
【2026年版】DtoCとは?メリット・デメリットから運営を支えるサービスまで解説
DtoC(D2C)とは「Direct to Consumer」の略称で、メーカーやブランドが卸売業者や小売業者などの中間事業者を介さず、消費者に商品を直接販売するビジネスモデルを指します。従来は、メーカーから卸売業者や小売業者などを経由して、消費者へ商品を届ける流通モデルが一般的でした。
一方、DtoCでは、メーカーやブランド自身が消費者と直接取引を行い、販売やマーケティング、顧客対応などを主体的に担います。このように、消費者との接点を自社で持ち、ブランドの価値を伝えながら継続的な関係を構築できる点が、DtoCの大きな特徴です。
本記事では、DtoCが注目される背景から、集客手法、運用のポイントまで詳しく解説します。
INDEX
DtoCが注目されている背景
SNSの普及と消費者行動の変化
従来、企業が多数の消費者へ商品を認知させる手段としては、テレビCMや新聞、雑誌などのマスメディアが中心でした。しかし、現在ではSNSを通じて、企業やブランドが自ら情報を発信できるようになり、消費者との接点を直接持てるようになりました。
一方、消費者側も、SNS上の投稿や口コミ、インフルエンサーの発信などをきっかけに、ブランドの公式サイトから直接購入する行動が定着しつつあります。こうしたSNSでの行動変化が、DtoCの追い風となっています。
消費者ニーズ・価値観の多様化
現在の消費者ニーズは、幅広い顧客層に向けた商品だけでなく、特定の課題や嗜好、ライフスタイルに対応した商品への需要へと変化を見せています。
また、品質、デザイン、素材、利便性、生産方法、環境への配慮など、消費者が重視する要素も多様化しています。こうした多様化した消費者ニーズは、多くの消費者に向けた商品を扱う卸売・小売のモデルでは対応しきれない部分であり、DtoCが力を発揮しやすい領域といえます。
共感消費・ストーリー消費の広がり
消費者が商品に見出す価値は、商品そのものに限りません。ブランドの理念や企業の姿勢に共感して商品を購入する「共感消費」や、商品が生まれた背景や物語に価値を見いだす「ストーリー消費」といった消費行動もあります。
DtoCでは、自社ECサイトやSNSなどの情報発信を自社で管理できるため、商品の機能や価格だけでなく、ブランドの理念や開発背景までを一貫した方針のもとで発信できます。機能面での差別化が難しい市場において、こうした背景を発信できることは大きな強みとなります。
ECモールへの依存・価格競争への危機感
ECモールは多数のユーザーを抱え、商品を広く露出できる利点がある一方、同一プラットフォーム上に競合商品が並ぶため価格競争に陥りやすいという側面があります。加えて、販売手数料も発生し、利益率が圧迫される構造にあります。
こうした状況を踏まえ、特定のプラットフォームに過度に依存せず、自社で販売チャネルを持つDtoCへの関心が高まっています。販売価格や商品の見せ方、販促施策などを自社の方針で設計できるため、価格だけに依存しない販売体制を構築しやすい点もDtoCの特徴です。
DtoCのメリット
メリット① 中間コストを削減し利益率を高められる
従来型の流通では、メーカーから消費者へ商品が届くまでに卸売業者や小売業者など複数の事業者が介在し、それぞれにコストが発生し、それぞれの価格に転嫁されます。一方、DtoCでは自社ECサイトなどを通じて消費者へ直接販売することで、こうした中間コストを抑えられます。削減したコストは、販売価格の維持や利益確保のほか、商品開発や品質向上、マーケティングへの再投資にも活用できます。
メリット② 自由度の高いマーケティング施策を実施できる
ECモールでは、ポイント制度や会員ランク、キャンペーンなどを独自に設計するには一定の制約があります。また、購入者への同梱物やDMを通じて自社ECサイトへ誘導するなど、モール外での購買を促す施策についても規約による制限を受ける場合があります。
自社ECサイトを中心とするDtoCであれば、販売価格やキャンペーン、会員制度、購入後のコミュニケーションなどを、事業戦略やブランド方針に応じて設計できます。
メリット③ 顧客データを収集・活用できる
ECモールでは、取得できる顧客情報の範囲がプラットフォームごとに限られています。
一方、DtoCでは、自社ECサイトで購入した顧客の情報や購入履歴を自社で蓄積できます。また、LINE公式アカウントへの友だち登録やメール配信への登録を促すことで、購入前の見込み客とも継続的な接点を構築できます。
蓄積した顧客データは、新商品情報やクーポンの配信、顧客の購買状況に応じた販売促進、リピート施策などに活用することが可能です。
DtoCの課題
