多通貨対応しているクラウドERPで作業効率アップ! 為替自動計算でさらに便利に
海外取引の拡大とともに、多通貨や為替対応の業務負担が増している中小企業や輸入商社にとって、柔軟な会計処理を行えるERPシステムの導入は急務となっています。
本記事では、特に輸入ビジネスに最適な「多通貨対応クラウドERP」の選び方を解説し、実際に使えるおすすめ製品をご紹介します。業務効率と経理精度を両立させたい企業にとって、必見の内容です。
目次
輸入ビジネスにおける多通貨・為替管理の重要性
輸入ビジネスを展開する企業では、日常的に複数の通貨での取引が発生し、為替レートの変動が経理や原価管理に直接影響を与えるため、正確かつ効率的な対応が求められます。
なぜ多通貨管理が必要なのか?
海外からの仕入れや販売を行う企業にとって、取引先通貨の異なる請求書や支払い処理は避けられません。
日本円での帳簿管理だけでは不正確になりやすく、実際の損益を正しく把握するには、現地通貨での記録と換算が必須です。
為替変動による経理の負担とリスク
為替レートは常に変動するため、締日ごとに手動でレートを確認して換算する手間が発生します。
これにより経理担当者の作業負荷が増加し、換算ミスによる損失や報告の遅れといったリスクも高まります。
中小企業が抱えやすい輸入ビジネスの課題とは?
大企業とは異なり、専任の経理部門やITシステムが整っていない中小企業では、Excelや会計ソフトでの処理が限界を迎えやすく、取引量が増えるほど属人化と非効率化が深刻になります。
ERPシステムで実現できる多通貨・為替管理
ERPシステムを活用すれば、通貨管理や為替レートの処理が自動化され、業務の精度とスピードが向上します。ここでは具体的な機能とメリットを見ていきましょう。
ERPとは?
ERPとは「Enterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)」の略で、日本語では「統合基幹業務システム」とも呼ばれます。
企業の会計、販売、在庫、購買など、バラバラに管理されがちな情報をひとつのシステムで一元管理し、業務全体の効率化や経営判断のスピードアップを支援します。
最近ではクラウド型が主流となっており、低コストで導入できる点や、多拠点・リモートでの活用にも対応できる点が注目されています。
為替レートの自動更新と換算機能
多通貨対応のクラウドERPでは、外部の為替データを取り込むことで最新レートを自動反映できます。
これにより、手動入力のミスや更新漏れを防ぎ、正確な原価計算や損益分析が可能になります。
外貨建て取引から日本円へのスムーズな変換
請求書や支払明細を外貨で登録した際、自動で円換算される機能により、帳簿の二重管理が不要になります。
さらに、未決済取引における為替差損益も自動で仕訳可能です。
多言語・海外拠点対応によるグローバル展開の後押し
英語や中国語など複数の言語表示に対応したERPであれば、海外現地法人とのやり取りもスムーズになります。
現地スタッフが直接操作できる環境が整えば、情報の一元管理が実現します。
多通貨対応ERPの特徴
多通貨対応ERPとは、複数の通貨や言語に対応したERPシステムを指します。
EC事業者に限らず、海外から商品を仕入れている卸業者やメーカーも数多く存在します。そのような企業のバックオフィスでは、為替レートの計算や各国の会計基準・税制に対応した処理が求められ、国内取引と比べて業務が複雑になりがちです。
このような煩雑な業務を効率化するために役立つのが、多通貨対応のERPシステムなのです。
多通貨対応ERPを導入するメリット
多通貨ERPを導入していない企業では、為替レートを毎回手作業で確認し、電卓やExcelのマクロを使って原価を算出する必要があります。
この方法では時間がかかるうえ、人的ミスも起こりやすく継続的な管理に大きな負担がかかります。
