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小売業の売上分析入門|7つのフレームワークと活用事例
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小売業の売上分析入門|7つのフレームワークと活用事例

「売上分析」とは売上データを多角的に捉え、その背景にある要因や構造を明らかにすることです。
単なる売上金額の確認にとどまらず、顧客・商品・地域・時間・チャネルという多様な視点で細分化して売上構造を明らかにします。同じ1,000万円の売上でも、その内訳の多くが新規顧客による購入なのか、既存顧客からのリピート購入なのかによって意味合いは大きく異なります。

このように、売上分析を行うことで事業の現状を正しく把握して、中長期的な成長戦略となる売上拡大に向けた具体的な施策へとつなげることができます。

売上分析の基本


売上データを「構造化」「可視化」「比較」することで、その要因や変化の理由を把握して、売上拡大に向けた具体的なアクションを導き出します。


  • 構造化

バラバラに存在する売上データを整理して、顧客・商品・地域・期間といった軸ごとに細分化することで分析に適した構造に整える。


  • 可視化

グラフやダッシュボードを用いて直感的に理解できる形にする。


  • 比較

前年同月比・予算比・競合との比較を行い、売上を押し上げている要因と伸び悩んでいる要因を明らかにする。


単なる売上の把握にとどまらず「何が売れているのか」「どこで売れているのか」を明確にすることで、より的確な意思決定が可能になります。また、売上目標に届かない原因(顧客数の減少、単価の低下、販促不足など)を特定すれば改善のための具体的なアクションを明確にできます。

こうしたデータに基づく分析を重ねることで、経験や勘に頼らない論理的な意思決定を実現します。


分析対象と施策例


分析対象 分析の目的 施策例
商品別 主力商品と低収益商品の判別 商品ラインナップの見直し・在庫調整・仕入や棚割の最適化
顧客別 顧客セグメントごとの売上比率や購買傾向の把握 リピート購入促進・客単価向上(クロスセル・アップセル)
チャネル別 販売チャネルごとの利益率や売上推移の傾向 投資配分の最適化・広告費の再配分・重点チャネルへのリソース集中
期間別 トレンドや季節性の把握 在庫計画・キャンペーン企画・需要予測に基づく仕入の最適化

商品別・顧客別・チャネル別・期間別といった分析軸ごとに目的を明確化することで、売上分析から改善アクションに結びつきやすくなります。実務ではこの枠組みを起点として、より細分化した指標や自社特有の視点を加えることで、さらに精度の高い戦略立案が可能になります。

売上分析のメリット


収益性の高い商品や顧客の特定


売上分析をすることで、主力商品やLTV(​​顧客生涯価値)を把握できます。「売上の80%は20%の商品や顧客から生まれる」と言われるパレートの法則を裏付けるデータを得ることで、投資や販促の重点領域が明確になり、在庫管理や商品ラインナップの最適化、さらには顧客セグメントごとの戦略設計へとつなげられます。


市場ニーズやトレンドの把握


売上データは単なる数字ではなく、市場の声を映す重要な情報源です。新商品やキャンペーンの販売推移を分析すれば、市場における受容度を定量的に把握できます。さらに顧客属性別のデータを掛け合わせることで、どの世代や地域で需要が高まっているのかを明らかにできます。


効果的な販促・マーケティング戦略


広告出稿と売上の相関を検証すれば、投下した広告費のROAS(広告費用対効果)を明確に把握できます。また、クーポンやキャンペーンの効果を測定することで実際の購買行動にどの程度つながったのかを把握できます。こうした分析は限られたマーケティング予算を最大限に活かせるだけでなく、特定の顧客層に狙いを絞ったアプローチや購買データをもとにしたクロスセル・アップセル戦略にもつながり売上拡大を後押しできます。


適切な予算・リソース配分


売上分析は限られたリソースを最も効率的に配分するための判断材料となります。各チャネルを売上規模や利益率、成長性といった観点から比較すれば、重点的に予算を投下すべき領域と見直すべき領域が明確になります。売上は大きいものの利益率やランニングコストに見合った成果が出ていないチャネルについて、投資の継続・縮小といった判断を分析データを根拠に決定できます。

売上分析:7つのフレームワーク


分析手法 主な目的 活用シーン
ABC分析 売上構造を把握 主力商品・重点顧客の特定、在庫戦略
RFM分析 顧客を優良度で分類 ロイヤル顧客施策、休眠顧客への対応
デシル分析 顧客を売上貢献度で細分化 セグメントごとの施策立案
アソシエーション分析 商品同士の関連性を把握 クロスセル、バンドル販売、棚割
要素分解分析 売上増減の要因特定 客数・客単価などの変動要因の切り分け
重回帰分析 複数要因の影響度を数値化 広告費・価格・人員などの影響を可視化
クロス集計 複数条件の傾向把握 地域×年代、商品×チャネルの分析

