売上管理の秘訣!仕事内容からポイントまでをじっくり解説
常に競争にさらされているビジネスの世界では、売上を伸ばすため常に自社の状況を把握しておくことは欠かせません。
その時に重要な情報の1つが、商品の販売数や顧客データなどの売上データです。
売上データを整理し、売上状況をリアルタイムに正確に把握することができれば、事業戦略や販売戦略を立てやすくなります。
本記事では、売上の向上に繋がる売上管理業務の概要からポイントまで詳しく解説します。売上データを経営に活かしたいという方は是非ともご覧ください。
売上管理とは
売上管理と聞くと、会社の売上データを集計してまとめる業務のように思いますが、単に数字の集計をするだけではなく、会社の売上を更に伸ばすための施策を考える上で、参考となる売上データの整理を行う業務を指します。
売上データを正確に把握することで経営状況や目標達成度合いの把握ができるほか、売上データから事業課題を見つけるヒントも見いだせるため、商品開発やマーケティング、営業戦略といった様々な業務の改善に活用できる情報を得られます。
そのため、売上管理は経営者や管理部門以外の社員にも関係する業務といえるでしょう。
売上管理の仕事内容
売上管理の目的は、基本的には会社の売上目標達成のためですが、売上管理の具体的な仕事内容は企業によって様々です。
主な業務内容は、毎日の売上を記帳しリアルタイムに売上データを閲覧できるようにすることです。
しかし、売上目標に対しての進捗が芳しくない場合は会社としての戦略を軌道修正をする必要があります。その際に活用されるのが売上データです。売上データから事業課題の特定や事業戦略の策定、人材育成のためのマネジメントなどにデータを活かすために、顧客属性や商品別の販売数など様々な観点でデータをまとめて、会社の意思決定に活用していきます。
売上管理の仕事は、単に売上が分かるだけでは良いというものではなく、更に売上を伸ばすためにデータを管理することであるといえます。
売上管理に求められるスキル
売上管理に特別な知識や資格は必要ありませんが、売上管理の業務内容は多岐にわたるため、どのような業務を行うかによって求められるスキルは変わります。
売上管理の中でも、日々の売上の記帳とデータの整理をメインに行う場合は、データを誤りなく入力する正確性や、反復作業でもミスを起こさない集中力が求められます。
また、記帳したデータは売上アップの施策を考える材料として活用されなくてはいけませんので、データから因果関係や相関関係を見出す分析力や、データから課題となっていることを考察する仮説構築力などのスキルが必要となります。
有益な売上管理データを作成
売上データから事業上の課題を探りその解決策のヒントを得るには、どのように売上データを整理するかが非常に重要です。
売上管理が売上額だけしか分からないものであれば、予算の達成状況は把握できるものの、さらに売上を上げるために施策を考えることは困難です。
いわば事業戦略を立てるための武器が一つ減ることに繋がりますので、売上管理はデータ整理の仕方が肝となります。
ここからは、有益な売上管理データの作成パターンを5つご紹介しますので、自社に合わせた売上管理の方法を考える参考にしてください。
時間・曜日・日別の売上管理
売上データを一定の時間軸でまとめることで、人員リソースを最大限に活用することが可能になります。
店舗等であれば、時間や曜日別の売上を把握することで、必要となる人員を事前に予測することができるため、効率的なシフト管理が可能となります。
部署別(店舗別)の売上管理
部署や店舗別に売上を把握することで、企業全体の売上を上げるヒントが見つかる可能性があります。
会社全体の売上を見ても、売上が低迷している原因を特定するには要素が多すぎて難しいですが、例えば同じ商品を販売しているにも関わらず突出して売上が高い店舗があった場合、売上が高い店舗を重点的に分析することで売上向上のヒントを得られるでしょう。
また、リアルタイムで目標達成度の把握ができれば、売上が伸び悩んでいる部署や店舗を早期に支援することも可能になります。
商材別の売上管理
商材別に売上を管理することで、商品開発や商品の入れ替えの検討材料とすることができます。また、特定の商品の売上が伸びているなどの情報もタイムリーに把握できるため、在庫切れによる機会損失のリスクも減らせます。
また、時間や曜日の売上データを一緒に分析することで、時間や曜日に応じた商品レイアウトの変更や接客方法を工夫して売上を伸ばすことができるかもしれません。
顧客別の売上管理
顧客ごとに売上を管理することで、フォローすべき大口顧客の把握などが容易になります。
また、顧客の業界や従業員規模などのデータを併せて活用することで、特定のセグメントの顧客に積極的に販売する商品を選定したり、商材別の売上データと併せて分析すれば追加で別の商品を提案するクロスセルの提案先企業をピックアップするといった営業戦略を立てることもできます。
