食品製造における生産管理の課題を解決
食品製造業界では、品質基準を厳守し効率的に製品を提供することが求められます。
そこには、品質管理、コスト削減、納期の厳守、そして食品ロスの削減などの課題に取り組まないといけません。
この記事では、食品製造業における生産管理の主な課題に焦点を当て、それらに対処する効果的な対策やツールを紹介しています。
食品製造業における生産管理の基本
まずは、生産管理の役割と重要性、品質・コスト・納期(QCD)の最適化、および生産管理の主要な仕事内容とその範囲について解説します。
生産管理の役割と重要性
生産管理は、製品を効率的かつ効果的に生産するための計画、調整、実行から成り立ちます。
食品製造業において、生産管理は製品の品質(食品衛生・味・パッケージ)を保ちながら、コストを抑え、納期を厳守しなければなりません。
”原材料の調達から製品の出荷に至るまで”生産管理の範囲は広く、食品メーカーにおいて重要な役割を担います。
品質、原価、納期(QCD)の最適化がポイント
品質(Quality)
食品製造では、味や見た目はもちろん、安全基準や衛生管理も品質に欠かせない要素となります。
原価(Cost)
製品の製造にかかるコストを管理し、無駄を削減しなくてはいけません。
原材料の仕入れや製造に加え、物流コストも対象となります。
納期(Delivery)
顧客が求める期日に間に合うよう生産することはもちろん、食品業界では鮮度維持のため素早い配送も求められます。
生産管理の主要な仕事内容とその範囲
生産管理には、以下のような多岐にわたる仕事内容が含まれます。
- 生産計画の策定
市場の需要や受注数を考慮して、製品の生産スケジュールを立てます。
- 発注管理
食材を適切なタイミングで調達することが重要です。
- 在庫管理
原材料や製品の在庫を適切に管理し、過剰在庫や品切れを防ぎます。
- 品質管理
製品の品質を確保し、不良品を最小限に抑えます。
- コスト管理
製造コストを抑え、効率的な生産を実現します。
- 納期管理
製品の納期を守るために、生産スケジュールを管理します。
食品製造特有の生産管理に関する課題と解決策
品質基準の向上
食品製造業における最大の課題の一つは、製品の品質を一定基準維持し向上させることです。
品質管理が不十分な場合、健康被害やブランドのイメージ損失などのリスクが生じる可能性があります。
解決策
解決策は、品質管理システム(QMS)の導入し、生産過程での定期的な品質チェックと監視システムの強化することです。それには、従業員への定期的な衛生管理と品質管理のトレーニング、HACCP(危害分析重要管理点)の原則を学ぶことなどが必要になります。
原価管理とコスト削減
原材料費の変動や製造コストの上昇は、食品製造業の利益率に大きな影響を与えます。
効果的な原価管理とコスト削減は、競争力を維持する上で非常に重要です。
解決策
解決策は、サプライチェーンの最適化と原材料の大量購入によるコスト削減やエネルギー効率の良い製造機器の導入や廃棄物の削減による生産コストの削減があります。
それ以外にも、生産工程の見直し改善させることも重要です。
納期管理と生産効率の最適化
顧客の要求通りに、納期内に品質の高い製品を供給することは顧客満足度を高める上で重要です。
納期遅延は顧客との信頼関係に悪影響を与える可能性があります。
解決策
解決策は、ERPシステムなどを活用し、生産・在庫・物流の一元管理や、リードタイムの短縮と柔軟な生産体制の構築、需要予測の精度向上と生産キャパシティの適切な管理をすることです。
食品ロスの削減
食品製造過程でのロスは、コスト増加だけでなく社会的な問題でもありますので、出来る限りロスを発生させないよう企業として取り組む必要があります。
解決策
解決策としては、在庫管理システムなどを活用し在庫数の最適化や賞味期限管理などを徹底します。
在庫管理と回転率
適切な在庫管理は食品の新鮮さを保ちつつ、過剰在庫によるロスを防ぐために重要です。
特に賞味期限がある食品製造業では、在庫の回転率を高めることが求められます。
解決策
