予算管理とは?エクセルとシステムで行う方法をご紹介
予算管理と聞くと「難しそう」「経理の仕事」と思いがちですが、実は中小企業の経営には欠かせない重要な業務です。
多くの企業ではエクセルで管理しているケースが多いものの、実はそれがミスや手間の原因になっていることも少なくありません。
本記事では、そもそも予算管理とは何かを初心者向けにわかりやすく解説し、なぜ今、クラウド型の予算管理システムに移行する企業が増えているのか、その理由や導入のメリットについてもご紹介します。
目次
予算管理とは?
予算とは予定的計算を意味する言葉で、企業では会計期間内の収入と支出を見積もる計算にあたります。
予算管理とは、この予定的計算をもとに企業の活動を計画し、実績との差異を分析してデータを作成する業務です。
予算管理の目的
予算管理を行う目的は、最初に立てた予算をしっかり達成させることですが、その背景には企業の業績を上げることがあります。
予算を達成できたかどうかの分析は事後に行われるため、この分析データをもとに課題を発見して改善することが大きな目的です。
予算管理と経営管理の違い
予算管理で業績の改善を行うのであれば、これは経営管理と言えるのではと思うかもしれません。
実際経営管理という言葉は、予算管理を含む企業経営全体の管理を意味しています。
経営管理の中の一つの管理業務として予算管理が存在します。
予算管理の基本業務
予算管理の業務にはどのような内容が含まれるのか、基本的なものを挙げてみます。
予算管理規程の作成
予算を組むということは企業の金銭を扱うことになるため、不正などを防止する観点からも予算管理規程が必要です。
法律で定められているわけではありませんが、企業内の内部統制には作成がおすすめです。規程には予算管理の目的、期間、体系、責任の所在、報告方法を含めるのが通常です。
予算の編成
予算管理の最初の業務は予算の編成です。家計や個人事業など小規模な場合には細かいところまで予算を組むケースは少ないかもしれませんが、法人の会計では3種類の予算編成が必要です。
損益、資金、資本でそれぞれ予算を編成します。
この予算編成を上から行うか下から行うかは企業によって異なりますし、必ずしも上からか下からかということでもありません。
- トップダウン方式
経営計画を元に企業全体の予算編成方針を決め、それを各部署など下へ下へと分けていく方法です。
- ボトムダウン方式
企業の現場に近い末端部署や担当者から予算を決めていき、上に行くにしたがってまとめていく方法です。
実行
予算に基づいて企業活動が行われているかどうか、進捗状況を確認して修正します。企業によっていつ確認を行うかは異なりますが、例えば1か月ごとに末日時点でどれくらい予算が計画通り達成されているのかデータを集めます。
分析
期間ごとに取得したデータを分析します。予算が計画通り達成されていなければその原因を究明し、達成されるように改善につなげます。
改善
分析したデータを改善に活かすということが予算管理の最も大切な業務と言えるでしょう。改善方法をフィードバックし、予算とのずれが大きくなる前に対策していきます。
中小企業でよく使われている予算管理の方法とは?
中小企業の予算管理は、会社の規模や業務体制に応じてさまざまな方法で行われています。ここでは、一般的に使われている代表的な管理方法を5つご紹介し、それぞれの特徴や課題について解説します。
アナログ管理(手書き・紙ファイル)
手書きでの帳簿や紙ファイルによる管理は、最もシンプルでコストのかからない方法として、小規模な事業所で根強く利用されています。しかし、記録の紛失や集計ミス、共有の難しさといったリスクもあり、業務が拡大するほど限界を感じやすくなります。
エクセルやスプレッドシートによる管理
多くの中小企業で最も一般的に使われているのが、ExcelやGoogleスプレッドシートです。自由度が高く、テンプレートも豊富で、初期費用がかからない点が魅力です。ただし、属人化や関数ミス、バージョン管理の煩雑さが大きな課題となります。
会計ソフトを活用した予算管理
「弥生会計」や「freee」などのクラウド型会計ソフトでは、日々の会計処理と連動した予算管理が可能です。自動仕訳やグラフ表示などの便利機能もある一方で、本格的な予実分析には向かないケースもあり、拡張性に制限がある場合があります。
ERP・基幹システムによる一元管理
在庫・販売・経理などの情報を一元的に管理できるERPシステムでは、予算管理機能が標準搭載されていることも多く、部門ごとの実績把握や予算比較がスムーズに行えます。ただし、初期導入コストや操作習得の難しさが導入のハードルとなることもあります。
クラウドサービスを活用したリアルタイム予算管理
