飲食店の原価管理の重要性と管理できるツールを解説
在庫・倉庫管理

飲食店の原価管理の重要性と管理できるツールを解説

飲食店の経営を成功させ安定性を保つために、原価管理は非常に重要です。

なぜかというと、原価管理を行うことで食材やその他の経費にかかる支出を適切に把握し、無駄なコストを削減することができます。
また、原価管理は価格設定の基礎となり、競争力のある価格でサービスを提供するための重要な指標となります。

飲食店における原価管理の基本


原価率の計算方法と目安


原価率は、売上に占める原価の割合を示す指標で、飲食店の利益率を理解する上で重要です。


・原価率 (%) = (売上原価 ÷ 売上高) × 100


この数式により、どの程度のコストで商品やサービスを提供しているかを数値化できるので、価格設定やコスト削減の方針を決定する基準となります。

また、業態別による原価率の目安は以下になります。


  • 寿司屋 40~45%
  • 高級レストラン 35~40%
  • 焼肉屋 30%~35%
  • ラーメン屋 30%
  • カフェ・居酒屋 32%
  • 洋菓子店 25~30%
  • デリバリー専門店 25%


ただし、業態は同じでも店舗によって原価率には幅があり、ファミリーレストランの「ガスト」を経営するすかいらーくホールディングスの場合は約31%、「サイゼリヤ」は約38%となっています。(原価率は有価証券報告書に記載されている売上収益と売上原価より算出)


参考:2023年12月期 第3四半期報告書(すかいらーくホールディングス)

参考:第52期 第1四半期四半期報告書(サイゼリヤ)


食材単価と使用量の計算(理論原価と売上原価)


原価率の算出には、理論原価と売上原価という2つのアプローチがあります。


・理論原価

特定のメニューを作るために必要な食材の単価と使用量を掛け合わせて算出します。

たとえば、ある料理に使用するトマトが1個50円でその料理にトマトを2個使用する場合、理論原価は100円となります。


・売上原価

実際の営業過程で発生する食材のロスや廃棄を含めた総コストです。トマトを使用せずに廃棄(ロス)した場合でも、それは売上原価として換算されます。


つまり、売上原価を求める場合には


・売上原価 = 理論原価 + ロス分の金額


となります。

飲食店経営において廃棄(ロス)を最小限に抑えることは、原価率を低くし利益率を向上させるための重要なポイントとなります。


歩留まりとは?



”歩留まり”とは、食材に対して使えない部分があるというニュアンスで用いられる場合も多々あり、仕入れた食材に対して調理として提供できる量が違う場合があります。


  • 歩留まりが高い = 使える部分が多い
  • 歩留まりが低い = 使える部分が少ない


たとえば、野菜や肉を仕入れた際、全てが料理に使えるわけではなく、皮を剥いたり、骨を取り除いたりする過程で使えない部分が発生します。

この使えない部分を考慮せずに原価計算を行うと、実際の原価率は計算上のものより高くなります。


また、肉の部位や魚の種類によって、”食べられる部分”に幅があります。

(肉の場合は脂身、魚の場合は骨・内臓など)