また、複数の通貨や言語を扱う場合、それぞれの登録や換算、為替変動の反映なども煩雑になり、取引のたびに作業の手間が増えていきます。
こうした手間とリスクを大幅に軽減してくれるのが、多通貨対応のERPシステムです。
多通貨対応のERPシステムを導入することで、発注書や請求書の作成を外貨で行えたり、売上や粗利を為替レートに基づいて正確に計算できるようになります。
さらに、通貨や言語の切り替えも簡単で、取得時点のレートをもとに外貨と円貨の仕訳を同時に記録できるため、帳簿の整合性も保ちやすくなります。
結果として、国際取引に伴う複雑な業務の効率化と、経営判断のスピードアップが可能になります。
多通貨ERPの主な機能
多通貨ERPの主な機能として「為替自動計算機能」「外貨管理機能」「言語の追加・切り替え機能」が挙げられます。
為替自動計算機能
あらかじめ登録しておいた為替レートや、支払い時の評価替レートによる代金を自動で計算する機能です。
計算ミスを防ぎ、計算にかかる手間と時間を低減してくれます。
外貨管理機能
外貨建て取引を円建てに自動換算する機能です。
複数の通貨や為替レートを登録し、後から変更を行うなどの管理が可能です。
言語の追加・切り替え機能
標準言語を日本語としながら、英語や中国語、韓国語、フランス語、スペイン語などに切り替えて、入力や出力(帳票)が行える機能です。
多通貨対応ERPシステムを紹介
多通貨管理に対応したERPは数多く存在しますが、製品ごとにターゲット企業の規模やコスト、機能の幅に違いがあります。
ここでは特に導入実績が多い3製品「EXPLANNER/Z」「GRANDIT」「キャムマックス」に焦点をあて、特徴や向いている企業像を詳しく見ていきましょう。
EXPLANNER/Z
EXPLANNER/Zは、日本電気株式会社(NEC)が提供するERPで、オンプレミス、クラウドの選択が可能となっています。
製造業をはじめ、建設業、サービス業などさまざまな業種、また、大企業から中小企業までさまざまな規模への導入実績を持ちます。
多通貨、多言語に対応しており、会社標準となる通貨である「機能通貨」と、各種伝票入力で入力する「取引通貨」の両方の管理が可能で、それぞれの通貨で日本円、米ドル、ユーロなどの複数の通貨を利用できます。
また、複数の外貨種類、レートの管理が可能で、未実現差損益計算のための月次や期末に評価替計算等外貨業務の効率化を実現できます。
主な多通貨対応機能
- 多通貨・多言語に標準対応
会社標準の通貨(機能通貨)と、各種伝票入力で使用する取引通貨を別々に管理可能。外貨建ての伝票を標準通貨に自動換算する機能を備えています。
- 未実現差損益の自動処理
月次や期末における評価替え計算など、外貨業務の効率化を実現します。
対応通貨・言語
- 通貨:日本円、米ドル、ユーロなどの主要通貨に対応。
- 言語:日本語、英語、中国語、韓国語に対応し、グローバルな展開をサポートします。
導入コスト・規模
- 導入費用:公式には非公開。企業の要件やカスタマイズ内容により変動するため、詳細はNECにお問い合わせください。
- 対象企業:中堅〜大企業、特に製造業や流通業などの業種に適しています。
GRANDIT(グランディット)|GRANDIT株式会社
GRANDITは、完全Webベースの国産ERPで、多言語・多通貨対応を標準で備え、グローバル展開を視野に入れた企業に適したシステムです。
主な多通貨対応機能
- 通貨マスタの初期提供:ISO4217準拠の通貨マスタを導入時に提供し、取引通貨と基軸通貨のレート換算を行うためのレートマスタを持ちます。
- 為替予約や信用状取引のサポート:貿易業務に必須となる要件のサポートに加え、多言語・多通貨の対応により、海外拠点での利用が可能です。
対応通貨・言語
- 通貨:主要通貨に加え、ISO4217準拠の通貨に対応。
