小売業DXの課題とは?事例やおすすめのシステムを解説
小売業のDXとは、データやデジタル技術を活用して業務効率を改善し、ビジネスを成長させることです。ECサイトの普及拡大に伴い小売業はDXを進めることが急務となっていますが、実際には課題も多いと言われています。
このような小売業DXの課題や解決策についてまとめました。
目次
小売業のDX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
経済産業省のデジタルガバナンス・コード2.0によると、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義されています。
小売業界では現在実店舗だけでなくオンラインショップを取り入れる動きが加速していることから、「データとデジタル技術の活用」は必須となります。
この実店舗とオンラインショップの顧客データベースを統合してマーケティングを行うという概念をOMO(Online Merges with Offline)と呼び、小売業のDXで最も重要な位置づけであると言えます。
小売でDXが重要な理由
デジタル技術を活用することで、在庫管理が効率的に行えるようになります。
RFIDタグやIoT技術を利用することで、在庫の状況を可視化し過剰在庫や品切れのリスクを低減することができます。
さらに在庫管理システムなどを導入することで、人手のかかる作業を効率化しミスを減少させることができます。
また、スマートフォンの普及によりオンラインショップを理由するユーザーが増えてきており、顧客はいつでもどこでも商品情報を入手し、購入を検討するようになってきていますので、従来の店舗だけの販売方法では売上を維持していくのは難しくなってきます。
そこで顧客管理はもちろん、在庫管理や販売管理などDX化を進めることで、社内の工数を減らしつつ、顧客との接触を増やし、より個人に合わせたサービスを提供することが重要となります。
推進されるOMO戦略
「OMO戦略」とは、オンラインとオフラインの境界をなくし、両方の良さを活かした新しい小売りの形を目指すものです。
たとえば、オンラインで商品を検索・予約し、実店舗で試着や購入をするという顧客の購買行動をスムーズにサポートします。
また、店舗での購入データをオンラインのマーケティングに活用することで、顧客一人ひとりに合わせた情報提供やサービスが可能となります。
競争環境の変化とデジタル技術の活用
デジタル技術の進化により、小売業界の競争環境も大きく変わろうとしています。
新しい企業が市場に続々と参入する中、デジタル技術を活用して業務効率を上げるだけでなく、新しい価値を提供することが求められています。
たとえば、AIやビッグデータを利用した顧客分析、VRやARを活用した新しいショッピング体験の提供など、デジタル技術を駆使した取り組みが進められています。
小売業DXのメリット
小売業でDXを進めるメリットには以下のようなものがあります。
業務の効率化
小売業に共通した販売管理、在庫管理、経理といった業務をマニュアルで行っている中小企業も少なくありません。
こうした業務でDXを進めることで、大幅な時間が削減できます。
また、DXが進むとデータを共有しやすくなることから、経営状況の改善につながります。
人件費の削減
小売業では例えば商品を仕入れる作業を手作業で行っている場合、一つ一つ数を数えて記入するという作業が必要になります。
それだけでも時間がかかりますが、伝票などに書き込む際にミスをしてしまうことがあるため確認にも時間がかかります。
小売業でDXを進める中でデジタルツールを導入すれば、バーコードをかざすだけで自動入力してくれます。結果として時間のかかる作業がカットでき、別の作業にあてることができるようになるわけです。
小売業に限らず人手不足が深刻な昨今では、DXこそがその解決策となります。
顧客満足度が上がる
小売業ではお客様と接する貴重な場で従業員がうまく対応できないと逆にストレスにつながることがよくあります。
その点、DXでセルフレジやPOSレジを導入すると、待ち時間が短くなったりミスが無いということからお客様の満足度が上がります。
データを活用した経営戦略の実現
小売業のDX化により、店舗とオンラインでの顧客の行動データをリアルタイムで収集・分析することが可能になります。
これにより、顧客の購買傾向や要望を正確に理解し、適切な商品展開やプロモーション戦略を計画できるようになります。
さらに、データを活用して経営判断を行うことで在庫の適切な管理や効果的なマーケティング活動の展開など、経営の効率向上と収益の最大化が実現されます。
データに基づく戦略は、競争が激しい小売業界での成功のカギとなることでしょう。
小売業DXの事例
経済産業省によるDX推進施策として2022年から始まったのが「DXセレクション(中堅・中小企業等のDX優良事例選定)」です。
これは、先立って実施されていたDX銘柄やDX認定制度等の対象として大企業が多くなってしまうことから、中堅・中小企業でも参考にしやすい事例を公表し、DX取り組みの活性化を図る施策です。
2022年に選定された企業の中に小売業はありませんでしたが、小売業でも取り入れることができるDXの取り組みを持つ場合もあるかもしれませんので、参照することをおすすめします。
AI技術を活用するコンビニエンスストアの取り組み
近年、コンビニエンスストア業界ではAI技術の導入が進められています。
特に、商品の需要予測や在庫管理にAIを活用することで、品切れや過剰在庫を大幅に削減する取り組みが行われています。
また、AIを用いたチャットボット(ローソンの「あきこちゃん」など)を導入し、顧客からの問い合わせ対応や商品情報の提供を自動化することで、効率的な顧客サービスを実現しています。
参考:ローソンのチャットボットは日々10万人が利用 炎上を防ぐ舞台裏:日経クロストレンド
セルフレジの導入とその効果
セルフレジの導入は、小売業界における大きなイノベーションの一つとなっています。