売上分析は複数のフレームワークを用いて整理・分類することで、さらに立体的に捉えることができます。以下では、代表的な7つの手法を解説します。


① ABC分析:貢献度に応じた分類


ABC分析は、売上や利益に応じて商品や顧客をランク分けする手法です。


商品を売上高(または粗利)で並べ、上位20%をAグループ、次の30%をBグループ、残りをCグループに分類します。

Aランクは在庫を切らさない主力商品として管理を強化して、Bランクは成長が期待できる候補、Cランクは在庫削減やラインナップ整理の対象となります。


例えばアパレルでは、白シャツやデニムといった定番品がAランク、売れ残った季節商品はCランクに分類されます。

これにより在庫確保や販促を優先すべき対象が明確になり、商品数の多い小売・卸売業で特に有効です。また、商品だけでなく顧客管理にも応用が可能です。


② RFM分析:顧客セグメントの可視化


RFM分析は、顧客の購買行動を「最新購買日(Recency)」「購買頻度(Frequency)」「購買金額(Monetary)」の3つの指標を組み合わせて評価することで、優良顧客や離反リスクのある顧客を見極める手法です。


この分析を通じて「どの顧客に積極的なクロスセル・アップセルを行うべきか?」「購買頻度が落ちてきた顧客に対して再購買を促す施策を打つべきか?」といったように、顧客セグメントに応じた適切なアプローチが可能になります。

これにより中長期的な売上の安定性や顧客維持率の向上につながります。


③ デシル分析:顧客分布を数値化


デシル分析は、顧客を売上や利益の大きさに応じて10等分して、それぞれのグループを比較する手法です。

デシルとはラテン語で「10分の1」という意味で、最上位の一割「=デシル1」がどれほどの売上を支えているかを確認することで顧客分布の偏りを可視化できます。

多くの場合、上位の少数顧客が全体売上の大部分を担っていることが分かるため、この層を中心としたマーケティング戦略の立案が求められます。


④ アソシエーション分析:商品間の関係性


アソシエーション分析は、顧客が同時に購入する商品同士の関係性を見つけ出す手法です。「Aを買った人はBも買う傾向が高い」といった 購買パターンを明らかにして、クロスセルやバンドル販売の設計に役立てます。


例えばコンビニで「ビールとおつまみ」の同時購入傾向が見られる場合は、棚の配置や販促キャンペーンを工夫することで売上拡大が期待できます。また、アパレルの場合であれば「シャツとネクタイ」に組み合わせ需要が見られる場合は、セット割引などの提案につなげることも可能です。バスケット分析とも言われるこの手法は、POSシステムなどの購買データを活用して実践することが可能です。


※バンドル販売について詳しくは「バンドル販売の仕組みと活用法:小売で利益を最大化する実践戦略」の記事をご覧下さい。


⑤ 要素分解分析:売上構成要素の把握


要素分解分析は、売上を複数の要素に分けて増減要因を定量的に明確化する手法です。基本となる式は「売上高=客数×客単価」、客単価は「売上高÷客数」で算出します。さらに客単価を「=平均購買点数×平均単価」に、客数を「=新規顧客数+(既存顧客数×リピート率)」に分解することで、売上増減の要因を細かく切り分けることが可能です。特定したボトルネックに応じて、顧客獲得、単価向上、リピート強化といった改善施策を的確に打ち出すことができます。


⑥ 重回帰分析:複数要因の影響分析


重回帰分析は、売上に影響を与える複数の要因(=説明変数)と売上結果(=目的変数)の関係を定量化する統計手法です。


  • 説明変数 = 広告費・平均販売価格・販売員数・キャンペーン実施の有無
  • 目的変数 = 売上結果


とすることで、それぞれの要因が売上に与える影響度(回帰係数)を明らかにできます。


参考例


例えば、月毎に売上・広告費・平均販売価格・販売員数・キャンペーン実施の有無のデータを揃えて回帰係数を算出します。


  • 広告費を1万円増やすと売上が5.2万円伸びる:回帰係数5.2
  • 平均販売価格が1円上がると売上が0.8万円下がる:回帰係数-0.8
  • 販売員を1人増やすと売上が15万円伸びる:回帰係数15.0
  • キャンペーンを実施すると売上が30万円増える:回帰係数30.0


このような結果が得られれば、どのような施策に投資すべきかを判断する材料になります。単一の要因だけを見る単回帰分析に比べ、さまざまな要素を切り分けて定量化できるため、現場の実態に即した判断がしやすくなります。