決済別の売上管理
最近では現金だけではなくクレジットカードや電子マネー、QRコード決済など、支払いの方法が多様化していますので、決済方法別の売上管理も有効です。
決済ごとに入金日や手数料が違うため、キャッシュフローや利益率にも影響が出るほか、店舗などの場合は顧客に好まれている決済方法を把握することもできますので、売上アップとコストダウンの両面で有効な管理方法といえるでしょう。
売上管理する目的を知る
これらを踏まえた上で、売上管理をする目的は何かをしっかりと確認し、目的に沿った売り上げの管理を行いましょう。
売上管理は売上を更に伸ばすための業務ということは上述の通りですが、そのためには自社にとってどのようなデータが役に立つのかを事前にしっかりと考えておく必要があります。
また、売上管理は、目標への進捗度に応じた部門のマネジメントや粗利益の管理、広告施策の費用対効果の測定にも繋がります。
ここからは売上管理によって把握できる事柄を詳しく解説しますので、売上管理を行う目的を決める際に役立つでしょう。
目標(達成進捗)の把握
売上管理によって、部門や店舗、担当者別の目標達成度を把握することができます。
これにより、進捗が芳しくない部門への早いタイミングへの支援や、売上が好調な部門の工夫を社内に展開していくといった打ち手に繋がります。
この時、売上データがリアルタイムに反映されなければ目標達成に向けての適切な支援ができませんので、目標達成のためのマネジメントを目的とする場合には、売上データが即時に反映される仕組みを構築しておきましょう。
原価や粗利の把握
売上管理のデータに商品の原価を記載することで粗利益もすぐに把握することができます。
原価や仕入れ値が頻繁に変動する商材を扱っている場合、原価の変動を商品別に素早く把握することで利益率の変化も分かりますので、軌道修正のスピードも上がるでしょう。
また、営業部門や営業担当者別の粗利益率が大きく異なる場合には、利益率の高い営業を分析することで営業スキルの底上げに繋げることもできます。
広告(消化状況)予算の算出
売上管理データから生み出される利益を把握することで広告に投下できる予算を算出することが可能です。
また、広告に投下した費用の消化状況や消化率を売上データに記載することで、「広告がどの程度利益に貢献したのか」、「どのような広告が売上増加に繋がったのか」といった広告の効果測定の1つの材料となります。
広告の効果を測ることは難しい場合も多いですが、詳細な売上データと連動させることで、広告の費用対効果を上げることにも繋がるでしょう。
売上管理をする上でのポイント
売上管理を精度高く行うことで、経営上の課題に対して的確な対策を講じることができるため、売上データの反映には正確さとスピードが求められます。
正確さとスピードのいずれかでも欠いてしまうと、売上データを元に下した判断を誤ってしまうことや、売上が低迷しているにも関わらず情報が無いために軌道修正をしていくことができない事態に陥ってしまいます。
売上管理が経営に活用できるデータにならないということを避けるための4つのポイントをご紹介しますので、これから売上管理を行う企業は参考にしてください。
テンプレートの活用
売上管理を行うにあたり、既に項目が用意されているテンプレートを活用することは非常に有効です。テンプレートの項目を基本として自社に合う項目を考えることができるため、売上管理の最初の一歩として始めやすいでしょう。
また、複数の社員が売上管理を担当する場合、社員によって項目やまとめ方が異なると、データ分析の際に再度整理しなおさなければならない手間が発生します。
こうした無駄を無くすためにも、テンプレートを活用して項目を統一し、分析のスピードと精度を上げることに繋げましょう。
記入方やルールを設ける
売上データの記入は多くの社員が関わることも珍しくありません。管理部門だけではなく、タイムリーに売上データを把握するために営業社員が入力を行うこともあれば、原価の管理をする購買部門が入力を行うこともあるでしょう。
多くの社員が入力をする場合は、記入方法や共通のルールを決めておくことが欠かせません。売上データを入力するタイミングや、記入する内容などを統一することで、記入漏れを防いだり、データ分析の精度を高めることができます。
売上管理に含める項目の選定
売上管理にどのような項目を含めるのが適切なのかは企業によって異なります。
売上金額や販売日、担当者といった情報は共通の項目になりますが、店舗の場合であれば曜日や天候、気温などの要素が売上に関わることもあるため、こうした項目も含めると良いでしょう。
天気の情報なども含めてデータをためていくことで、売上予測の精度向上や、天気に応じて事前に販売戦略を立てておくことも可能となります。
また、営業職が多い会社であれば、顧客の業種や取引企業の担当者役職、決済のポイントなどを記入することで、営業ノウハウの蓄積にも繋がります。