最近では、最近では、予算管理に特化したSaaS型のクラウドサービスも多く登場しており、ブラウザ上でリアルタイムに状況を把握できるのが魅力です。多拠点やテレワーク対応にも強く、更新も自動化されるため、人的ミスの軽減や情報共有の効率化に貢献します。
エクセルなどのアナログ管理で予算管理を行うメリットと限界
中小企業では、手書きの帳簿やエクセルを使ったアナログな予算管理が現在も多く見られます。操作のしやすさや低コストといった利点がある一方で、成長とともに業務に支障をきたすケースも少なくありません。ここでは、こうした管理方法の良い点と注意点を整理します。
導入コストがかからず、誰でもすぐに始められる
エクセルや紙の帳簿を使った予算管理は、特別なシステム導入が不要なため、初期費用が一切かからず、パソコンさえあればすぐに運用を始められる手軽さが魅力です。また、操作に慣れている社員が多いため、教育コストも抑えられます。
自由度が高く、自社の業務フローに合わせた運用が可能
エクセルであれば、自社の管理項目に合わせてシート構成や関数を自由に設計できるため、業種や部門ごとのニーズに柔軟に対応できます。汎用性の高さは、カスタマイズしにくい市販ソフトにはない大きなメリットです。
属人化しやすく、データの正確性や共有に課題がある
一方で、エクセル管理は担当者の個人スキルに依存する部分が大きく、退職や引き継ぎ時に業務が滞るリスクがあります。また、複数人で同時編集する際のバージョン管理や入力ミスによる集計ミスなども大きな問題となりやすいです。
情報更新に手間がかかり、リアルタイム性に欠ける
アナログな管理方法では、最新のデータに更新するには手作業が必要となるため、リアルタイムな予算状況の把握が困難です。特に拠点が複数ある企業や経営スピードが求められる場合には、データ更新の遅れが意思決定の遅延につながることもあります。
クラウドで予算管理ができるシステムのメリットとは?
アナログな予算管理では限界を感じる企業にとって、クラウド型予算管理システムの導入は有効な選択肢となります。リアルタイム性や自動化機能、情報の一元管理など、クラウドならではの利点によって業務全体の効率化が図れます。
複数人での同時編集・リアルタイム共有が可能
インターネット環境があればどこからでもアクセスでき、複数の関係者が同時にデータを更新・共有できる点です。これにより、部署をまたぐ予算管理や迅速な意思決定がスムーズになります。
自動集計・可視化により人的ミスを削減
入力されたデータをもとに自動で集計やグラフ化が行われ、視覚的に把握しやすい形式で情報を表示します。これにより、手作業による計算ミスや記載漏れといった人的エラーを防ぐことができます。
アクセス権限の設定で安全に情報を管理できる
ユーザーごとにアクセス権限を細かく設定することが可能です。経営層、経理担当、部門責任者など、それぞれに必要な情報だけを閲覧・編集できるため、情報漏洩のリスクも最小限に抑えられます。
アップデート不要で常に最新環境が使える
従来のオンプレミス型システムと異なり、クラウドサービスはベンダー側で常に機能更新・バグ修正が行われているため、ユーザーは常に最新かつ安全な環境で利用できます。保守の手間やバージョン管理の負担もありません。
予算管理システムの主な機能一覧
予算管理システムには、従来のエクセルでは実現が難しい便利な機能が多く搭載されています。ここでは、実際の業務で活用されている代表的な機能をわかりやすく紹介します。
予算の作成・配賦機能
部門ごとの予算を作成し、自動で全社の予算に集計できる機能です。前年実績からの自動算出や比率設定による配賦も可能で、作業の効率が大きく向上します。
実績との比較(予実管理)
月次・四半期・年間の実績と、予算との差異をリアルタイムで確認できます。差異分析やアラート機能があるため、予算オーバーを未然に防ぐことが可能です。
グラフ・レポート出力機能
収支の推移や予実の差異などを、グラフやダッシュボードで視覚的に表示。レポート形式での出力もでき、会議資料としてすぐに使えます。
承認・ワークフロー機能
予算の申請・修正・承認といった一連のフローを、システム上で完結できます。権限設定によって、誰がどのステップで確認・承認するかを自動化できるのが特徴です。
アクセス権限・ログ管理機能
部門や役職ごとに閲覧・編集権限を設定可能。誰がどのデータを操作したのか履歴を残せるので、不正防止や内部統制にも役立ちます。
外部システムとの連携機能
会計ソフトやERPと連携できる製品もあり、取引データを自動で取り込み、予算との照合がスムーズに行えます。二重入力の手間も省けます。
クラウドで予算管理ができるシステムを選ぶポイント
クラウド型の予算管理システムを導入することで、場所を問わずに予算データを確認・共有でき、チーム全体の業務効率が向上します。ただし、数多くの製品から最適なシステムを選ぶには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