- 言語:日本語、英語、中国語に対応(多言語オプション機能を追加導入することで対応可能)。
導入コスト・規模
- 導入費用:モジュールや利用人数、カスタマイズ内容により変動するため、詳細はGRANDITにお問い合わせください。
- 対象企業:中堅〜大企業、特にグローバル展開を目指す企業や多拠点展開を行う企業に適しています。
キャムマックス
キャムマックスは、株式会社キャムが提供する中小企業向けクラウドERPです。
多通貨機能はもともと、カスタマイズで対応していましたが、ノンカスタマイズ化に伴い、標準機能としてリリースしました。
通貨は都度、登録も可能。世界中の通貨の設定が可能です。
また、為替の変動があった場合は、管理画面から数字を入力するだけで対応可能です。これにより発注する際に外貨での処理が可能になり、輸入諸掛を商品原価として利用できるので、売上だけではなく粗利計算まで正確に行えます。
主な多通貨対応機能
- 外貨建てでの売上・仕入・在庫入力、日本円への自動換算:複数の通貨や為替レートを登録し、後から変更を行うなどの管理が可能です。
- 毎月の任意為替レート設定、リアルタイム粗利計算:計算ミスを防ぎ、計算にかかる手間と時間を低減します。
- 通貨別の価格マスタ登録、同一商品に複数価格設定が可能:外貨建て取引を円建てに自動換算する機能です。
- 複数通貨の財務レポート出力(例:通貨別粗利一覧):多通貨ERPの主な機能として「為替自動計算機能」「外貨管理機能」「言語の追加・切り替え機能」が挙げられます。
対応通貨・言語
- 通貨:任意の通貨を自由に登録(主要通貨以外も登録可能)。
- 言語:標準言語を日本語としながら、英語や中国語、韓国語、フランス語、スペイン語などに切り替えて、入力や出力(帳票)が行える機能です。
導入コスト・規模
- 初期費用:10万円(税抜)
- 月額利用料:基本料金7万円+ライセンス利用料2万円/1ライセンス(1ライセンスにつき5アカウント)
- 対象企業:中小企業、輸入商社、小規模製造業、成長企業など
キャムマックスが輸入ビジネスに適している理由
ここでは、他製品と比較した際の「キャムマックス」の優位性をより詳しく解説します。
標準で多通貨対応:追加費用不要のメリット
多くのERPでは多通貨機能がオプション扱いですが、キャムマックスでは最初から標準搭載されており、追加費用なく全通貨を扱える設計になっています。
為替入力・粗利計算・通貨登録の柔軟性
独自レートの入力や未決済の為替差損益処理、外貨建ての売上・仕入れデータを基に粗利を自動計算する機能があり、経営判断に活かせる情報が即座に得られます。
中小企業・輸入商社に導入しやすい理由
操作性がシンプルでサポートも充実しており、IT専任者がいない中小企業でも安心して導入できます。
輸入業務の多い企業に特化した設計がされています。
よくある質問
多通貨機能についてよくある質問をまとめました。
Q どの通貨でも対応可能なのでしょうか?
対応可能です。 通貨マスタ登録画面より利用したい通貨、為替、小数点の設定をしていただくことで自由にご利用頂けます。
Q 海外の拠点で利用することは可能でしょうか?
クラウドERPなので拠点を問わず利用可能です。インターネット環境とウェブブラウザさえあればどこからでもアクセスいただけます。
Q 仕入時と、処理時の間に為替変動があった場合どうなりますか?
変動があった場合でも、管理画面に新しいレートを入力して頂ければ、全てのデータが上書きされて変更されます。いつでも細かい修正が可能となっています。
Q 業種、業態によっては使えない場合などありますか?
キャムマックスは業種・機能による機能の制限はございません。お客様の業務フローに合わせて、使わない機能を表示/非表示して制御いただけます。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。