ただし、売上管理の項目を多くし過ぎてしまうと、入力業務が社員への負担となり、入力が漏れる場合や入力作業に時間が取られてしまうケースもありますので、注意が必要です。
表計算ソフトやシステムを活用する
売上管理を紙ベースや計算機能の無いソフトなどを用いて行うと、集計・分析といった作業に非常に手間がかかります。
売上データは情報量が多いため、手動で計算するのは時間がかかります。また、部門別や商材別の売上データなど複数の切り口でデータを整理することが困難になります。
また、複数の社員が入力を行う場合、それぞれのデバイスから入力が可能なクラウドサービスでなければ、入力の順番を待つなどの非効率な時間が発生する可能性もあるでしょう。
こうした点から、売上データを素早く入力でき、集計も比較的簡単に行える、表計算ソフトやシステムをクラウド上で利用することをおすすめします。
売上管理の方法
売上管理は表計算ソフトやシステムで行うのが効率的とお伝えしましたが、売上管理が可能なツールやアプリケーションは多岐にわたります。
ですが、企業の状況や売上管理の目的によって適切な方法は異なりますので、ここからは売上管理が可能な3つのツールについてそれぞれの特徴を解説していきます。
エクセルで売上管理する方法
売上管理を始めるにあたって最も着手しやすいのがエクセルを活用した管理です。
エクセルでの売上管理は安価に始められる点と導入までのスピードが早い点が特徴です。
エクセルは業務で頻繁に利用されることから、操作に慣れている社員も多いことから全社的に売上管理を導入しやすいといえます。
加えて、エクセルもクラウド上にアップロードして共同編集を行うことが可能ですので、複数人で同時に入力ができます。
また、Web上でエクセルによる売上管理のテンプレートがダウンロードできるサイトもありますので、一から表を作成する必要が無いのは嬉しいポイントです。
しかし、入力の誤りに気づきにくい点や、誤った数式を入れてしまうといったミスが発生する可能性があるという点はデメリットといえます。
そのほか、項目を絞ってデータを抽出したり、クロス集計をする場合にはやや手間がかかるという点もデメリットになるでしょう。
システム(ソフト)で売上管理する方法
売上管理のためのシステムを活用することで、素早くデータを集計し、分析も効率的に行うことができます。
売上管理システムの中には、集計したデータを自動的に項目ごとにグラフ化する機能や、条件を絞ってデータを抽出する作業が行えるソフトもありますので、エクセルと比べて分析の精度や作業効率の向上に繋がるでしょう。
また、入力補助機能を備えているシステムもありますので、入力業務の効率化や入力ミスの削減といった効果も期待できます。
加えて、クラウド上で提供されるソフトの場合はシステムのアップデートによる機能追加が行われますので、自社の現在の状況に合わせて随時カスタマイズしていけるメリットもあります。
ただし、導入費用がかかる点と新しいシステムを導入することで社員への説明や推進に時間をかける必要があるという点はデメリットとなります。
アプリで売上管理する方法
スマホで手軽に売上管理ができるアプリは、小規模の事業者やフリーランスなど売上データの量が比較的少ない場合におすすめです。
スマホ用のインターフェースが用意されているアプリも多くあるため、移動中や隙間時間などに短時間で素早く入力できる利便性は高いでしょう。
また、スマホから売上データのレポートなどを見ることもできますので、どんなタイミングでも常に最新の売上状況を把握できるメリットがあります。
無料で使えるアプリも多くありますが、アプリの中にはデータが増えると価格が上がる従量課金方式を採用している場合や、一部の機能はオプションとして有料になっている場合がありますので、活用を進めるにつれて費用も上がっていく可能性があることも念頭に入れておきましょう。
売上管理ならシステム導入がオススメ
売上管理において重要なポイントは以下の4点です。
・複数人がどこからでも同時にデータ入力ができる
・集計と分析作業を素早く行うことができる
・正確なデータが入力されている
・自社の状況や規模に合わせて使いやすくカスタマイズができる
これらの条件が揃っていなければ、規模が大きくなるほど売上管理にかかる手間や時間が増えてしまうため、売上管理を運用していくハードルも高くなるでしょう。
売上管理システムは操作性や拡張性に優れており、これらの条件をクリアするツールですので、長い目で見たときに売上管理業務を行いやすくなります。
売上管理を始めるなら、売上データを活用して事業を伸ばせなくては売上管理を行う意味が薄れてしまいますので、事業成長に寄与する売上管理の方法を考えるうえで、本記事を参考にしてください。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。