操作性がシンプルで使いやすいこと
誰でも直感的に操作できるUI(ユーザーインターフェース)を持つかどうかは重要なポイントです。特にエクセルから移行する場合、複雑な操作は導入障壁となるため注意が必要です。
自社の業務フローに合っているか
予算の作成・承認・実績管理の流れが、自社の業務プロセスとフィットしているかを確認しましょう。柔軟なワークフロー設定ができるシステムが望ましいです。
予実管理や差異分析ができるか
予算と実績の差異をリアルタイムで把握できる機能があると、迅速な経営判断に役立ちます。分析機能やダッシュボード表示の有無も確認しておきましょう。
外部システムとの連携性
会計ソフトやERPなど、他の業務システムと連携できるかも大きなポイントです。自動でデータを連携できれば、手作業によるミスや手間が減ります。
セキュリティとデータ保護体制
クラウド型である以上、情報漏洩対策やデータのバックアップ体制は重要です。通信の暗号化やアクセス制限、データセンターの信頼性も確認しましょう。
サポート体制と導入後のフォロー
導入時の初期設定や操作トレーニング、運用中の問い合わせ対応など、サポート体制が充実しているかも導入の成否を左右します。サポートの対応時間や手段(電話・チャットなど)も確認しておくと安心です。
クラウドで予算管理ができるおすすめのシステムをご紹介
Sactona
費用:要問い合わせ
「Sactona」は、経営管理業務の高度化と効率化を実現するグローバル経営管理システムです。
予算管理、連結管理、部門別管理、グローバル製品別管理、アクティビティ別経費予算管理、製品モデル別研究開発費管理、プロジェクト予算管理、業績評価、中長期計画など、さまざまな管理会計と経営管理業務に対応しています。
また、Microsoft製品との親和性が高くて導入時のトラブルも少なくいため、迅速に展開することが可能です。
Loglass
費用:要問い合わせ
「Loglass」は、経営データを一元化する経営管理クラウドサービスです。
予算策定、予実管理、見込み更新、管理会計のフローを効率的に仕組み化し、経営の機動力を向上させます。
予算や見込データ、会計ソフトからの実績データをワンクリックで統合・反映することができるため、集計作業が効率化されるので経営判断に役立ちます。
また、全ての必要な情報が一元管理され、経営会議などで質の高い議論ができることに焦点を当てています。
まさに意思決定に必要な情報をサポートするために開発されたソリューションと言えるでしょう。
BizForecast BC
月額(年払いプラン):50,000円~
「BizForecast BC」は、プライマル株式会社が提供する管理会計ソリューションの一部で、Excelを活用した情報収集や集計・加工機能を提供や、
予算管理を含むさまざまな管理会計業務に活用できるサービスです。
特徴として、優れた入力インターフェースや豊富なワークシート関数、多彩なグラフ・チャートの表現力が特長で、会社のノウハウが凝縮されたExcel資産を活用し、メンテナンスの容易さなどがあげられます。
また、Excelのデメリットを解消しデータベースによる一元管理や組織・科目のマスタによる効率的な集計、他のシステムとのデータ連携機能によるデータの反映、個人に依存しない業務遂行を実現するサービスです。
iFUSION
費用:要問い合わせ
「iFUSION」は、Excelに関連する業務を効率化するための運用サポートシステムで、既存のExcelデータをそのまま活用しながら利用できるシステムです。
たとえば、Excelで予算編成や予実・見込の管理、日々の報告書作成など作成すると時間がかかります。
しかしFUSIONであれば、Excelに関連する作業や手間のかかる部分を自動化することができます。
さらにフォーマットは一元管理されるため、ファイルの管理が煩雑になりません。
これによりExcel作業を効率化し、担当者は本来の業務に集中することができます。
DIGGLE
費用:要問い合わせ
「DIGGLE」は、予実管理を効率化し業績の着地予測精度を向上させるクラウドサービスで、
「予算の進捗状況の把握に苦労している」「事業ごとの損益を可視化できていない」「個人に依存した予実管理のExcel/スプレッドシートの運用に限界を感じている」といった課題を解決します。
これにより、毎月のExcel作業に費やしていた時間を本来の要因分析やアクションプラン策定に活用できます。予算と実績の数値に基づいた早期のアクションや、経営層や事業部との円滑なコミュニケーションを実現します。
無料版のある予算管理システム
bixid
月額:600円(税抜)~ / 無料版あり
