務の管理を一元化するソフトウェアと言えますが、現在の業務をそのままにERPを導入すると、ERPを業務に合わせるためERPの機能をそのまま当てはめても業務にフィットするはずもなく、 ほとんどの場合カスタマイズが必要となってしまいます。カスタマイズが発生すると当然要する時間も人手も費用も膨大となるため、「経営資源に限りのある中小企業」であれば途端に業務がストップし、最悪の場合経営そのものにも影響が生じることになります。

したがって、前提として「如何にノンカスタマイズで利用できるまで、業務を標準化・効率化するか」は重要な考え方といえます。 ノンカスタマイズを前提とするならば、導入すること自体のコストはある程度抑えることができるでしょう。 もちろん、業務を標準化・効率化するといった再構築(BPR:Business Process Re-engineeringといいます)は非常に大変ですが、「システムを導入する前に考えておくべきポイント」で説明したように、 システムは目的達成のための手段であり、またシステムさえ導入すれば万事解決とはいきません。ERP導入に限らずですが、手前の整理から手を付けるのはとても大事なことです。

(比較・評価編)機能か?価格か?スピードか?それとも・・・?

世の中には「中小企業向けのERP」が溢れかえっており、一体どれが自社に最適なのかさっぱり分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで、本コラムの本題であるERP選定における比較・評価すべき項目を説明していきます。先ずは比較して当然の3項目を説明した後に、その他にも比較しておきたい項目を挙げていきます。

では「当然の3項目」から。それは「機能」「価格」「スピード」です。システム開発や製造業、それに品質管理といったプロジェクト系の実務では「QCD」という指標がよく用いられます。Qはクオリティ(品質)、Cはコスト(費用)、Dはデリバリー(納期)を意味し、当該プロジェクトにおいて重要な3項目を重要な順に表しています。このQCDに倣い、上記3項目の位置づけを機能:Q、価格:C、スピード:Dにします。ここで、「ノンカスタマイズを前提とすると言っておきながら、なぜシステム開発に用いられるQCDが出てくるのか」と、鋭いツッコミをされる方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし、そもそもシステムは開発したら終わりではなく、その後のテストを経て導入・運用まで続きます。今回のようにノンカスタマイズを前提としたERPを導入するといった事例は、一般的なシステム開発における「設計」「開発」がないだけで、「必要な機能の要件を定義すること」「導入前にテストすること」「問題なく導入すること」「導入後に問題なく運用すること」はそのまま当てはまりますので、「QCD」に当てはめて比較してもさして違和感はないでしょう。

前置きが長くなってしまいましたが、「当然の3項目」は次のように評価していきます。

① 機能:Q

機能は最も重要な比較項目です。他の回のコラムで度々例として紹介していますが、「在庫」を管理したいのに肝心の在庫管理機能や倉庫管理機能(WMS:Warehouse ManagementSystem)が備わっていないERPを導入するのは本末転倒といった話です。先ずは自社が求める機能を洗い出して、公開情報から対象となるERPを可能な限り整理していき、その後に公開情報では分からないことを「問合わせ」たり「打合わせ」たりしましょう。

② 価格:C

機能の次に重要なのが価格です。潤沢なキャッシュがある企業ならば糸目をつけずにラグジュアリーなERPを選定すればよいですが、ほとんどの中小企業ではそうは言っていられないと思います。ERPはオンプレミスとクラウドの大きく2タイプがあると「なぜ「中小企業にこそクラウドERP」なのか?」で説明しましたが、キャッシュフローの観点からクラウド型をおすすめします。

利用継続期間によっては、オンプレミスよりもクラウドの方が総コストは高くなるケースも考えられなくはないですが、キャッシュフローを極力平準化することは経営の基礎であり肝でもありますので、ここは無難にクラウドを選定しましょう。クラウド型ERPであれば多くの場合、「初期費用」と「月額利用料」の2つで総額の価格が決まります。利用継続期間、期間ごとの利用ユーザー数等、算定に必要な前提をそろえた上で比較検討しましょう。

ただし一つ注意なのは、公開情報で条件が付されている場合です。こうした「条件付き」の価格を安易に信用せず、公開情報を収集した後に「問合わせ」たり「打合わせ」たりして確認しましょう。

③ スピード:D

最後にスピードです。スピードといっても色々な意味がありますが、ここでは「導入までの期間」「サポートのレスポンスの速さ」としましょう。この内「導入までの期間」は公開情報等から概ね収集可能だと思います。

問題なのは「サポートのレスポンスの速さ」で、これは公開情報からなかなか分からない情報といえます。したがって、比較検討の際には公開情報からの情報収集ではなく「問い合わせ」や「打合せ」をして、公開情報から収集できない情報をヒアリングしましょう。「サポートのレスポンスの速さ」については、大抵どの会社も「スピーディーにお応えします」としか言わないでしょうし、 定量的な情報は得にくいかもしれませんが、「サポートは何時まで受け付けているのか?」「電話はつながりやすいのか?」「電話、メール、チャット等どのような方法でサポートしてくれるのか?」等、深掘りして確認してみましょう。

以上が「当然の3項目」ですが、その他に比較しておきたい項目として、「セキュリティ(安全・安心)」「使い勝手(操作性)」「マニュアルの充実度(自走・再現性)」等が挙げられます。これらの点もある意味「当然の3項目」以上に大切な項目だと思いますので、抜かりなくチェックしておきましょう。

これらを基に個々のERP製品と比較項目を軸とした表を作成し、機能>価格>スピードの順に重み付けした上で、評点をつけ総合点が高い順に検討の俎上に上げていくと、自社に最適なERPを効率的に選定していくことができるでしょう。重み付けや評点に対する考え方は「意思決定のマトリクス」をイメージするとよいです。「意思決定のマトリクス」に関する説明は「中堅・中小規模の卸売業・小売業が抱える課題と打ち手の考察」 をご参照ください。

まとめ

ある意味当たり前の評価項目と評価方法だったかもしれませんが、忙しさを理由にこの辺りの精査をおろそかにするとモノがモノだけに後でとんでもないことになりますので、基本に忠実に実行してきたいですね。

この記事を書いた人

ライター
株式会社キャム 取締役COO

下川 貴一朗

証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。

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