顧客は商品を自分でスキャンし支払いを行うことで、レジ待ちの時間を削減することができます。
これにより、店舗の混雑を緩和し顧客のショッピング体験を向上させるとともに、労働コストの削減や業務効率の向上も実現しています。
参考:良品計画、国内「無印良品」の6割にセルフレジ - 日本経済新聞
AR技術を取り入れた店舗体験の向上
AR技術を活用することで、従来の店舗体験を一新する取り組みが進められています。
スマートフォンや専用のデバイスを使用して、商品の詳細情報や関連商品の紹介、使用例などの情報をリアルタイムで提供することで顧客の購買意欲を刺激しています。
また、店舗内の商品配置やプロモーションの効果をAR技術を用いてシミュレーションすることで、より効果的な店舗運営を実現しています。
参考:VRやARで変わる購買体験 デパート、モデルハウス… 眼鏡の「バーチャル試着」も<まちビズ最前線>:東京新聞 TOKYO Web
小売業のDXが抱える課題
このようにメリットも多く大企業では進んでいる印象の強いDXですが、小売業の中小企業ではなかなか進んでいないというのが現状です。
小売業DXの現状
東京商工会議所により2021年2月16日から3月1日まで卸売業・小売業・サービス業を対象に行われた「中堅・中小流通・サービス業の経営課題に関するアンケート調査」では、コロナ以前からの課題として「デジタル化・IT活用」が22.2%、顧客満足・取引先満足が21.1%と多くなっています。
また、受発注・検品・請求処理のいずれにおいても「業務の5割以上がアナログ対応」と回答した企業が約6割、検品・請求処理は4割以上が「業務の8割超がアナログ対応」と回答していることからも、小売業でDXがそれほど進んでいない様子がわかります。
<出典:「中堅・中小流通・サービス業の経営課題に関するアンケート」調査結果概要|東京商工会議所>
小売業でDXが進まない要因
先ほどの「中堅・中小流通・サービス業の経営課題に関するアンケート調査」でデジタル化が進まない/難しい場合の要因に対する回答は、「必要だと思うが他の業務が優先されてしまう」が30.0%、「社内に詳しい人材がいない」が27.2%、「自社の業務に合ったシステムが見つからない」が23.0%となっています。
このことからも、小売業DXの課題は①人材不足、②システムマッチングの難しさであることがわかります。
技術的なハードルとその解決策
小売業のDXにおいては、技術的な課題も大きなハードルとなることがあります。
たとえば、既存のシステムと新しいデジタル技術の統合や、データのセキュリティ対策、技術的なトラブルへの対応などが課題として挙げられます。
こうした課題を解決するためには、外部の専門家やコンサルタントの支援を得たり、社内のIT人材を育成・教育が必要となるでしょう。
小売業DXにおすすめのツール
小売業DXの課題となるシステムの中でもおすすめのツールをご紹介します。
POSレジ
小売業でもネットショップが無く実店舗だけで運営している場合は特に、POSレジの導入がおすすめです。
POSレジは、バーコードなどで商品を読み取り自動的に会計システムへデータを送ってくれるだけでなく、在庫の入荷についてもDXが可能です。
手作業で在庫を数えて管理している小売業であれば、POSレジを導入することで時間も人件費も大きく削減できるでしょう。
また、同じ小売業でも実店舗以外にネットショップを運営している場合に、両方のデータを統合させて活用できるので便利です。
OMS
OMSとは、Oder Management System(オーダーマネジメントシステム)の略で、商品の受注から発送までを一括管理できるシステムを表しています。
小売業では、販売管理、在庫管理、注文管理などがそれぞれ手作業で行われていて、さらに業務がわかれているとデータの照合や共有が難しくなります。
OMSならアナログからDXも可能な上、まとめて管理できます。
WMS
WMS(Warehouse Management System)もOMSと似たような言葉ですが、OMSが出荷までの部分を担うのに対し、WMSは倉庫内の在庫や物流を管理します。
同じ小売業でも通販を運営しているような場合は、自社に倉庫を持たず自社のシステムとWMSを連携させて使っているケースが多いですが、実店舗しか持たない場合でもWMSは倉庫の管理をDXするのに最適なシステムです。
ERP
ERPとは、もともとEnterprise Resource Planning(企業資源計画)の略ですが、統合基幹業務システムを表す言葉としても使われます。
企業内の人・モノ・金といった資源を効率的に活用するため、データを一か所に集めて管理することができるのが特徴です。
まだDXが全く進んでいないという小売業者はもちろんのこと、社内に様々なシステムがあって使いにくいと感じている場合でも、販売管理や在庫管理から会計まで一つのシステムで対応できるのでおすすめです。
小売業のDXならクラウドERP「キャムマックス」がおすすめ
小売業のDXをどのように進めたらよいのかわからないという企業が多い中、おすすめしたいのはキャムマックスです。
キャムマックスは、このようなDXの進め方がわからないという中小企業のために開発されたシステムなので、至れり尽くせりの機能が使いやすいのが特徴です。
おすすめツールとしてご紹介したPOSレジ、OMS、WMSとの連携はもちろんのこと、経費精算や財務会計などが全てひとまとめに管理できるようになっています。
また、実店舗だけでなくオンラインショップなど複数の拠点を連携させることが可能なため、規模が大きくなってきて手作業では間に合わない場合にもおすすめです。
小売業市場レポートが参考になる
小売業もオンラインストアやキャッシュレス決済などDX化が進んでいます。
コロナ禍より以前と現状とはどのような進化があったのかを資料にまとめています。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。