「bixid」は、経営の強靭化をサポートするサービスで、会計ソフトのデータを簡単に取り込んで、自動で経営計画を策定することができます。
経営管理や月次決算を簡単に行えるクラウド型の経営支援ソフトです。アシストロボット「bi-bo(ビーボ)」が画面上で数字の見方をわかりやすくサポートしてくれます。
直感的に操作できるUI/UXデザインで、財務会計に自信がなくても安心して利用できます。さらに、パソコンやスマートフォンでいつでも財務状況をモニタリングすることができ、自社内や会計事務所とのやり取りもスムーズに行うことができます。
fusion_place
cloud版:1,200,000円~(年間利用料金)standard版:無料
「fusion_place」は、タイムリーな見込集計や予算改定、変更点の把握、現場部門の予実管理能力の向上、詳細な実績データの提供、Excelの複雑な運用手順の簡素化など、さまざまな課題を解決します。
さらに、オンラインマニュアルやチュートリアル、サンプルアプリケーション、経費管理テンプレートなどが提供されており、早期の導入や業務改善に役立ちます。
精度の高い期末見通し、予算や見込の内容と根拠の可視化、連結ベースの予算管理など、新しい取り組みに挑戦する企業におすすめのソリューションです。
予算管理をシステムで始めてみるならクラウドERP「キャムマックス」がおすすめ!
クラウドERPキャムマックスでは、予算管理をするシステムとして大変優れています。
在庫管理・購買管理・販売管理・生産管理・財務会計までをシームレスに一つの画面で管理することができます。
資産がどれほどあって、仕入れがどれだけあるかなどは常にリアルタイムで確認することができるので、簡単に予実管理もできます。
バックオフィス業務が効率化されるだけではなく、経営状況までを見える化してくれるキャムマックスは中小企業におすすめのシステムです。
予算管理をエクセルで行う場合
予算管理を行う部署が少ない場合には、ひとまとめにブックを作成し、部署ごとにシートを分ける方法が良いでしょう。予算管理を行う部署が多い場合には、部署ごとにブックを作成して週次や月次等ごとにシートを分ける方法がおすすめです。
また、週や月の集計は分けずに実績や分析結果などでシートを分ける方法もあります。エクセルの場合は予算管理のテンプレートもあるので、そちらを活用しても良いでしょう。
エクセルによる予算管理表の作り方
ここでは、例として月次集計を予算、実績、分析結果のシートで分ける予算管理表の作り方をご紹介します。
新規ブックを開いたら、A列に売上高、売上原価、費用、営業利益などの項目を入力していきます。
1行目には「〇年度予算管理表」などとブックのタイトルを入力します。
1行空けて3行目に「〇月」と入力し、右のセルにも12か月連続するように入力していきます。
これが予算シートになりますので、決定している予算額を入力します。
次に予算シートをコピーして作成し、実績用にします。このシートには実績値を入力します。
3つ目は予算と実績を比較するシートです。A列の項目は1枚目、2枚目と同じで良いのですが、各月での予算と実績の差異、比率を取得できるようにします。
ざっくりとこんな形の予算管理表が出来上がります。
エクセルによる予算管理の注意点
エクセルの場合はそれほど難しい知識を必要とせずに予算管理表を作成できますが、効率化という観点では課題が残ります。
たとえば上記でご紹介したような予算管理表の場合、部署ごとで別々のブックを使用することになるため、それらの相関性などを見ることができません。また、何らかのアクシデントで過去の月のデータが消えてしまうと、もう一度入力し直す必要が出てきます。
この予算管理表では予算と実績の差異は表示できるものの、詳しい分析は別途レポート資料を作成する必要があります。
年度の途中で項目の増減などフォーマットの変更があった場合などは、各部署で対応しなければならず、共通化が難しいです。
実績も含めた予実管理表(予算実績管理表)とは?
予実管理表では、一般的に予算と実績の項目が並列に表示されます。
収益や費用、利益などの項目ごとに予算の計画額と実績の実際の数値が記録されます。
そして、予算と実績の差異を算出して達成度や逸脱の度合いを可視化します。
予算と実績を比較することで、目標達成の進捗状況や予算の逸脱要因を把握し、必要な対策や調整を行うことができます。
また、予実管理表の分析結果に基づいて経営の意思決定や戦略の立案にも活用され組織の改善や成長戦略を進めることができます。
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この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。