課題① ECサイトの構築・ランニングコストがかかる
DtoCでは、卸売やECモールへの出品とは異なり、自社でECサイトを用意する必要があります。そのため、構築や運用に継続的なコストがかかります。クラウド型のECカートシステムを利用すれば、大規模なシステム開発は避けられますが、月額利用料や決済手数料などが発生します。DtoCに取り組む際は、初期費用だけでなく、事業を継続する上で発生するランニングコストも考慮する必要があります。
課題② 自社で集客する必要がある
ECモールは多数のユーザーを抱えており、商品検索やランキングなどを通じた流入が期待できます。一方、自社ECサイトにはこうした集客基盤がないため、サイトを開設しただけでは十分な販売機会を確保できません。特に、認知度の低いブランドでは検索流入も限られるため、広告やSNSなどを使って、認知獲得から自社ECサイトへの流入までを継続的に確保する必要があります。
課題③ 物流・在庫管理の負荷が高まる
DtoCでは、注文を受けてから商品を顧客に届けるまでの在庫管理、梱包、出荷といった物流業務も自社で行う必要があります。
販売量が少ない段階では対応できても、注文が急増すると業務量は大きく増加します。物流体制が整っていなければ、発送遅延や誤出荷が発生し、顧客満足度やブランドへの信頼を損なうおそれがあります。
DtoC運営に役立つ外部サービス
集客や物流など、専門知識やリソースが必要な業務は、外部サービスへ委託するという方法も選択肢のひとつです。ここでは、DtoC運営で活用される主な外部サービスを紹介します。
集客・マーケティングの代行サービス
DtoCの集客には、広告運用やSNS発信のほか、SEOを意識したコンテンツ制作や動画制作など、幅広い施策が求められます。
サービスの種類 | 概要 | DtoCでの活用例 |
|---|---|---|
Web広告運用代行 | 広告の設定、予算管理、効果分析、改善など | Web広告を活用し、自社ECサイトへの集客を強化 |
SNS運用代行 | SNSの企画、投稿、効果分析など | 継続的な情報発信を通じて、顧客との接点を構築 |
インフルエンサー支援 | インフルエンサーの選定、交渉、施策の実施など | 商品紹介を通じて、新たな顧客層へアプローチ |
SEO・コンテンツ制作代行 | オウンドメディアの記事企画・制作、SEO対策など | Google検索やAI検索を通じた見込み顧客の獲得 |
動画制作代行 | 商品紹介や広告用動画の企画・制作など | SNSやYouTube、Web広告で使う動画コンテンツを制作 |
外部サービスの選定は、事業のフェーズや目的によって異なります。自社の強みや課題に応じて必要なサービスを組み合わせることで、限られたリソースを有効に活用しながら、運営体制を整えることができます。
物流・在庫管理・バックオフィス業務を支えるサービス・システム
DtoCでは、注文数の増加に伴い、在庫管理や倉庫管理以外にも、販売管理・購買管理・生産管理・財務会計などのバックオフィス業務も複雑になっていきます。こうした物流業務を支える仕組みとして、「3PL」や「WMS」、基幹業務をまとめて管理する「ERP」があります。
サービスの種類 | 概要 | DtoCでの活用例 |
|---|---|---|
3PL | 入荷、保管、梱包、発送などの物流業務を外部へ委託 | 在庫管理から梱包・発送までの物流業務を外部化 |
WMS | 倉庫内の在庫や入出荷、ピッキングなどの作業を管理 | 在庫差異や誤出荷を防ぎ、物流業務を効率化 |
ERP | 在庫管理・販売管理・購買管理・生産管理・財務会計などのデータを一元管理 | DtoC事業に関わるバックオフィス業務全体を可視化・効率化 |
3PL
3PL(Third-Party Logistics)は、商品の入荷や保管、在庫管理、梱包、発送などの物流業務を第三者の専門事業者に委託する形態です。自社で倉庫や出荷人員を確保する負担を抑えられるほか、注文数の増加にも対応しやすくなります。
WMS
WMS(Warehouse Management System)は、倉庫内の在庫や入出荷、ピッキングなどの作業を一元的に管理する「倉庫管理システム」です。在庫状況や出荷作業を可視化することで、人手による確認作業を減らし、在庫差異や誤出荷などの防止につなげます。DtoCでは、事業規模に応じてWMSの導入や、3PLの活用へと段階的に整備することが重要です。
ERP
ERP(Enterprise Resource Planning)は、在庫管理・販売管理・購買管理・生産管理・財務会計などのデータを一元管理する「統合基幹業務システム」です。DtoCでは、ECサイトやECモールなどから受け付けた注文をもとに、在庫の引き当て、商品の仕入れや生産、出荷、売上計上、会計処理など、さまざまな業務が発生します。