解決策としては、JIT(ジャストインタイム・トヨタ生産方式ともいい、”必要なものを、必要なときに、必要なだけ生産する”考え)による在庫の最小化を元に、在庫管理システムの導入による在庫レベルのリアルタイム監視や、需要予測の精度向上による適切な在庫量の確保などをすることです。
※ただし、ジャストインタイムは自然災害の影響を受けやすく、安定的に生産・供給できないリスクがあります。そこで、ジャストインケース(万が一の備えをする在庫管理)の考え方も広がってきています。
食品製造業向け生産管理システムの活用
生産管理システムの基本機能
生産管理システムには以下のような機能が備わっています。
一部オプションによる機能などもありますが、各プロセスを一つのシステムで管理できることから、各部署の業務もスムーズに行うことができます。
受注管理
受注管理は、顧客からの注文を効率的に処理し製品の生産から配送までをスムーズに連携させます。
顧客からの注文を正確に記録し、必要な情報(製品の種類、数量、納期など)を確実に把握します。
生産計画
生産計画は、受注管理に基づいて具体的な生産スケジュールを立てることです。
どの生産ラインで、どの製品を、いつ生産するかを決定し、必要な資源(人員、機械、原材料)の割り当てを行うことで、効率的な生産フローを確保し、納期遵守を目指します。
調達計画
調達計画は、生産計画を実行するために必要な原材料や部品を適切な時期に適切な量で調達するための計画です。
サプライヤー(仕入先)からの購入コスト、納期、品質基準を考慮して最適な調達スケジュールを立て、コスト削減と生産のスムーズな進行を目指します。
工程管理
工程管理は、作業の効率化、品質の一貫性維持、生産遅延の防止などを目的とします。
主に、生産ライン上での各工程の進行状況を監視し、計画通りに生産活動が進むよう管理します。
そのため、リアルタイムでの進捗追跡により問題が発生した際には迅速に対応することができます。
在庫管理
在庫管理は、原材料、仕掛品、完成品の在庫レベルを最適に保つために行います。
過剰在庫や在庫不足を防ぎ、在庫コストの削減と製品の供給能力の最適化を目指します。
品質管理
品質管理は、製品が定められた品質基準を満たしていることを保証するできるように、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまでの各段階で品質検査を行い、不良品の発生を防ぎます。
トレーサビリティ機能により、品質問題の原因追跡と迅速な対応が可能になります。
原価管理
原価管理は、製造にかかるコストを把握し、コントロールします。
主に、材料費、労働費、間接費などのコストを詳細に追跡し、コスト削減につなげたり製品ごとの利益率を向上させ、企業全体の利益率を高めることを目指します。
食品製造業向けシステムの特徴
食品製造業向けの生産管理システムは、特に品質管理とトレーサビリティに重点を置いています。
ロット番号に基づく賞味期限や消費期限の管理、温度管理、原材料から製品までの流通履歴の追跡が可能な機能が備わっています。
これにより、食品安全性の確保とリコール時の迅速な対応が可能になります。
導入のメリット・デメリット
生産管理システムの導入は、食品製造業に多くのメリットをもたらしますが、一部のデメリットも考慮する必要があります。
メリット
生産性の向上:自動化されたプロセスにより、生産効率が大幅に向上します。また属人化による作業負担やリスクを回避します。
品質の向上:定期的な品質チェックと厳格な基準の適用により、製品の品質が向上します。
コスト削減:効率的な在庫管理と生産プロセスの最適化により、無駄を削減しコストを削減します。
デメリット
初期投資の必要性:システムの導入と設定には、初期投資や設備投資が必要です。
運用の複雑さ:システムの運用には専門知識が必要であり、従業員のトレーニングが必須です。
今まで行なっている全ての製造工程を完全にシステム化するには、多大なコストと準備・トレーニングが必要となります。まずは、一部の業務をシステムに置き換えることから始め、段階的な導入を検討することをおすすめします。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。