したがって、実際の使用量を正確に把握し、歩留まりを考慮した原価計算を行うことが正確な原価管理には不可欠です。

当期(月単位)の売上原価と原価率の算出方法


当期(月単位)の売上原価の計算方法は、前月に持ち越された在庫(前月繰越)、当月に仕入れた在庫、当月末に翌月へ持ち越す在庫(翌月繰越)を考慮して行います。


・当期売上原価 = (前月繰越 + 当月中の仕入額) − 翌月繰越


この計算により、実際に当月に使用された食材の総コストが算出されます。

この売上原価を売上高に対して割ることで、当期の原価率が求められます。

原価率は、売上に占める原価の割合を示し、飲食店の利益率を理解する上で重要な指標です。

原価管理のポイント


適正な原価率と販売価格の設定


原価率が高すぎると利益が圧迫され、低すぎると品質の低下や顧客満足度の低下を招く可能性があります。

適正な原価率の設定は、業態や市場の状況、競合他社の価格設定などを考慮して行う必要があります。


一般的には、飲食業界では原価率を25~35%の間に保つことが望ましいとされています。

この範囲内で原価率を管理することにより、適正な利益を確保しつつ顧客に受け入れられる価格設定を行うことが可能です。


メニュー別原価率の最適化


各メニューの原価率を個別に分析し、それぞれのメニューが全体の利益にどのように貢献しているかを理解することが重要です。


たとえば、原価率が高くても人気のあるメニューは、客単価を上げる上で重要な要素となるかもしれません。

一方で、原価率が低いが売れ行きの悪いメニューは、見直しの対象となる可能性があります。

メニューごとの原価率を最適化することで、全体の原価率を適正なレベルに保ちつつ、顧客に魅力的なメニューを提供することができます。


また、季節やイベントに合わせてメニューの原価率を調整することも、売上の最大化に繋がります。


そのほか、食品だけでなくお酒やドリンク類の原価率も重要な要素です。

飲食店におけるドリンク類、特にアルコール類の原価率は、食品と比較して一般的に低めに設定される傾向があります。

アルコール類は、食品に比べてロスが少ない点や、少量から仕入れが可能なので売上に占める比率としてアルコールやドリンク類が大きいと、店舗全体の原価率を大きく下げることができます。


原価率を低く抑えるための工夫


レシピ表の作成


レシピ表の作成は、食材の使用量を正確に管理し、原価を把握するための効果的な手段で食材の過剰な使用を防ぎ、無駄を減らすことができます。

また、レシピ表は一貫性のある料理の品質を保つためにも役立ち、顧客満足度の向上にも繋がります。

レシピ表を使うことで、料理ごとの原価を正確に計算し、全体の原価率を効果的に管理することが可能になります。


廃棄・ロスを減らす


食材の廃棄やロスは、飲食店の原価率に大きな影響を与えますので、在庫管理を徹底し食材の賞味期限や鮮度を常にチェックすることが重要です。

売れ行きの悪いメニューの見直しや、食材の多用途性を活かしたメニュー開発も効果的です。

また、廃棄される食材を再利用することで、コストを削減し原価率を低く抑えることができます。


原価管理ツールの活用


飲食店における原価管理を効率化し、より正確に行うためには原価管理ツールの活用が非常に有効で、主に食材の仕入れから在庫管理、販売までの全プロセスを一元化し、すべての業務内容を”見える化”します。


たとえば、食材の仕入れ価格、使用量、売上などのデータを一度入力してしまえば、リアルタイムで自動的に原価率を出すことが可能となるので、手作業の集計における計算ミスや作業時間コストを大きく減らすことができます。


また、在庫管理においても在庫数の最適化が行え、過剰や不足を防ぎ、食材の廃棄やロスを減らし、コスト削減に貢献します。

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発注ミスを減らし仕入管理を効率化


在庫管理から販売管理まで一元化できるERP(Enterprise Resource Planning)の導入は、飲食店の仕入れ管理を効率化し、発注ミスを大幅に減らすことができます。


食材の発注プロセスを自動化し、過剰な在庫や不足による緊急発注といった事態を防ぐことができるほか、仕入れ価格の変動や供給者の情報をリアルタイムで追跡し、最適な仕入れ先の選定をサポートします。

これにより、飲食店はより効率的な仕入れ戦略を立てることができ、原価管理をより効果的に行うことが可能になります。


適切な在庫管理と正確な原価率の把握


在庫の消費速度を分析し、過剰在庫や品切れを防ぎ、食材の廃棄・ロスを削減ができます。


また、ERPシステムでは売上データや仕入れデータを統合し、正確な原価率をリアルタイムで計算することも可能です。

それにより正確な原価率が把握できるので、飲食店は価格設定を最適化し利益率を高めることができます。






この記事を書いた人

ライター
株式会社キャム 取締役COO

下川 貴一朗

証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。

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