それぞれの業務を個別のシステムや表計算ソフトで管理していると、同じ情報を複数回入力したり、部門ごとにデータが分散したりすることで、業務全体の状況を把握しにくくなる場合があります。
そこで、ERPを活用すれば、データをまとめて管理できるため、DtoC事業に関わるバックオフィス業務全体の可視化や効率化につなげられます。
DtoCを成功させるためのポイント
ターゲットと提供価値を明確にする
DtoCは、消費者と直接つながれる分、対象とする顧客像や自社が届ける価値が曖昧なままでは、その強みを十分に活かせません。
市場には類似する商品やサービスが多数存在するため、「高品質」「低価格」「使いやすさ」といった一般的な訴求だけでは、競合との差別化が難しい場合があります。年齢や性別などの属性だけでなく、生活環境、購買行動、抱えている課題、商品を選ぶ際の判断基準までを踏まえて、顧客像を具体化することが重要です。
具体的なペルソナを設定することで、商品設計、価格、広告表現、コンテンツ、販売チャネルといった各施策に一貫性を持たせられます。
集客チャネルの組み合わせと新しい購買行動
DtoCでは、商品の特性や顧客層に応じて、SNS、オウンドメディア、Web広告、動画といった集客チャネルを適切に組み合わせることが重要です。単一のチャネルに依存せず、認知から購入までの流れを踏まえて複数のチャネルを連携させる必要があります。
また、近年ではAIへの相談や質問を起点とした商品選びも広がりつつあり、一連の購買行動を表すモデルとして「AICAS※」があります。
こうした変化に対応するには、Web上での商品・ブランドに関する言及を増やすことに加え、商品の属性・特徴・用途・適性などを具体的に示すことが重要です。
※AICAS:Ask(相談・質問) → Interest(興味・関心) → Confirm/Check(確認・検討) → Action(購買) → Share(共有・発信)の5ステップからなる消費者購買行動モデル。
まとめ―自社に合ったDtoCの形を見極める
DtoCの本質は、中間事業者を介さず、消費者に商品を直接販売することにあります。これにより、利益率の向上やマーケティングの自由度、顧客データの活用といったメリットを得られる一方、ECサイトの構築や集客、物流などを自社で担う負担も伴います。こうした負担を軽減するため、集客や物流などに外部サービスを活用することも有効です。ただし、ターゲットの設定や顧客との関係構築などは、ブランドの方向性や顧客に提供する価値そのものに関わるため、自社が主体となって取り組むことが重要です。
DtoCを検討する際は、自社の商品やブランドがDtoCに適しているかを見極めた上で、自社で担う領域と外部サービスを活用する領域を整理することが第一歩となります。
DtoC事業をサポートするクラウドERP『キャムマックス』
販売チャネルごとに分散する受注データ、注文数の増加に伴う在庫管理、そして物流体制の構築―。DtoC事業を継続的に運営していくには、こうした業務を横断的に支える仕組みが欠かせません。
クラウドERP「キャムマックス」は、在庫・倉庫管理、販売管理、購買管理、生産管理、財務会計といった基幹業務を一元管理し、現場の効率化と経営判断の迅速化を支援します。
主な機能と特徴
販売管理
楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングなどのECモールや、自社ECカートとのAPI連携により、各チャネルからの受注データを自動で取り込み管理します。電話・FAX注文も含め、チャネルを問わない一元管理を実現します。
在庫管理
複数チャネルの在庫情報をリアルタイムに反映して、売り越しや欠品を防ぎます。自社倉庫・外部委託倉庫を問わず、在庫の状況を統合的に把握できます。また、WMS連携により倉庫作業とのデータ連携にも対応しています。
財務会計
販売管理・購買管理・在庫管理のデータと連携しているため、売上計上から経費処理まで一気通貫で管理できます。転記入力の手間をなくし、経営データをリアルタイムに把握できます。
API連携
ECカート・ECモール・WMS・送り状システムなど、幅広い外部サービスとの連携に対応しています。DtoCの成長フェーズに応じて、既存システムと組み合わせた柔軟な運用が可能です。
この記事を書いた人

株式会社キャム 代表取締役CEO
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして株式会社キャムに参画。
その後、2021年9月より取締役COOに就任し、2026年6月より現職。