⑦ クロス集計:多変量解による傾向把握


クロス集計は、2つ以上の項目を掛け合わせて売上データを分析する手法です。

例えば「地域別×年代別」「商品カテゴリ×購入チャネル」といった条件を組み合わせることで、単独の項目では見えない傾向を浮かび上がらせることができます。「ある年代ではECでの購入比率が高い」「特定地域では特定商品が強い」といった傾向が 明らかになるため、ターゲティングや販路施策に役立ちます。

クロス集計はシンプルながらも応用範囲が広く、売上分析の入り口として非常に効果的な手法です。

小売業におけるフレームワーク活用例


「何に注力すべきか」「どこを改善すべきか」といった課題に対して、フレームワークを通じて改善の方向性を見出すことができます。


全体の売上構造を整理したい → ABC分析


商品や顧客が多いと、それぞれが全体売上にどの程度貢献しているのかが見えにくくなります。ABC分析を使えば、売上を大きく支えているものと、そうでないものを明確に区分できるため、売上構造を整理した上で在庫や販促の優先順位を判断できます。


売上減少の原因を特定したい → 要素分解分析/重回帰分析


「客数の減少なのか」「単価の下落なのか」といった原因が曖昧なままでは、打ち手が場当たり的になってしまいます。要素分解で増減要因を切り分け、重回帰分析で複数要因の影響度を数値化することで改善策を明確にできます。


顧客をセグメント化したい → RFM分析


顧客は一律ではなく購買頻度や購買金額に応じて異なります。RFM分析を用いれば、継続的に購入する顧客と、最近購入が減っている顧客を明確に分けてセグメント化できます。それぞれの状態に応じた施策を設計することで、顧客維持率の向上や安定した売上基盤の構築につながります。


売上に貢献する顧客層を把握したい → デシル分析


売上の大部分を一部の顧客が占めるケースは珍しくありません。デシル分析を行うことで「上位10%の顧客が全売上の半分近くを占める」といった偏りが明らかになり、どの層を伸ばすべきかが見えてきます。中位層の育成や下位層の底上げなど、施策の優先度を決めるための判断材料になります。


クロスセルやバンドル販売を強化したい → アソシエーション分析


「一緒に購入されやすい商品」を把握することで、棚割やレコメンド施策の設計を大きく改善できます。アソシエーション分析はこうした購買傾向を可視化して、クロスセルやバンドル販売に活かすことができます。


チャネルや商品別の売上傾向を整理したい → クロス集計


単一の指標だけでは見えない売上傾向も条件を掛け合わせることで明らかになります。クロス集計を使えば「地域×年代」「チャネル×商品カテゴリ」といった組み合わせで分析できるため、店舗ごとの品揃えや販促施策を最適化できます。

キャムマックス × Tableauで、売上分析をもっとスマートに


キャムマックス × Tableauで、売上分析をもっとスマートに


多くの企業では、売上データが部門やシステムごとに分散しているため「正確な数字」を集めるだけでも一苦労です。こうした状況ではデータに基づく戦略的な意思決定は難しくなります。

「キャムマックス」は、在庫管理・販売管理・購買管理・生産管理・財務会計を一元管理できる、中小企業向けに最適化されたERPです。実店舗・EC・卸といったオムニチャネル取引が一つのシステムに集約されることで、売上の全体像をリアルタイムに把握できます。このキャムマックスの強みを、さらに進化させるのがBIツール「Tableau(タブロー)」との連携です。


ERP × BIで、勘や経験に頼らないデータに基づいた意思決定


ERPに集約したデータを活かすには、視覚的にわかりやすく表現することが重要です。

Tableauは「売上の数字を見る」だけでなく、「どの商品や顧客に注力すべきか」「どこに課題があるか」が素早く見つかるBIツールです。


売上データを多角的に細分化


顧客・期間・カテゴリなど、視点を自由に切り替えて分析できます。売上をさまざまな角度から分解することで、普段は見過ごしがちな傾向にも気付けます。


複数指標を組み合わせて分析


販売数量・割引率・利益率なども組み合わせて可視化できるため「売れているのに利益が出ていない商品」が一目でわかります。


数字を直感的に可視化


ドラッグ&ドロップで項目を入れ替えられるため、利益率の低い商品だけを色分けして表示するなど、膨大なデータも誰が見てもすぐに理解できる情報に変換できます。


探索的に課題を発見


自由に分析軸を変えながらの探索も可能です。利益が出ていない商品がどのカテゴリに多いのか?どの時期に集中しているのか?といった傾向も可視化され、思い込みに捉われない課題の発見につながります。



キャムマックスでデータを“整え”、Tableauで“活かす”。

この組み合わせによって、日々の業務から得られるデータは単なる記録ではなく、売上を伸ばすための戦略的な資産へと変わります。

この記事を書いた人

ライター
株式会社キャム 取締役COO

下川 貴一朗

証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。

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